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検索して「仕事した気になっている人」が増え続ける理由

LIMO / 2018年11月2日 11時45分

検索して「仕事した気になっている人」が増え続ける理由

検索して「仕事した気になっている人」が増え続ける理由

現代を生き抜くための「孤独」の作法

誰かに質問されたときや、何かを疑問に思ったとき、つい「自分でじっくり考えることなく、すぐに答えを見つけようとしてしまう人」は意外と多くいます。

ネットの発達で、ここ20数年で私たちがアクセスできる情報は爆発的に増えました。そこにスマートフォンが拍車をかけて、われわれは、情報に「いつでも、どこでも、より手軽に」触れられるようになりました。しかし、ネットでの検索になじみ過ぎて、それに頼り切りになってはいないでしょうか。

誰もが気軽に情報にアクセスできる時代には、検索力はあって当たり前。これからはそれとは別の能力、すなわち「思考力」が問われていくはずです。この記事では、『孤独 ひとりのときに、人は磨かれる』の著者であり、多くのベストセラーでも知られる心理学者の榎本博明先生が、検索に慣れ切った「検索脳」の問題点と、それを「思考脳」に変えていく方法についてお話しします。

「自分の意見」は探すもの?

みなさん、職場でこんな経験はないでしょうか。

売れている商品について「どうしてそれが売れていると思うか」と問いかけられた社員が、すぐにスマートフォンで検索し、「その商品については、こんな評判があります。たとえば……」と、消費者のコメントだけを読みはじめる。「データではどうか」と言われても、売り上げデータに関する資料を引き出し、そのまま差し出す。さらに突っ込んで聞かれても、男女別、年代別、金額別の傾向を示すなど、さまざまな属性別に集計されたデータをなぞるだけ。

「こうした傾向からどんなことが推測できるか」と切り出されても、再び検索して別のヒット商品の例を挙げ、「この商品がヒットした理由については、専門家によってこんなことが言われています。でも、今回の商品に関しては、いくら検索しても専門家のコメントは見あたらないので、まだよくわかっていないのではないでしょうか」などと答える。

情報をもとに、何を発想するか

スマートフォンで何でも検索することに慣れてしまうと、このように、検索結果を示して満足してしまいがちです。しかし、検索して引き出されるものは、「答えを出すための素材」であって、「答え」ではありません。ネットは考えるための材料を集めるには便利ですが、自分の意見を検索することはできないのです。

たしかに検索していろいろな情報が引き出されると、「何か生産的なことをしている」気分になってしまいます。でも、実際に動いているのは指だけで、頭はフル回転してはいません。データや他人のコメントを並べるだけでなく、それをもとに想像力を働かせ、自分なりの視点から見解を述べてみることが必要です。

「誰にでもアクセスできる情報」をただ提示するだけなら、わざわざその人がそれを行う理由はないのです。重要なのは、引き出した情報をどのように解釈して、提示するか、つまり「その人なりの付加価値」があるかどうかなのです。

「検索脳」から「思考脳」へ

情報を検索するだけの「検索脳」を、引き出した情報に付加価値を加えられる「思考脳」へとレベルアップさせるための初歩の方法をひとつお教えします。まず書店へ行って、気になる本をいくつか選んで読んでみることです。それは仕事に直接関係のないジャンルでも構いません。

なぜ読書が有効なのかというと、どんな本も程度の差はあれ、「情報を解釈し提示したもの」、つまり付加価値を持ったものだからです。読書を通して、情報を整理するためのさまざまな視点に触れましょう。読み終えたら、学んだ視点を使って、実際に情報を解釈してみます。どんなに未熟でもいいので、「自分の頭で考える習慣」をつけるようにするのです。

また、検索して情報を引き出すことができたら、それらを並べて、「そこから何が言えるか」を考えてみるのもよいトレーニングです。読書で仕入れた理論的な視点があれば、何らかの解釈をすることができるはずです。いわば「仮説を立てる」わけですが、これがあなたの付加価値になります。

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「思考脳」を鍛える方法 まとめ

ある質問、疑問に対して、

(1)関連するキーワードで検索し、情報を引き出す
(2)それらの情報を並べて、様々な視点から眺め、仮説を立てる
(3)仮説に説明能力があるか、例外はないかをチェックする
(4)説明できないことが出てきたら、別の仮説を立ててみる
(5)上記の(1)~(4)を繰り返し、自分なりの解釈を提示する

これらの作業を繰り返していけば、自然に思考力や発想力が磨かれ、「思考脳」が鍛えられていくはずです。

 

■ 榎本博明(えのもと・ひろあき)
心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企業研修・教育講演を行う。主な著書に『「上から目線」の構造』(日本経済新聞出版社)など。

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榎本氏の著書:
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