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急躍進の中国CATL、車載用リチウムイオン電池で世界トップを走る

LIMO / 2018年10月9日 19時35分

急躍進の中国CATL、車載用リチウムイオン電池で世界トップを走る

急躍進の中国CATL、車載用リチウムイオン電池で世界トップを走る

世界の自動車メーカーが相次いで搭載

本記事の3つのポイント

中国のLiBメーカーCATLが急躍進している。車載用での出荷拡大により、売上高はわずか2年で3.3倍に拡大

中国自動車メーカーとの長期戦略提携が急成長の要因の1つ。性能面でも優位性も発揮している

日産自動車、ホンダといった日本勢がCATL製を搭載することを決めた。トヨタ自動車も検討中

 

 電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)といった環境対応車の普及を背景に、需要が急拡大する車載用リチウムイオン電池(LiB)。日韓中が激しくせめぎ合うコスト競争の様相を呈している同市場において、飛躍的にプレゼンスを高めているのがCATL(Contemporary AmperexTechnology Co., Limited:寧徳時代新能源科技、中国福建省寧徳市)だ。以前は品質に疑問符がついていた中国メーカー製品だったが、一部ではすでに日韓と肩を並べており、また今後はこれらを追い抜く勢いにある。その中でも抜きん出た存在がCATLだ。同社の動きを追ってみた。

 同社は2001年設立。TDKの子会社ATLから分離・独立した。2018年5月には横浜に日本法人を設立している。主要事業は車載用LiB、エナジーストレージシステム(ESS)、バッテリーマテリアルリサイクルの3つだ。

 主力の車載用LiBは売り上げの9割程度を占める(16年96%、17年87%)。同事業ではEV乗用車、EVバス、EVトラックなど(その他EVトラクター、EVボート、EVフォークリフト、EV建機)に向けてセル、モジュール、パックなどを提供している。正極材のタイプは、3元素系(NiCoMnなど)およびリン酸鉄系。EV乗用車向けに3元素系、EVバス・トラック向けにリン酸鉄系をそれぞれ使っている。

 ESSでは中国国内のグリッド、オフィスビル、データセンターなどを対象にシステムを提供している。正極材はリン酸鉄系が中心だ。調査会社GSリサーチによると、中国のESS市場は20年には2500億ドルに拡大すると予測しており、潜在需要は極めて高い。

 バッテリーマテリアルリサイクルは、子会社のGuangdong Brunpで展開している。同社はニッケル、コバルト、マンガン、リチウムといった希少金属を独自技術で回収・精製・合成し、3元素系正極材や3元素系プリカーサー(前駆体)を製造している。製造された3元素系プリカーサーは、新品よりも優れた特性を示すという。同社は3元素系プリカーサー製造において中国を代表的するサプライヤーとなっている。

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拡大する(/mwimgs/8/0/-/img_80751eaf9aa1c444458faaae193c236730404.gif)

中国自動車メーカーと長期戦略提携

 CATLの売上高は15年が56.6億元、16年が146.3億元、17年が191.4億元(約3200億円)。また、車載用LiB出荷量は15年が2.2GWh、16年が6.8GWh、17年が11.8GWhと飛躍的に増加している。そして、17年末までに累計30万2000台の車両に搭載された。

 この急成長の背景にはYutong、BAIC Motor、SAIC、Geely、King Long Motor、CRRCといった国内自動車メーカーと長期戦略提携を結んでいることが大きい。この点は、自社グループ向けを中心に供給してきたBYDとは対照的である。また、BMWやフォルクスワーゲンなど、海外自動車メーカーのサプライチェーンにも加わったことも影響している。

 加えて、性能面での優位性も挙げられる。エネルギー密度ではEV乗用車で240Wh/㎏、EVバスで163Wh/㎏を達成しており、20年にはそれぞれ270Wh/㎏、185Wh/㎏に向上させていく計画だ。また、長寿命特性においてはEV乗用車で5年(または10万km)、EVバスで15年(同1万5000サイクル)に対応する。

 そして、この性能面を支えるのが研究開発体制と生産体制だ。前者ではセル、モジュール、パック、リサイクル、製造プロセスなど、一貫して研究開発を進めている。特筆すべきは材料開発、セルデザインにおいて最先端シミュレーション技術を使っている点。後者では完全自動化によるフレキシブルな生産、それにIoTやビッグデータを活用した生産管理を特徴とする。生産データのトレーサビリティーは最大15年に対応する。

 なお、CATLのマーケットポジションだが、調査会社のレポートによりランキングは異なってくる。最も好意的なのが中国の調査会社GGIIによるものだ。それによると、17年の車載用LiB(EV向け)出荷量はCATLが12GWhでトップだ。以下、パナソニック10GWh、BYD7.2GWh、Optimum Nano5.5GWh、LGケミカル4.5GWh、Guoxuan High-tech3.2GWh、サムスンSDI2.8GWhと続く。他方、パナソニックがトップとするレポートもある。

日本自動車メーカーが続々採用

 CATLが注力している市場が中国と欧州。EV世界市場の半分を占める中国向けには、引き続き国内自動車メーカー向けに提供していく。EVバスが若干の需要鈍化が見込まれるものの、EV乗用車は今後も需要が堅調と見られる。

 他方、好材料として海外自動車メーカーが軒並みCATL品を採用している点が挙げられる。先述のBMWやフォルクスワーゲン以外でも、日産自動車、ホンダといった日本勢がCATL製を搭載することを決めた。トヨタ自動車も検討中だ。

 一方、LiB工場の投資ラッシュとなっている欧州においても攻勢をかける。CATLは中国にLiB工場を3拠点設けているが、独チューリンゲン州に初の海外生産工場を構築する計画だ。生産能力は年産14GWhに対応する見込み。

 欧州ではLG化学がポーランド、サムスンSDIがハンガリー、ノースボルトがスウェーデンにそれぞれLiB工場を建設している。また、ハンガリーとフランスにEV工場を保有するBYDも建設することを検討している。これら工場は19年以降に本格出荷される予定で、CATLを含めて、同年から激しい出荷ラッシュが始まることになる。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 東哲也

まとめにかえて

 車載用LiB分野で、まさにここ数年で業界トップに上り詰めたCATL。その勢いは中国、欧州にとどまらず日本国内にも及んでいます。国内の完成車メーカーもそうですが、今後は国内の材料・部材メーカーの動きも気になるところです。現状では、まだCATLとの取引を本格的に行う日系企業はいませんが、この巨大メーカーを無視することはもはや不可能といえるかもしれません。

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