マイクロLED実用化へ、2019年にも搭載商品が登場?
LIMO / 2018年10月3日 20時40分
マイクロLED実用化へ、2019年にも搭載商品が登場?
モノリシック型で小型ディスプレー実現へ
マイクロLEDの実用化に向けた動きが加速してきた。スマートフォンやテレビのディスプレーに適用するには越えるべきハードルがまだまだあるが、スマートグラスやヘッドマウントディスプレーに搭載される1インチ前後の小型ディスプレーや、その光源として商用化しようとする動きが具体化しつつある。大型ディスプレーに用いるには少なくとも3~5年の開発が必要との見方が大勢を占めているが、小型ディスプレーとしては早ければ2019年にも搭載商品がお目見えするかもしれない。
英Plesseyが駆動回路でパートナー契約
LEDメーカーの英Plessey Semiconductorsは、先ごろシリコンバックプレーン(駆動回路)技術を持つ台湾のJasper Display(JDC)と戦略的パートナーシップ契約を結んだと発表した。Plesseyが製造したマイクロLEDディスプレーを、JDCのシリコンバックプレーンに貼り合わせて駆動できるようにするつもりだ。
JDCは5月に米ラスベガスで開催されたディスプレーの国際学会「SID2018」でシリコンバックプレーン「eSP70」を発表し、スウェーデンのマイクロLEDメーカーであるgloと共同でマイクロLEDディスプレーを開発・展示した。
このeSP70は画素数1920×1080、画素ピッチ8μmを実現できる。優れた電流均一性を備え、中程度の消費電力で非常に高い輝度を提供したり、昼間に利用可能な輝度レベルを維持しながら低消費電力で動作させることが可能。Plesseyが開発中であるポータブルAR(拡張現実)/VR(仮想現実)バッテリー駆動機器のディスプレーを最適な輝度に調整することができる。
PlesseyのCTO(Chief Technology Officer)であるKeith Strickland氏は、「JDCのシリコンバックプレーンで、当社はエントリーレベル8μmの画素サイズでフルカラーマイクロLEDアレイを迅速に市場投入できる。当社は、マイクロLEDアレイをバックプレーンに正確に位置合わせしてボンディングする際の重大な課題を克服した」と語った。
ARスマートグラス搭載へ量産装置を発注
これに先立つ7月、Plesseyはスマートグラスを開発している米Vuzixと提携し、VuzixのARスマートグラスにマイクロLED光源「Quanta-Brite」を提供することを明らかにしている。このQuanta-Briteは、マイクロLEDとシリコンバックプレーンに光学レンズなどを組み合わせたものとみられる。Vuzixの社長兼CEOであるPaul Travers氏は「Quanta-Brite光源の発光は、より洗練されたフォームファクターを備えた最終製品の開発を可能にする。最小のエネルギー消費で高輝度を実現でき、軽量なバッテリー駆動製品を実現できる」と述べている。
これに加えて、PlesseyはマイクロLEDを量産するため、その製造装置となるMOCVD(有機金属化学気相成長)を大手製造装置メーカーのAixtron SEから購入すると発表した。「AIX G5 + C MOCVDシステム」という最新装置で、27万平方フィートの広さを持つPlesseyのプリマス工場に2019年1~3月期に設置される予定だ。ちなみに、Plesseyは以前にもAixtronからMOCVD「CRIUS II-XL」を購入している。
モノリシック型は小型ディスプレーに向く
Plesseyが量産予定のマイクロLEDは、シリコンウエハー上にGaNを成膜したGaN on Siliconと呼ばれる技術を用いる。これで形成されたLEDチップはすべて青色に光るが、RGB(赤緑青)の3原色にするため、波長変換材料を重ねて青色を赤色と緑色に変換する。この波長変換材料には量子ドットが使用される可能性が高い。
このように、すべてのLEDチップを同一ウエハー上に形成してRGB発光を得るタイプを「モノリシック型」と呼ぶ。これに対して、RGBそれぞれのLEDチップを別に作り、個別に高密度に実装するタイプを「実装型」という。モノリシック型のマイクロLEDは、シリコンウエハーのサイズに律速されるため大画面化が難しいが、半導体と同じ技術で画素を形成するため高精細化に向いている。一方、実装型は大画面化に向くものの、高密度実装技術の手法が確立されておらず、この確立に3~5年を要するのではといわれている。
米仏メーカーも量産へ装置発注
Plesseyと同じGaN on Siliconのモノリシック型を開発している企業として、先述のgloや仏Alediaがある。
gloは17年9月、Plesseyと同じAixtronからMOCVDを購入すると発表し、米国拠点glo-USA(カリフォルニア州サニーベール)にMOCVD「AIX G5+」プラットフォームを17年10~12月期に設置した。6インチシリコンウエハーを同時に8枚成膜できる仕様の装置だ。gloは米Googleから1500万ドルの出資を得ていると報じられている。
一方、Alediaは18年1月、総額3000万ユーロ(3600万ドル)のシリーズC資金調達を完了した。この際、新たな投資家として半導体大手Intelの投資子会社であるIntel Capitalが加わった。Alediaが開発しているのが、シリコンウエハー上に直径1μm以下のGaNナノワイヤー(ナノロッド)が垂直に立った構造を持つ3D GaN on Silicon LEDだ。量産には8インチのシリコンウエハーを用いる予定。この資金を用い、6月にはMOCVD大手の米Veeco InstrumentにMOCVD「Propel」を発注している。
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