それでも人はポテトチップスを食べる〜シュリンクフレーションの時代
LIMO / 2018年12月4日 10時0分
それでも人はポテトチップスを食べる〜シュリンクフレーションの時代
日本のインフレ率は190カ国中174位
日本のインフレ率は2000年代に入りマイナスとなり、その後一時的に上昇したものの足元では再びコンマ数%に下落。世界のインフレ率ランキングでも190カ国中174位と、ごく低位に推移している国の一つとなっています。
日銀はかなり頑張って、2013年1月に「『物価安定の目標』を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現する」という約束をしているものの、それ以来のインフレ率は年平均0.8%程度と、2%には遠く及びません。
一消費者としては、物価が上がらない低インフレやデフレは大歓迎なのですが、そうした環境下でも目に見えないところでインフレが進んでいることをご存じでしょうか。
実はインフレ進行中
たとえば、菓子メーカー・カルビーの 「ポテトチップス」ですが、1975年の発売当初は一袋90グラム入りが100円(税抜)でした。2007年には価格は変わらず内容量が65グラムに減り、2009年には60グラムで100円(税抜)になったといいます(データ出典:shrinkflation.info(http://shrinkflation.info/index.php?%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%BC%20%E3%83%9D%E3%83%86%E3%83%88%E3%83%81%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9))。スーパーで売っている「ポテトチップス」の袋が、いつのまにか小さくなっていたなとか、こんな量だったかな?と感じている読者も多いと思います。こういう現象を「シュリンクフレーション※」と言ったり、「ステルス値上げ」などと言う場合もあるようです。
※英語のシュリンク(縮む)にインフレーションを合わせた造語
2007年と2009年の1グラム当たりの価格を比べると、1.53円から1.67円に値上げされています。これは、年間約4%の値上げとなります。同期間のインフレ率は年平均0.04%程度ですから、市中の平均インフレ率の100倍の値上げをしていることになります。
このポテトチップスの例はほんの一例で、実際には様々な商品やサービスが実質的に値上げされているのは想像に難くありません。
ただし、筆者はこうした“企業努力”を好ましいと思っています。デフレや低インフレ下でも利益を上げていかないと、給料やボーナスを払えないわけですし、売り上げが上がる限り実質的な値上げは企業経営としては健全と言えるでしょう。増益により、ひいては法人税の増収も期待できます。
むしろ、公的な経済統計が実質的なインフレを捉えきれていない方が問題ではないでしょうか。
カルビーの株価推移は?
もちろんデフレ経済下では値上げなんてもってのほか、という企業や業態があることも事実です。であれば逆に、値上げができる企業は高い付加価値を提供できる力があったり、業界内で高い競争力を持っていたりするのではないでしょうか。
図表2はカルビーの株価推移です。株価は右肩上がりで、上場来8年弱で株価は約8倍になっています。株価上昇の要因がすべて値上げによるものだと言うつもりはありませんが、少なくとも投資家は業績好調を見込んでいたと考えられます。
このように、消費者の底堅い需要がある商品やサービスは、多少値上げしたとしても受け入れられますし、ポテトチップスのようにむしろ一袋の分量が減った分、二袋買っておこうかという消費行動にもつながります。
統計上はデフレや低インフレにあえいでいる日本経済ですが、人は必要なものにはお金を使うもの。たとえインフレでも、人はポテトチップスを食べるのです。
本稿は以上です。なお、GCIアセット・マネジメントでは、2019年から毎月数回、資産形成・運用などに関するさまざまなテーマで無料セミナーを開催いたします。ご興味のある方は、こちらからセミナー情報の詳細(https://www.seminarjyoho.com/company_show_8477.html)をご覧ください。
注:本コラムで取り上げた企業や商品名は、読者の理解を進めるためのものであり、個別銘柄を推奨したり、将来の株価を予想したりするものではありません。
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