車載ミリ波レーダーが急成長、24GHzは日系が攻勢
LIMO / 2018年11月26日 20時45分
![車載ミリ波レーダーが急成長、24GHzは日系が攻勢](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_8537_0-small.jpg)
車載ミリ波レーダーが急成長、24GHzは日系が攻勢
交通インフラでの採用も進む
本記事の3つのポイント
ADAS(先進運転支援システム)の普及に伴い、クルマへのミリ波レーダーの搭載が進んでいる。現在、前方監視向けの77GHzと周辺監視の24GHzに加えて、今後79GHzが法整備化され成長していく見通し
以前はGaAs(ガリウム砒素)など化合物半導体ベースだったが、SiGeやSiなどシリコン系プロセスの採用が進んでおり、低コスト化・小型化が進んでいる
ミリ波レーダーの分野は欧米メーカーが先行していたが、近年は24GHz帯を中心に日系メーカーも製品投入を強化しており、巻き返しを狙っている
現在の先進運転支援システム(ADAS)においては、人間が行動するのと同じように、「認知」「判断」「操作」を高精度に行うことによって安全な走行が実現されている。そのなかで「認知」、つまり人の目に該当するものがセンサーである。センサーには、レーザーやレーダー、カメラ、超音波センサーなどがあり、それらがクルマの周囲(主に前後)をカバーするかたちで複数個搭載されている。
ADAS・自動運転用センサーの世界市場を見ると、2017年は8958億円規模で、内訳はレーダーが3969億円、カメラが4458億円となっており、両センサーで市場の95%を占めている。市場は大きく伸長しており、20年にはレーダーが7693億円、カメラが8133億円とそれぞれ倍増近い規模にまで拡大する見通しだ。その背景に挙げられるのが、NCAP(新車アセスメントプログラム)であり、20年のユーロNCAPではバック(後退)の際に歩行者を対象とした自動ブレーキ、交差点での四輪車、二輪車、自転車、歩行者を対象とした自動ブレーキが評価項目に追加される予定で、レーダー、カメラの搭載が不可欠となってくる。
拡大する(/mwimgs/2/c/-/img_2c9399cd729a3c6e526789c6a23497e313481.gif)
CMOS技術で低価格化
ミリ波レーダーは現在、前方監視向けの77GHzと周辺監視の24GHzに加えて、今後79GHzが法整備化され成長していく。低価格と相互干渉の観点から24GHzについても一定程度の市場を構成していくとみられる。
ボッシュにおけるLRR(Long Range Rader)製品を世代別に見ると、00年のLRR1から04年のLRR2、さらには09年のLRR3と、世代を追うごとにモジュールの大きさが小さくなり、重さも低減されている。この背景にあるのが、半導体の技術革新による小型化、高性能化である。
以前のGaAsベースのミリ波レーダー用送受信チップ(MMIC)は、低損失で高周波特性に優れていたものの、集積度として論理が集積できず、数チップを搭載していた。生産も6インチ基板であったため高コストが課題であった。それが、SiGeベースになると小規模論理が可能で、歩留まりも安定、基板にも8インチが採用されたことでコストが低減され、搭載拡大へ大きな追い風となった。
なお現在は、1チップ化が可能で300mmウエハーによるさらなる低価格化を可能とするCMOS技術の開発が進んでいる。将来的には、SiGeからCMOS技術へMMICのメーンストリームが変化していくと思われるが、「ディープ・サブミクロンの半導体チップは電源電圧が低いため、低電圧・低雑音がハードルとなる。また、論理集約はチップ内の局所発熱を引き起こすため高温動作・耐熱性の確保が必要になる」と開発エンジニアは指摘する。
77GHzミリ波レーダーのMMICでトップシェアを持つNXP Semiconductorsは、独自技術としてRFCMOSを有しており、この技術を用いることで、従来GaAsやSiGeでしか実現できなかった低ノイズ、ハイパワーの領域までCMOS技術を適用できるようにしている。
また、モジュールサイズに制限がある車両コーナー部への搭載を見据えた短距離のミリ波レーダーに向けては、アンテナをトランシーバーMMICと同一パッケージに一体化した技術(Antenna-in-Package)を開発。21年から量産を開始する計画だ。
