米長期金利上昇が急上昇、株式市場への影響は?
LIMO / 2018年10月7日 10時20分
米長期金利上昇が急上昇、株式市場への影響は?
「柏原延行」のMarket View 2018年10月5日
皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
大きな変動があったため、今回も、前回に引き続き、米長期金利についてお話しさせていただきます。
10月3日の米10年国債利回りは、大きく上昇(価格は下落)。チャート的な観点からは、レンジ相場を上放れしたという見方も可能。
長期金利の上昇が、米国株などの下落材料になるという考え方もある。しかし、私は長期金利の上昇は、景気が好調であることのシグナルと考えている。
「堅調な景気とディスインフレ的な環境が併存する局面」であり、今回の長期金利上昇は「政策金利の引き上げに応じて、長期金利は緩やかながらも上昇する一方で、物価の落ち着きからその上昇幅は限界的なものに留まる」という見方を裏付ける動きであると考えている。金利上昇に株式市場は、いったんビックリするが、中期的な観点からは、この環境は株式市場の上昇材料になると考える。
10月3日の米10年国債利回り(以下、長期金利)は、大きく上昇し、一時7年3カ月ぶりの高水準まで、上昇しました(図表1ご参照)。
チャート的な視点で考えた場合、レンジ相場を上放れしたという見方もできると思われます。
米長期金利以外の動きとしては、(長期金利上昇が株価の上値を押さえたという見解はあるものの)ダウ・ジョーンズ工業株価平均は高値を更新、為替(米ドル/円)では、ドル高・円安が進展しました。また、翌日の日本では、国内10年国債利回りも上昇しました(価格は下落) 。
一部には、長期金利の上昇が、米国株などの価格下落をもたらすという考え方もあるようです。
長期金利上昇が、株価の下落を引き起こす波及経路としては、①企業の調達コスト上昇による収益悪化、②住宅ローンなど家計の調達コスト上昇による消費の低迷、③米国への資金還流による新興国の成長鈍化などが挙げられ、たしかにこれらの波及経路を通じて、世界的な景気鈍化を引き起こす可能性があります。
しかし、長期金利の上昇は、景気が好調であることのシグナルと考えることもできます。
前回、2018年10月2日公開の記事『長短金利の逆転は、景気後退のシグナルなのか?(https://limo.media/articles/-/7860)』において、過去2回、長短金利の逆転現象が生じた時期と近接したタイミングで、米国景気は後退期に入っていることをご紹介しました。
この逆転現象は、短期金利と比較して、長期金利の上昇幅が限定的であったことにより発生しており、長期金利が上昇しなかったことは、将来の景気後退を織り込んだ影響と考えることもできるという見解も、あわせてご説明させていただきました。
この観点からは、今回の長期金利は景気が好調であることのシグナルであり、株価の上昇要因と解釈することができます。そして、10月3日の長期金利上昇、株式上昇という動きは、この見方を裏付けるものであると私は考えています。
一般的には、景気が好調な時には、インフレ懸念が発生することで、政策金利や長期金利が大きく上昇するケースが多くなると思われます。
しかし、「堅調な景気とディスインフレ的な環境(インフレが大きく加速しない環境)が併存する局面」であり、今回の長期金利上昇は「政策金利の引き上げに応じて、長期金利は緩やかながらも上昇する一方で、物価の落ち着きからその上昇幅は限界的なものに留まる」という見方を裏付ける動きであると考えています。
そして、金利上昇に株式市場は、いったんビックリすると思いますが、中期的な観点からは、この環境は株式市場の上昇材料になると考えます。
(2018年10月4日 9:00頃執筆)
【当資料で使用している指数についての留意事項】
ダウ・ジョーンズ工業株価平均は、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLCまたはその関連会社の商品であり、これを利用するライセンスが委託会社に付与されています。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLC、ダウ・ジョーンズ・トレードマーク・ホールディングズLLCまたはその関連会社は、いかなる指数の資産クラスまたは市場セクターを正確に代表する能力に関して、明示または黙示を問わずいかなる表明または保証もしません。また、指数のいかなる過誤、遺漏、または中断に対しても一切責任を負いません。
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