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2019年のGWは16連休取得も可能に。ある会計事務所の働き方改革

LIMO / 2018年11月4日 10時15分

2019年のGWは16連休取得も可能に。ある会計事務所の働き方改革

2019年のGWは16連休取得も可能に。ある会計事務所の働き方改革

「働き方改革」でダメになる会社、伸びる会社

2018年6月に働き方改革関連法案が成立し、あまりにも長時間の労働は法律違反となる可能性が出てきました。最近の新卒世代は「ワークライフバランスを重視する」という人が増え、SNSで過酷な労働環境が暴露されることも頻発し、いわゆる「ブラック企業」は淘汰されゆく流れにあるといえます。

そんな中、働き方改革をリードするように、年間休日140日以上に加え、年に4回の9連休、さらに2019年のゴールデンウィークはなんと全員が16連休を取れるようにと、社員の働きやすさを追求している会計事務所があります。

今回は、その「税理士法人ネイチャー国際資産税(以下ネイチャー)」の代表税理士であり、『日本一働きやすい会計事務所』の著者でもある芦田敏之さんに、働き方改革によって会社が得られるメリットと、同事務所での実際の取り組みをうかがいました。

中小企業こそ働き方改革に取り組むべき

「働き方改革というと、『中小企業ではなかなか難しい』という声も聞きます。しかし、社員一人ひとりのモチベーションや働きが会社を支えている私たちのような中小企業こそ、社員の働きやすさや幸せな人生を真摯に考えて、働き方改革に果敢にチャレンジするべきではないでしょうか」

そう語る芦田さんが2012年に創業したネイチャーは、現在7年目。はじめは芦田さんだけで始めた会社でしたが、「国際資産税」というブルーオーシャンの開拓などによって、業績は右肩上がりで推移してきました。クライアントには資産が数十億あるような資産家も多く、銀行などの金融機関との信頼関係もあるため顧客は増え続けているといいます。

業務の拡大に伴って従業員数も増え、今では50名を抱える会社になっています。そんな華々しい会社ですが、芦田さんにここまで業績を伸ばせた秘訣を聞くと、徹底して「社員にとって働きやすい環境を考えている」からだと言います。

「家族だったらどうしてあげる?」というマインドで仕組みを考える

社員にとって魅力的な環境をつくるにあたって、具体的にどのような点に気をつければいいのでしょうか。ネイチャーでは「Treat as a family」という言葉をフィロソフィーとして掲げています。

「Treat as a family」は、直訳すると「家族のように接する」という意味ですが、親なら子に対して無条件に「どうしたらサポートしてあげられるか?」を常に考えます。それと同様に「どうしたら会社としてサポートできるか?」ということを一番大切にして制度や仕組みを考えるのだといいます。

例を紹介すると、結婚することが決まった女性社員から、これまで通りフルタイムで働くことが難しいという相談を受けたことがありました。本人は「パートタイムでの契約に変えたい」と言ってきたそうですが、中長期で考えれば、これから結婚・出産とさまざまなライフステージを経ていく中で、パートタイムや契約社員という働き方では、将来に不安が残るものです。

そこで、芦田さんが提案したのが、時短でも正社員としての契約ができる「短時間正社員制度」。仕事の内容や責任はフルタイムの正社員と同じですが給与は就業時間に比例し、ボーナスや有給休暇も保証されます。

もし接する相手が自分の家族だったら、相手が一番嬉しくなるような方法を考えて動くはず。それが「Treat as a family」の精神だといいます。

さらに働きやすい環境を追求する理由

結婚・出産に限らず、このような柔軟な働き方を導入していくことで、社員一人ひとりに応じたキャリア形成ができるというメリットがあります。また、雇用契約期間の制限もなく、会社にとっても人手不足の中で有能な人材を確保できるというメリットもあります。

しかし、創業当初から働き方改革に取り組み続け、制度も整ってきた現在、芦田さんがなお働きやすさを追求する理由は、ひとえに「社員に幸せに働いてもらい、仕事の楽しさを失ってほしくないから」だと言います。

来年2019年のゴールデンウィークは、新元号への切り替わりの影響で10連休を取れるという会社も多くありそうですが、ネイチャーではそこに年休4日を追加し、土日合わせて16連休を取れるように準備を進めているとのこと。

「16連休」の意義とは?

16連休といえば月の半分。そこまでの休暇を与えることで、会社にはメリットはあるのだろうかという疑問も浮かびます。

これに対して芦田さんは、「会社にとっての利益を考えて制度を決めているのではない」と言います。単純に休みが増えれば、その時間を自由に使うことができ、社員も喜ぶだろうという考えから、制度を整えるために調整を行っているのだそうです。

「こういった制度を整えるためには、もちろんコストの問題もあります。充実した福利厚生や報酬をかなえるためには、経営者は会社のバリューを上げ、資金を保ち続ける努力もしなければなりません。しかし、社員もしっかり働いた分はきちんと還元されるということを理解しているので、利益を維持し、数字を上げるということに対しても前向きに取り組むことができるのです」

芦田さんはそう語ります。

失敗を恐れずに、まずやってみる

このように、社員のことを考えてつくっている制度ですが、中にはあまり使われなかったり、不評だったりするものも過去にはあったそうです。

たとえば、以前は「シエスタ制度」というものを導入していました。ランチタイム後の時間帯は眠くなり、集中力も下がるため、生産性が落ちることは科学的にも証明されています。元々はスペインなど南欧の文化ですが、日本でも一部の企業で導入されています。ネイチャーでもいち早く導入して、ソファや畳のスペースをつくり、仮眠が取れるような環境を整えたそうです。

しかし、制度にしてしまって一律で午後の時間帯を休みにしてしまうと、かえって効率が悪いことがわかりました。シエスタ制度を導入しても、業務が忙しい時期だとかえって帰宅時刻が遅くなってしまうこともあります。そのため、疲れていたり集中力に欠けていると感じたりしたら、個々の判断で就業時間中に自由に仮眠をとれるようにして、シエスタ制度そのものは廃止になりました。

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働き方改革に「完成形」はない

「どんな制度も、利用されなければ形ばかりのものとなり、意味がありません。私も完璧ではありませんので、常に改善を図りながら、より社員が喜び、幸せになる制度を毎日考えています」。そう語る芦田さんは、働き方改革というのは「ここまでやれば終わり」「これが完成形」というものはないとも言います。

働きやすい環境というのは、人によって違うもの。また、経営者が考える働きやすさと、社員一人ひとりが考える働きやすさというものも違うはずです。芦田さんの話からは、社員一人ひとりのニーズに寄り添って、絶えず更新し続けていくことが必要だということがわかります。

会社の業績やコストを第一に考えるのではなく、まずは「優秀な人材がもっとこの会社で働き、最高のパフォーマンスを発揮したいと思えるような魅力ある制度改革」を行う。こういった軸を持って、これから本格的に始まる働き方改革に取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

■ 芦田敏之(あしだ・としゆき)
税理士法人ネイチャー国際資産税 代表税理士。1978年、神奈川県横浜市生まれ。大手税理士法人に勤務後、2012年に税理士法人ネイチャー国際資産税を設立。近年は、働きやすい職場環境づくりへの取り組みが各メディアに取り上げられるようになり、新聞、経済紙などへの誌面掲載の他、web媒体への取材協力やテレビ番組出演など、税務業界以外からも注目を集めている。

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