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日本の医療機器市場、治療・施術分野が増加へ

LIMO / 2018年9月3日 20時20分

日本の医療機器市場、治療・施術分野が増加へ

日本の医療機器市場、治療・施術分野が増加へ

診断・検査機器市場は成熟

本記事の3つのポイント

日本の医療機器市場は診断・検査以外の分野で増加、カテーテルの治療・施術分野などが牽引している

医療機器の輸出入の観点からは、輸入が輸出を上回る状況が続く。ただし、輸入品の約2割程度は日系企業の海外生産品

17年の世界の医療機器メーカーランキングでは海外勢が上位を独占。日本の医療機器の輸出拡大に向けた戦略の構築に期待がかかる

 日本の医療機器市場規模の推移を見ると、2000年代の2兆円台前半から、2010年代半ば以降は2兆円台後半へと拡大している。

 まず、その増額要因を探るため、07年、11年、15年の医療機器大分類および主な小分類の推移を分析する。市場の総額は、07年の2兆1727億円から11年の2兆3525億円へ8.3%増、11年から15年の2兆7173億円へは15.5%増、07年から15年へは25.1%増となった。

 大分類別の主な内訳をみると、画像診断システム(大分類02)全体では、07年が2835億円、11年が2400億円、15年が2679億円。このうちX線CTは07年が651億円、11年が444億円、15年が537億円、超音波画像診断装置は07年が502億円、11年が497億円、15年が529億円、MRIは07年が440億円、11年が351億円、15年が403億円となっており、増減を繰り返している。

 画像診断用X線関連装置および用具(大分類04)は、07年766億円、11年400億円、15年308億円と減少傾向が見られる。

 生体現象計測・監視システム(大分類06)は、07年1710億円、11年2312億円、15年2118億円と増減があり、このうちの検体検査機器は07年504億円、11年541億円、15年593億円と増加傾向であるが、内視鏡は07年863億円、11年1400億円、15年1107億円と増減している。

 画像診断システムはおおむね行き渡り、更新需要が中心となっていることがうかがえる。また、生体現象計測・監視システムも機器によりばらつきがあるものの、全体では一貫した増加傾向にあるとはいえない。

処置用機器は66.0%、手術用機器は43.7%増額

 では、診断・検査以外の機器はどうであろうか。処置用機器(大分類10)は、07年4488億円、11年5732億円、15年7449億円と、07~15年に66.0%の増加を示した。このうちチューブおよびカテーテルは07年2104億円、11年2686億円、15年3795億円、注射器具および穿刺器具は07年494億円、11年633億円、15年817億円、採血・輸血用、輸液用器具および医薬品注入器は07年964億円、11年1097億円、15年1120億円と増加が続いている。

 さらに、生体機能補助・代行機器(大分類14)は07年4825億円、11年5223億円、15年5560億円と増加している。このうち生体内移植器具が07年2851億円、11年3176億円、15年3404億円、血液体外循環機器は07年1141億円、11年1295億円、15年1332億円と推移し、治療用または手術用機器(大分類16)は07年の876億円から、11年の1116億円を経て、15年の1259億円まで43.7%増となっており、治療・施術の分野の増大が市場拡大の主要因であることが分かる。

 ちなみに、がん治療の花形ともいえる放射線治療装置(治療用粒子加速装置)の市場規模は、07年107億円、11年158億円、15年141億円である。

 このほか、施設用機器(大分類12)は、07年315億円、11年307億円、15年367億円と増減している。このうち手術台や診療台の診療施設用機械装置は07年226億円、11年209億円、15年国内227億円と安定し、歯科用機器(大分類18)は07年359億円、11年413億円、15年524億円と増加している。

日本で待たれる高精度の医療機器統計

 次に、日本の医療機器産業をみると、グラフのとおり、おおむね国内で使用される医療機器の半分が輸入品でまかなわれている。その一方、輸出は5000億~6000億円で推移し、貿易収支は入超が続いており、15年の入超額は8023億円にのぼる。

 ただ、輸入額の2割ほどは日本企業が海外で生産した製品が占めるとされ、これを国産製品と同等と見なすと、入超額は圧縮される。

(/mwimgs/5/0/-/img_50f27335fc0169e6341d03d0284877ac31572.gif)

拡大する(/mwimgs/5/0/-/img_50f27335fc0169e6341d03d0284877ac31572.gif)

 15年3月に、当時の一般社団法人 日本医療機器産業連合会の会長、テルモ㈱の代表取締役会長であった中尾浩治氏は、単独インタビューの場において、「日本における医療機器の貿易額は7000億円の輸入超過(12年)であるが、医療機器も日本企業の海外生産が進んでおり、日本国内だけで生産した医療機器の輸出額と輸入額だけで産業競争力の物差しとしていいか疑問である。その証として、11年の厚生労働省の調査では輸入売上額が1.08兆円である。一方、医機連の推計では、日本企業の海外売上額はほぼ同額の1.03兆円となっている。確かにペースメーカーなどは100%、人工関節などは73%と、治療機器は輸入超過であるが、ほかのデータを分析すると日本の医療機器産業の国際化が進んでいることがわかる」と述べ、医機連では薬事工業生産動態統計の精度の向上を求めていた。ちなみに、厚生労働省では、19年1月分の調査から調査方法を変更するとして、Webサイト上に公開している。

 世界の医療機器市場は35兆円ともいわれ、2020年には45兆円以上に達すると予測されるなか、海外市場の成長率に見合う成長を続けているとは言い難いのが現状だ。17年の世界の医療機器メーカーランキングでは、オリンパスが17位、テルモが18位、東芝メディカルを買収したキヤノンが20位と、20位以内に3社がランクインしているに過ぎない。新たな医療機器統計をベースに、日本の医療機器の輸出拡大に向けたグローバル戦略の構築に期待がかかる。

電子デバイス産業新聞 大阪支局長 倉知良次

まとめにかえて

成長産業として医療機器産業は安倍内閣の成長戦略を支える分野の1つでもあります。しかし、現状の医療機器メーカーの世界ランキングを見る限り、まだまだこの戦略は成功しているとは言い難い状況です。医療機器は民生市場と異なり、短期間で成果が出るものではなく、長期的な視点での産業育成が不可欠です。国家戦略として掲げる医療インフラの輸出などが今後どういった成果を見せるのか、注目されるところです。

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