「夢の国」ディズニー、キャストの悲痛な訴え
LIMO / 2018年11月22日 12時15分
「夢の国」ディズニー、キャストの悲痛な訴え
ビジネス、今日のひとネタ
1983年に東京ディズニーランドをオープンして以来、多くの人々を楽しませてきた東京ディズニーリゾート。「キャスト(従業員)のおもてなし」「時計の少なさ」「リゾート外の建物を見えにくくした設計」などの細やかな配慮が非日常的な世界を創り出し、「夢の国」とも呼ばれていますよね。
ゲスト(客)である私たちには、このような素敵な面しか見えませんが、「夢の国」の維持は、簡単なことではないのかもしれません。ディズニーで働くキャストをめぐる最近の動きをまとめてみました。
過重労働やパワハラでの提訴
2018年の7月に、東京ディズニーランドの契約社員2人が、運営会社であるオリエンタルランドを提訴し、約755万円の損害賠償を求めました。先日、その第1回の口頭弁論が千葉地方裁判所で開かれました。
訴状によると、2人の原告のうちの1人は、キャラクターのコスチューム(着ぐるみ)を着用した仕事をしており、多い日では30分のグリーティング(ゲストとの交流)の後に10分休憩するというルーティンを7回繰り返していたといいます。その結果、「胸郭出口症候群」(神経や動脈が障害を受け、腕や肩などに痛みやしびれが生じる病気)を発症してしまい、2017年には労災が認められて現在は休職中とのことです。
実はディズニーランドで使用されているコスチュームは、重いもので約30キロにもなり、これを着用しながら何人ものゲストの対応をすることは、かなりの負担だったと考えられます。
また、もう1人の原告は、複数の上司から「30歳以上のババアはいらねーんだよ」といった暴言を受けたり、同僚からいじめを受けたりしたと訴えています。一方で、2人とも記者会見で、「ディズニーの世界は変わらず好きであり、多くの人に求められている仕事であること」「裁判を起こすのにはためらいがあったこと」などを口にしました。オリエンタルランド側は答弁書で請求棄却を求めています。
深夜清掃員の死亡事故
2015年10月には、東京ディズニーシーで勤務していた「ナイトカストーディアル」(パークの深夜清掃業務)の男性が亡くなる痛ましい事故が発生しました。
ナイトカストーディアルは、ゲストと直接コミュニケーションを取ったり、ゲストの笑顔に直接触れ合ったりする業務ではないこともあり、ディズニーシーの中でも特に人手が不足している職種といわれます。清掃作業は体力を要する作業もあり、過労も死因の1つではないかという見方もあります。
この事件に関しては、ネット上で、
「(ナイトスカーディアルに)いつも感謝してる。もう事故は起きないで欲しい」
「ゲストが笑顔で過ごしたあとはたくさんのキャストさんが昼間のゲストの笑顔のために働いてくださっている」
など、事故をいたみ、業務への感謝を表すコメントがある一方で、
「ディズニー死ー」
「ディズニーのテーマパークで定められている行動基準の中で最も重要視されているものの一つが『安全』。行動基準が守られていたとは思えない」
といった、批判的な意見も見られました。
「台風でも休園しない」のは是か非か
東京ディズニーリゾートでは、「楽しみに来園してくださるお客様のために」という信念のもと、台風などの悪天候時にも開園します。この対応に関して、オリエンタルランド広報部は「ウェザーニュース」の取材に、「当園の施設の4分の3は屋内にあるので、台風に限らず強風や豪雨などの悪天候でも屋内のアトラクションなどをお楽しみいただけます。お車などで来園する方もいらっしゃいますし、ご宿泊のホテルによってはパークまでの送迎バスをご利用する方もいらっしゃいます」と答えています。
「ゲストのことを一番に考えた素晴らしい対応」
「悪天候だからってゲストを悲しませたりすることのない心遣いもディズニーらしい」
と捉える人もいますが、
「休園による不利益を回避したいだけだろうし、台風の中でキャストを働かせているような会社は、社員から提訴されて当然」
「台風で早退の対応をする企業がほとんどなのに、閉園まで働かされるオリエンタルランドはブラックすぎる」
と、キャストを心配する声も多くありました。これについては「台風等でキャストが自宅に帰れない場合は、近くの宿泊施設を手配してくれる」といった反論をする人もいますが、そもそもキャストの守秘義務上の問題もあり、実際にどうなのかはあまり公にはなっていません。
労災や事故はディズニーに限ったことではありませんし、こうした報道がなされるのも、やはり多くの人の注目が集まる企業だからということもあります。先ほども触れたように、訴訟を起こしながらもディズニーを変わらず愛していると話す人がおり、キャストの中には年間パスを買って休みの日にも遊びに来る人も多いといわれる「夢の国」。ゲストが安心して楽しめるのはもちろんのこと、キャストも安心して働ける場所であってほしいですね。
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