政府もサポートする「貯蓄から投資へ」の非課税制度
LIMO / 2019年1月6日 0時0分
政府もサポートする「貯蓄から投資へ」の非課税制度
「貯蓄から投資へ」というスローガンはこれまでもありましたが、このスローガンの目的をしっかりと理解できている人は少ないのではないでしょうか? ここでは、「貯蓄から投資へ」の内容と目的をあらためて整理していきましょう。
政府が推奨する「貯蓄から投資へ」とは何か
「貯蓄から投資へ」というスローガンを最近よく耳にするようになってきたという方も多いかもしれません。
しかし、このスローガンは以前からありました。では「貯蓄から投資へ」とは具体的にどのような内容なのでしょうか?
一般的に個人が銀行口座に預金をしていると、そのお金は銀行が企業への貸出や国債などの有価証券投資などを通じて、資金運用をすることになります。これが「間接金融」です。
それに対し、個人が株式や債券を購入し、投資することは「直接金融」とよばれます。
「貯蓄から投資へ」とは、個人資産の運用を、銀行を介した間接金融から、投資家個人による直接金融にシフトさせていこう、というものです。
もっとも総務省などの定義によれば、「貯蓄」には金融機関への預貯金だけではなく、株式や投資信託への投資も含まれているので、実際には投資が含まれています。
ただ、日本人の貯蓄の多くは預貯金などの安全資産であることを考えると「預貯金から有価証券投資へ」という方がより正確かもしれません。
金融庁は直接金融を促進するために、様々な施策を行っています。
その一つに少額投資非課税制度である一般NISA(以下、NISA)があります。NISAでは、5年間、年間120万円までの最大600万円の投資に対する非課税枠を設けました。NISAでは、国内株式・海外株式・投資信託に投資をすることができます。ただし、特定口座や一般講座との損益通算はできません。
加えて、「子どもNISA」や、金融庁の指定する基準にあった投資信託を積み立てていく「つみたてNISA」なども登場しています。
つみたてNISAでは、「つみたて」とあるように1年間で2回以上に分けて投資をする必要があります。年間40万円を20年間までの最大800万円の非課税枠を設定しています。先に見たNISAと同様に特定口座や一般口座との損益通算ができません。
ちなみにNISA口座は一人1口座であり、NISAとつみたてNISAの併用はできません。
政府も推奨する「貯蓄から投資へ」の目的とは
それでは政府が「貯蓄から投資へ」を推奨する理由とは何でしょうか。 その理由は2つあります。
1つ目は、家計に眠っている現金や預貯金といった資産を資本市場に流通させることで、企業への直接金融を拡大させたいと考えているためです。
直接投資では、個人投資家が直接投資をしたい企業にファイナンスをすることができ、ベンチャーや新産業のような資金ニーズがある法人の需要に応えられるという特徴もあります。これによって企業や新産業の育成が進み、日本経済の成長につながることになります。
2つ目は、国民が個人で資産形成をするように促したいと考えたためです。
現在の日本は、急速な少子高齢化により、従来の国民年金の制度や高齢者への社会保障制度が難しい状況に直面するのが見えつつあります。現在の老齢人口には対応できても、その次の世代の社会保障は不安が残ります。そこで「貯蓄から投資へ」と促すことで、国民一人ひとりが、老後資金の形成などを通じて将来へのリスクマネジメントを行えるようになることを目指そうとしているのです。
資産形成のために時間を味方につけたい
投資による資産形成には非常に長い時間がかかります。このため、できる限り早い段階から投資をはじめることが、最も効果的なリスクヘッジにつながります。今こそ、積極的な個人投資を検討してみてもよいのではないでしょうか。
投資を始めるといっても、証券会社に口座を開設して単に始めるのではなく、NISAや、つみたてNISA、また今回は触れていませんがiDeCoといった非課税枠のある制度を活用しながら時間をかけて資産形成をしていきたいものです。税金を抑えることができるだけでも投資リターンを向上させるためには有効です。
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
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