一方で、検知精度の向上としては、トランシーバーMMIC4個をカスケード接続した16Rx品(16本の受信チャネル)によるイメージングレーダーを提案。これにより物体の単なる認識ではなく、「識別」も可能になるとしている。
ショートレンジを担う24GHz準ミリ波レーダー
24GHz準ミリ波レーダーは、主に車両のバンパー内に搭載され、走行中にドライバーの死角になりやすい後側方の走行車両や、後退時に左右後方から接近してくる車両を検知する。これにより、車線変更時に隣接車線を走行する車両の存在を通知するシステムや、駐車場からの後退時に左右後方から接近してくる車両の存在をドライバーに注意喚起、および衝突の危険性がある場合には自動ブレーキ制御を行うシステムの実現に寄与する。
また、先述のとおり、20年にはユーロNCAPで後退時の自動ブレーキ、交差点での自動ブレーキが評価項目に追加される予定であるため、24GHzも市場が拡大していく。なお、システムのサプライヤーとしては、HELLAを中心とした欧州勢が市場を牽引している状況だ。
これまで後塵を拝してきた日本勢だが、デンソーが17年に新製品の市場投入を発表。同年7月に発売されたトヨタの「カムリ」に搭載されている。この新製品は、車両の前進・後退の運転操作に連動して、移相器と呼ばれる装置を切り替えることで、検知の方向や範囲をスピーディーに切り替えることを可能としている。また、電波を送受信する回路と移相器回路をそれぞれICに集積することで、センサーの薄型化も実現している。
デンソーの24GHz準ミリ波レーダー
![](https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/3/b/-/img_3bfc3f664073f005b895ebfbd175ca04291159.jpg)
また、古河ASは、16年11月からマツダの「CX-5」向けに24GHzミリ波レーダーの本格量産を開始した。古河電工グループが有する大容量光通信機器などで培った信号伝送技術や高周波技術を応用して製品化を実現した。
18年10月からは、より性能を高めた次世代版レーダー(プロトタイプ)を開発し、実際の走行条件や周辺環境を想定した車載評価をスタートさせている。レーダーの課題であるバンパー内の搭載性において自由度を維持しつつ、パルス方式の利点をさらに伸ばして、速度分解能を4倍以上に高めている。さらに、準ミリ波レーダーでは実現が難しい、遠方検知と近傍/極近傍検知(~2m程度)の両立を図り、かつ課題であった検知距離の克服に成功。様々な車種への展開を視野に、25年度には売上高200億円を目指していく。
交通インフラでの採用進む
77GHzミリ波レーダー、24GHz準ミリ波レーダーは、ADAS・自動運転に向けたクルマ側での搭載に主にスポットが当たってきたが、今後は交通インフラ側での採用拡大も期待されている。その1つが、交差点での歩行者感知器だ。
住友電気工業が製品化した安全運転支援システム用の歩行者用感知器は、24GHz準ミリ波レーダーの採用により優れた環境性能に加え、独自のアルゴリズムを用いて高い歩行者検知精度と広い検知エリアを実現している。交差点に進入して右折する車両に対して、道路側に設置された感知器で検知した横断歩道上の歩行者・対向車の存在情報を無線装置から提供することで、画面表示・警告音でドライバーに注意喚起する。
国内では、すでに5府県で納入されているもようで、今後のさらなる導入拡大が期待されるところだ。
電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡
まとめにかえて
ADASの登場で車載用センシングデバイスの普及が期待されるなか、ミリ波レーダーの市場性はLiDARと並んで非常に高いです。記事にもあるとおり、普及のカギは低コスト化と小型化です。汎用的なCMOSベースでの製造が可能になれば、コストは飛躍的に下がる見通しですが、GaAsで満たせていたような性能を保てることができるのか、コストと性能を高いレベルで両立させることが求められています。
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