日本政府が破産する瞬間、大逆転が起きる
LIMO / 2018年10月14日 20時40分
日本政府が破産する瞬間、大逆転が起きる
外国政府と日本政府の決定的違いとは
日本政府は破産しない。破産の1秒前に大逆転が起こるからだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。
*****
筆者は、日本政府は破産しないと考えています。しかし、世界中の投資家が日本政府は破産すると考えて日本国債の売り注文を出したら、どうなるのでしょうか。日本政府は破産するのでしょうか。その瞬間に何が起きるのか、考えてみました。
国債の価格が暴落し、ドルが暴騰する
日本政府が破産すると考えた投資家は、日本国債の売り注文を出すはずです。彼らが売るものは、今ひとつあります。日本政府の子会社が発行している「日本銀行券」という紙切れです。彼らは、日本銀行券をドルに替えようとして、ドルの買い注文を出すでしょう。
金融の怖いところは、皆が倒産すると思った借り手は、皆が融資を引き揚げるので本当に倒産する、というところです。健全な銀行が取り付け騒ぎで倒産することもあるわけですから。
したがって、ひとたび売り注文が増え始めると、売りが売りを呼んで暴落が止まらなくなる可能性があります。売り一色で取引が成立しないかもしれません。
それを予想した投機家たちは、日本国債や円をカラ売りするかもしれません。先物を売却するかもしれません。売り注文の額は、発行済み国債の残高を上回るかもしれないわけです。
そんな時に、最後の買い手として登場するのが、政府と日銀です。
政府は外貨準備のドルを売って円を買い支える
政府は、1兆ドルを超える外貨準備を持っています。これを用いて暴落している円を買い支えるとします。1ドル300円くらいで取引が成立したとしましょう。市場に巨額のドルが供給され、市場から巨額の円が回収されます。
日銀は、市場から回収された分だけ市場に資金供給をしなければなりませんから、暴落した国債を大量に購入するはずです。国債の価格は額面の3割程度で取引が成立したとしましょう。
冷静になった時に、見えてきた勝者は?
夕方になって市場が閉まり、人々は酷かった1日を振り返るでしょう。国債を持っていた投資家は、額面の3割で投げ売りしたので、大損でした。
さらに悲惨なのは、外国人投資家でしょう。彼らは来日した時に10ドルを1000円に替えて額面1000円の国債を買ったはずです。それが、国債を300円で売り、それを1ドルに替えて本国に逃げ帰ったのです。
喜んでいたのは、国債と円をカラ売りしている投機家だけであったはずです。
「最も悲惨なのは、破産した日本政府だった」と読者は考えるかも知れません。しかし、そういうわけではありません。
日本政府は、1ドル100円で買って持っていた外貨準備のドルを300円で売却し、日銀は額面1000円の国債を300円で購入したわけです。しかも巨額に。
政府と日銀の連結決算で見ると、100兆円で買ったドルを300兆円で売り、その300兆円で額面1000兆円の国債を購入しているわけです。冷静に見ると、日本政府の借金はすべて綺麗に消滅しているのです。
本当に真っ青なのは、日本国債をカラ売りしている投機家でしょう。買い戻す義務があるのに、買い戻せる日本国債はすべて日銀が持っているのですから。
政府・日銀は、儲けた900兆円の一部を銀行に出資
投資は自己責任ですから、投資家が損をしても政府が救済する必要はありません。ただ、何事にも例外はあります。銀行が巨額の損失を出して倒産されると困るのです。倒産しないまでも、自己資本不足に陥って自己資本比率規制を守るために貸し渋りを始めても困ります。
そこで、政府は銀行に無議決権優先株を発行させ、それを買い取ることで、銀行の自己資本を充実させるはずです。銀行が将来儲かったら、優先株を買い戻す、という条件にしておけば良いでしょう。それにより、銀行の倒産や貸し渋りが防げて、金融市場の混乱が実体経済に波及することが防げるわけです。
政府が破産しなかったのは、負債が円建てだったから
過去、政府が借金を返済できずに破産(事実上の破産を含む)したケースでは、ドルを借りていた場合がほとんどです。政府が外国からドルを借りていると、外国から一斉に返済を要請された時に大変困ったことが起こります。
最初の1ドルを返済することは容易でも、そのためにドルを買うのでドルが値上がりし、2ドル目の返済は1ドル目の返済より厳しくなるのです。返済用のドルを買うたびにドルが値上がりしていくと、最後の1ドルを返済するために必要な自国通貨が巨額になり、倒産してしまう、ということが起きかねないわけです。
しかも、外国の貸し手はそれを知っていますから、政府が破産するかもしれないという噂を耳にした途端、他の貸し手が回収し始めるよりも先に回収しようとします。したがって、外貨を借りていると、危険なわけです。
外貨を借りている政府は、「危ない」という噂が立つと、実際に返済要請が来て本当に危なくなる可能性があります。一方で、自国通貨を借りている政府は、本稿が示すように、「危ない」という噂が広まれば広まるほど債務が減るのです(笑)。
外貨を借りている政府と自国通貨を借りている政府では、このように決定的な差があるので、「過去に倒産した外国政府よりも、日本政府の債務負担は重い(債務残高のGDP比が大きい)から、日本政府も破産するだろう」といったことにはならないのです。
本稿は以上です。なお、本稿は拙著『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4309248845/ref=as_li_qf_asin_il_tl?ie=UTF8&tag=navipla-22&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=4309248845&linkId=4847d4f30b40a4889a9d32df41553d12)』の内容の一部をご紹介したものです。
<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
アングル:中国本土株の投機買い過熱化、外国投資家も追随の構え
ロイター / 2024年11月21日 17時32分
-
老後資金2000万円が数年で140万円に? 森永卓郎氏が「二度と手を出すな」と言い切る新NISAの落とし穴
集英社オンライン / 2024年11月18日 11時0分
-
日本経済は投機の対象になり果てた…金子勝「日銀が口先介入で利上げを打ち出すたびに円安に向かうワケ」
プレジデントオンライン / 2024年11月8日 16時15分
-
株・不動産価格上昇でよみがえる「平成バブル」のツラすぎる思い出だが…もしもあのとき、銀行が「正しく行動」したらどうなった?【経済学評論家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月3日 9時15分
-
ポール・チューダー・ジョーンズ:「われわれは破産するだろう…全ての道はインフレに通じる」
トウシル / 2024年10月31日 16時46分
ランキング
-
1なぜ鉄道会社が…? 小田急、エリア外の県と「全く畑違いのビジネス」に乗り出す きっかけは“社員の趣味”!?
乗りものニュース / 2024年11月27日 10時42分
-
2中国産「農薬漬けシャインマスカット」が東南アジアで大炎上…怪しい日本語が書かれた“激安ブドウ”の実態
プレジデントオンライン / 2024年11月26日 18時15分
-
3年金夫婦で「月28万円」もらえるはずが…同い年の夫を亡くした65歳・共働き妻、年金事務所の窓口で告げられた〈衝撃の遺族年金額〉に絶望「こんな仕打ち、ありますか?」【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月27日 11時15分
-
4食べログ「都内で9位」ラーメン店主の驚きの過去 秋葉原の超人気店「ほたて日和」はこうして生まれた
東洋経済オンライン / 2024年11月27日 8時30分
-
5お金が貯まらない人ほど直感で行動している…新型NISAで資産を減らす人がやっている「残念な行動」とは
プレジデントオンライン / 2024年11月27日 7時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください