貯蓄額の平均値と中央値を知る
LIMO / 2018年11月7日 6時0分
貯蓄額の平均値と中央値を知る
年齢別金融資産の平均値と中央値を知る
様々な調査で見かける「平均値」と「中央値」。一見同じような用語ですが、どこがどのように違うのでしょうか。今回は貯蓄の平均値と中央値の違いをご説明していきます。またあわせて年代別の貯蓄額の中央値を分析することで、何が見えてくるのかもみていきましょう。
貯蓄額の中央値とは何か。平均値と何が違うのか
貯蓄額の中央値とは
貯蓄額の中央値とは、調査対象の貯蓄額を順番に並べてちょうど真ん中の人の貯蓄額が中央値となります。
たとえば、Aさんの貯蓄額が1億円、Bさんが3000万円、Cさん1500万円、Dさん1000万円、Eさん500万円としましょう。
この時の5人の貯蓄額を上から順番に並べて、数値が真ん中の人の貯蓄額が中央値となります。今回の例では、Cさんの1,500万円が貯蓄額の中央値となります。
貯蓄額の中央値と平均値との違い
上記の例の場合、貯蓄額の平均値はどうなるのかを考えていきましょう。平均値の計算は皆さんおなじみでしょう。
(1億円+3000万円+1500万円+1000万円+500万円)÷5(人)=3200万円
このように3,200万円が平均値になります。
さて、ここで計算をした貯蓄額を見ると平均値である3200万円を超えているのはAさんたったひとりです。データの母集団のデータを知っているケースだと「違和感がある」という人もいるでしょう。
平均値の場合には、極端に大きな値もしくは小さな値が平均値に影響していしまうことがあります。そうした場合には、先ほどの中央値も参考にしながらデータを見て行くとよいでしょう。
みんなの貯蓄の平均は気になるが…
近年は貯蓄額の「格差」の拡大が話題になることも多いでしょう。たったひとりのお金持ちが平均値を上げてしまうことがあります。
「平均的な貯蓄額」を知りたい人というのは多いかもしれませんが、こうした背景を知っていれば母集団によっては平均値を知ったところであまり有効に活用できないこともあることがお分りでしょう。一部の突出した数値で平均値があまり参考にならないような状況を避けるため、「中央値」が利用されることがあります。
ここまで見てきたような背景から「平均値は使いにくい」という声もありますが、平均値しか入手できない場合もあります。使いにくいということはありますが、もちろんデータがないよりはましだということは付け加えておきます。
中央値から見えてくる事とは
これまで見てきたように「中央値」が実態を知るうえで重要であることが分かりました。ここでは、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成29年)」を使って、実際に中央値を使い、世帯の金融資産についてみていきたいと思います。
年齢別金融資産保有世帯の金融資産の中央値と平均値
ここでみるのは金融資産を保有する世帯の年齢別の金融資産保有額の中央値を見てみましょう(カッコ内は平均値)。
20代の中央値 300万円(524万円)
30代の中央値 420万円(735万円)
40代の中央値 650万円(1014万円)
50代の中央値 1100万円(1689万円)
60代の中央値 1400万円(2062万円)
70代の中央値 1500万円(2512万円)
特筆すべきは40代から50代にかけて貯蓄額が一気に増加することです。これは子育てに一段落し、老後に備えて一気に貯蓄額を増加させることができている世帯が多いということも言えるかもしれません。ただし、ここでは金融資産を保有しない世帯を含んでいません。続いて、金融資産を保有しない世帯を含む倍には中央値がどうなるかを見てみましょう。
年齢別金融資産を保有していない世帯を含む金融資産の中央値と平均値
20代の中央値 77万円(321万円)
30代の中央値 200万円(470万円)
40代の中央値 220万円(643万円)
50代の中央値 400万円(1113万円)
60代の中央値 601万円(1411万円)
70代の中央値 600万円(1768万円)
具体的には40代の金融資産非保有割合は33.7%ですが、50代での金融資産非保有割合は31.8%と金融資産の非保有割合が減少していることなども先ほどの資料では公開されています。とはいえ、約3分の1程度は金融資産を持たない世帯があるということも今回のデータで分かります。
まとめにかえて
今回は貯蓄額の中央値とは何かを具体例を用いてご紹介してきました。たとえば、貯蓄の格差が広がっているような環境では「平均値」だけではなく「中央値」も使うことでより実態に沿った見え方ができることがお分かりいただけたと思います。
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
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