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少子高齢化で日本経済の黄金時代が始まった

LIMO / 2018年9月30日 20時40分

少子高齢化で日本経済の黄金時代が始まった

少子高齢化で日本経済の黄金時代が始まった

怖いのは「デフレマインド」だけ

少子高齢化による労働力不足によって日本経済の黄金時代が始まった、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。

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日本経済は、黄金時代に突入しました。もちろん、バブル期のようなキラキラ輝く時代が来るとは思っていませんが、これまでの諸問題が嘘のように解決して新しい時代を迎える、という意味では、チョッと大げさですが「黄金時代」と呼べるような気がします。

バブル崩壊後の長期低迷期、諸問題の根源は失業だった

バブル崩壊後の長期低迷期、日本経済は失業問題に悩みました。人々が懸命に働いて多くのモノを作り、倹約してモノを買わなかったからです。ちなみに本稿では財およびサービスのことを「モノ」と記します。

懸命に働いて倹約することは、良いことなのですが、皆が一斉に良いことをすると、皆が酷い目に遭う場合があります。劇場火災の時に、皆が出口に向かって走る場合などです。これを「合成の誤謬」と呼びます。

皆が勤勉に働くと、多くのモノが作られます。皆が倹約をすると、少ししかモノが売れないので、売れ残りが生じます。そこで企業は生産を絞り、雇用を絞ります。失業が発生するわけです。

政府は、失業対策の公共投資をしますから、財政赤字が膨らみます。増税をしたくても、「そんなことをしたら失業が増えてしまう」と言われて増税ができません。

企業は「いつでも労働者が雇える」と考えるので労働者を囲い込む必要を感じなくなり、正社員を減らして非正規労働者を増やします。そうなると、正社員になりたくてもなれない人は「ワーキングプア」になります。

ブラック企業も増えます。学生は「失業者やワーキングプアになるよりブラック企業の方がマシ」と考えて入社しますし、辞めたくても「失業者やワーキングプアになるよりブラック企業の方がマシ」と考えて我慢するからです。

企業は、正社員を非正規労働者に置き換えたことで人件費が浮きますから、それで値下げ競争をします。ライバルから顧客を奪おうとするわけです。しかし、ライバルも同じことをしますから、結局物価が下がるだけで売上数量も利益も増えません。デフレです。

企業は、安い労働力が使えるので、省力化投資を怠ります。したがって、日本経済全体が効率化せず、労働生産性が向上しません。

以上のように、日本経済が抱えている多くの問題は、ほとんどが失業問題に起因しているわけです。

少子高齢化による労働力不足が諸問題をほとんど解決してくれる

少子高齢化が進むと、団塊の世代等が失業を「自発的かつ永久に」引き受けてくれますから、現役世代が失業に苦しむことはなくなります。失業は、本人の金銭面のみならず、自己肯定感にも悪影響がありますし、日本経済にとっても利用できる労働力が無駄になるわけですから、失業が減るのは素晴らしいことです。

いまや、仕事探しを諦めていた高齢者なども仕事にありついています。働きたい人が生き生きと働ける時代なんて、これまでと比べたらまさに「黄金時代」ですよね。

通常、政府の経済政策の目標は「インフレも失業もない経済」ですから、その意味では、今の日本はまさに理想的な経済状態だと言えるでしょう。物価が安定していて文句を言うのは日銀くらいです(笑)。

失業が減ると、景気対策の公共投資が不要になるのみならず、増税も可能になります。消費税が8%に上がったのも、10%に上がりそうなのも、「増税しても景気が腰折れせず、失業者は増えない」と予測されるからなのです。

今は「景気が良い時だけ増税できる」わけですが、今後は労働力不足が深刻化し、「増税して景気が悪化しても失業問題は生じないから、景気にかかわらず気楽に増税できる」時代が来るかもしれません。そうなれば、財政赤字の減り方も加速していくでしょう。

非正規労働者の時給は、労働力の需給を反映して上がっています。時給を上げないと非正規労働者を引き抜かれてしまうからです。非正規労働者を正社員に登用して囲い込みをする企業も出てきました。ワーキングプアの生活がマシなものになりつつあるのです。

ブラック企業も、存続が難しくなってきました。就活生はブラック企業には就職しませんし、現在の社員も辞めてホワイト企業に転職することが容易だからです。ブラック企業は、労働者が辞めて消滅するか、自らホワイト企業になるかの選択を迫られているわけです。

デフレも止まりました。非正規労働者を中心に人件費が上昇しているため、企業には値下げの原資がないのです。宅配便業界のように、「各社が値上げをして賃上げをして他業界から労働者を奪い取ってくる」といった動きも始まっています。

労働力不足になると、企業が省力化投資に注力するようになります。結果として日本経済が効率化し、労働生産性が上がります。それにより、労働力人口が減ってもある程度の経済成長は可能になるでしょう。

格差の問題も、緩やかにですが、改善に向かっています。失業者と就業者の格差が解消したことが何と言っても重要ですが、それだけではありません。同一労働同一賃金に向けて少しずつ格差が修正される方向にあります。非正規労働者の時給は上昇していますが、正社員の給料はそれほど上がっていないからです。

このように、バブル崩壊後の長期低迷期に日本経済を悩ませてきた諸問題が、ほとんど自動的に少子高齢化による労働力不足によって解決ないし緩和されていくのです。素晴らしいことです。

怖いのは、人々のデフレマインドだけです。「どうせ悪いことが起きるだろうから、黄金時代など来るはずがない」と皆が思うと、「景気は気から」ですから、不況になってしまうかもしれません。ぜひとも多くの人々が拙稿を読んで明るい未来を想像し、デフレマインドから脱却してくれることを祈っています。

本稿は以上です。なお、本稿は拙著『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4309248845/ref=as_li_qf_asin_il_tl?ie=UTF8&tag=navipla-22&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=4309248845&linkId=4847d4f30b40a4889a9d32df41553d12)』の内容の一部をご紹介したものです。本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、本稿は厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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