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携帯料金は本当に高すぎるのか? 通信株急落を招いた菅官房長官発言

LIMO / 2018年8月23日 10時40分

携帯料金は本当に高すぎるのか? 通信株急落を招いた菅官房長官発言

携帯料金は本当に高すぎるのか? 通信株急落を招いた菅官房長官発言

8月21日の後場に通信株が軒並み急落

お盆休みが終わり、週が明けて2日目となる8月21日(火)、後場の株式市場で通信株が軒並み急落する事態が発生しました。前場の取引を終え、後場に入っても前日終値比(以下同)で小幅上昇程度の推移が続いていた通信株は、午後1時過ぎから急速に値を下げ始めたのです。

KDDI(9433)は一時▲5.2%安、NTTドコモ(9437)は一時▲4.7%安、ソフトバンクグループ(9984)は一時▲2.1%安に急落し、楽天(4755)も一時▲3.6%安に急落しました。

これらの下落がわずか20分間で起きたのですから、その急落ぶりが分かるのではないでしょうか。

急落の原因は菅官房長官による携帯料金引き下げ余地の発言

その原因は、菅官房長官の発言です。菅氏は同日に札幌市で行われた講演の中で「携帯電話料金は今より4割程度下げる余地がある」と言明し、一部の報道機関が速報として報じました。

このニュースに投資家(主に機関投資家)が即座に反応し、手持ちの通信株を売却する動きが加速したと推察されます。また、こうした携帯電話事業を手掛ける企業の収益悪化を懸念した信用売りも出たと見ていいでしょう。

いずれにせよ、通信セクターに強気の投資を行ってきた投資家、とりわけ、個人投資家にとっては、正しく最悪の後場になったはずです。

多くの投資家が思い起こした3年前の“悪夢”

そして、多くの投資家が3年前のあの“悪夢”を思い起こしたかもしれません。覚えている人も多いのではないでしょうか?

今から3年前の2015年9月11日(金)、政府の経済財政諮問会議で安倍首相が唐突に「携帯料金などの家計負担の軽減は大きな課題だ」と述べ、高市総務大臣(当時)に携帯電話の料金引き下げを検討するよう指示を出したのです。

この事案は何の前触れもなく起き、そして、高市総務大臣が「通信費の家計支出に占める割合は、特にスマートフォン等もあって上昇していることから、低廉に利用できるような方策を検討したい」と抜本的な対策を講じる姿勢を鮮明にしたため、通信各社の業績悪化懸念が一気に高まりました。

3年前の安倍首相発言で通信株は10日間で概ね最大▲2割下落

その結果、週明けの株式市場では通信株が軒並み値を下げ始め、それ以降の概ね10日間でソフトバンクグループが最大▲17.5%安、KDDIが最大▲16.6%安、NTTドコモが最大▲19.7%安となる急落となったのです。

これら通信株のような時価総額の大きい銘柄がわずか10日間で約▲2割下落すれば、もう“暴落”だったと言えましょう。

菅官房長官の発言は単なる思いつきなのか?

今回の菅氏の発言は、官房長官という重要閣僚が公の場で明言したばかりでなく、「4割程度」という具体的な数値を出したことなどから、前回の“悪夢”がフラッシュバックしたとしても不思議ではありません。

現時点では、菅氏の発言が具体的根拠に基づいたものなのか、単なる思いつきによるものなのかは不明です。ただ、金融市場に影響を与える重要職務にある政府要人が、軽はずみにあのようなことを言うでしょうか?

家計をジワジワと圧迫する電話通信料金、改善の気配は見られず

そこで、せっかくの機会ですから、総務省の家計調査による家計世帯における電話通信料(年間)の推移を見てみましょう。カッコ内は固定電話通信料、移動携帯通信料の内訳で、最後は世帯消費支出に占める割合(%)です。

2003年:104,904円(45,640円、  59,264円)、3.28%

2008年:110,971円(33,212円、  77,759円)、3.54%

2013年:112,453円(29,354円、  83,099円)、3.72%

2015年:117,720円(26,414円、  91,306円)、3.97%

2016年:120,392円(24,086円、  96,306円)、4.14%

2017年:122,207円(21,957円、100,250円)、4.18%

この数字を見る限りですが、家計における通信電話料の負担は、携帯料金を中心に重くなる一方であることがわかります。昨年の携帯料金はついに10万円を超えました。しかも、安倍首相が料金引き下げを指示した前回(2015年9月)から一向に改善していないことも明らかです。

こうしたデータによれば、携帯電話料金がジワジワと家計を圧迫しているのは確かだと言えましょう。

企業向けの携帯通信料は引き続き漸減傾向?

一方で、日本銀行「企業向けサービス価格指数(2005年基準)」によれば、携帯電話の通信料は引き続き漸減傾向にあります。つまり、企業向けの通信料は低下傾向にあるものの、個人向け通信料は増加傾向にあると受け取ることも可能なのです。

もし、個人ユーザーが通信各社の“カモ”にされているとすれば、今回の菅氏の発言を支持する人が続出するでしょう。菅氏は、こうした状況を踏まえて携帯通信料の平準化を訴えたのでしょうか?

菅官房長官の発言による“余震”は続く

菅氏の発言の翌日(8月22日)の株式市場では、前日に急落した通信株への買い戻しの動きも徐々に見られ、ソフトバンクグループは+1.3%高と反発しましたが、KDDIは▲1.9%安、NTTドコモは▲0.6%安、楽天は▲0.1%安と続落するなど、まだ“余震”は収まらないようです。また、NTTドコモの親会社である日本電信電話(9432)も▲2%超安の大幅続落となりました。

菅氏の発言が意図するところは何なのか、もう少し様子を見る必要がありそうです。

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