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「鳥貴族」の値上げと消費者反応にみる小売産業の未来

LIMO / 2018年9月3日 10時0分

「鳥貴族」の値上げと消費者反応にみる小売産業の未来

「鳥貴族」の値上げと消費者反応にみる小売産業の未来

2018年7月はじめに鳥貴族が業績下方修正を発表(http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1608709)しました。同社の株価は大きく下落し、株式市場では大きな話題となりました。今回はそのケースから日本の外食産業、ひいては小売産業が今後どのように対応していけばよいのか考えてみましょう。

鳥貴族の下方修正の背景

鳥貴族の下方修正の発表ではその理由について以下のように記されています。

新規出店による直営店純増数は概ね計画通りに推移したものの、既存店売上高については、昨年10月に実施した価格改定が前年比で増収に寄与するものと予想していたところ、価格改定以後においてはお客様数及び注文点数が減少し、既存店売上高が前年同月を下回って推移しました。


外食産業を分析する上で最も重要な指標は、新規出店数(追加的には退店数も加味したネット出店数も)及び既存店売上高です。

同発表によれば、新規出店は順調だったものの、既存店売上高が不調だったということです。そしてその既存店売上高が不調の原因が、2017年10月からの価格改定による値上げの影響によるともコメントされています。当時発表された価格改定(http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1510913)の内容一例としては、「フード・ドリンク」が改定前価格が280円(税込302円)だったものが、改定後価格が298円(税込321円)というものです。

価格改定の背景としては、株式市場でも「人件費などの上昇で致し方ない」という意見や「この程度の値上げは消費者もあまり問題しないのでは?」というやや楽観的な見方もありました。そして「インフレがいよいよ低価格を売りにする企業にもおよんできたか」という期待もありました。株式市場はマイルドなインフレは一般的には歓迎するものです。

しかし、今回の業績下方修正で消費者行動が経営者の期待通りに行かないことを一部示してしまった格好になりました。

鳥貴族の既存店売上高は値上げ後どうだったのか

2017年10月の値上げ実施後は既存店売上高が対前年同月比で急にマイナスになったのかというかといえばそうではありません。

2017年10月は既存店は100%を割れて96.2%となったものの、11月には再び100%を超え105.3%を記録。また、12月も100.4%となっています。

ところが、2018年1月からは100%割れが続きます。2018年6月には91.0%ととなっています。この背景は値上げ効果もあり客単価が100%を超えるものの、客数が100%を割れ続けたことによります。2018年6月の客数は88.6%と大きく対前年同月の実績を割れています。

このようにしてい見ると、「鳥貴族」の値上げの影響は「超短期的には影響はなかったが、検証する期間をやや引き延ばすと影響があった」ということになります。

客数が減少し客単価で既存店をカバーする小売業

「鳥貴族」は外食産業ですが、客数が伸び悩み、それを客単価の上昇でカバーしている構造は小売業も似たような状況です。

客単価はさらに細かく分解することができます。商品単価(購入商品の平均単価)と買入点数です。

商品単価が上がれば客単価も上昇しますし、買入点数が増えても商品単価は上昇します。「鳥貴族」の場合には、先ほどの業績下方修正の発表資料の中で「注文点数が減少」というコメントもありました。これがまさに買入点数です。

商品価格が上昇すれば買入点数が減ると考えるのは極めて自然ですが、今回のケースでは消費者の同社への「値上げ」等の認識に加え、商品価格上昇のプラス分よりも買入点数の減少によるマイナス分の影響が大きかったことになります。

「XXX円均一」などのように商品価格のラインナップが限られている業態ではひっそりと値上げすることも難しいでしょう。価格を変更できないという前提に立てば消費者にいかに買入点数を増やしてもらうかが重要となります。もちろんより多くの消費者に店に足を運んでらうということも重要なのは言うまでもありません。

もっとも商品価格の幅広い業態では、商品価格の商品を減らしたり、価格の高い商品を遡及していくことでプロダクト・ミックスを改善していくことが可能です。ただ、価格の均一性を前面に押し出しているケースではそうした施策も限られてくるでしょう。

その一方で小売業であればEC、また外食産業であればデリバリーという消費者が商品に求めるチャネルも多様化しつつあります。つまり「お客が店に足を運ばなくてもよい」という状況です。そうした、うつろいやすい消費者行動にどう向き合っていくかの対応が迫られています。

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