「つい軽く見られる」優しい上司に知ってほしい心理テクニック
LIMO / 2018年12月14日 20時15分
「つい軽く見られる」優しい上司に知ってほしい心理テクニック
人間関係をシンプルにする心理術
最近は、人手不足や転職市場の活性化もあって、せっかく入社した若手人材がなかなか定着してくれません。一方で、マネジャー層を見ても、「いつ寝てるんだ」というくらいガツガツ働きまくる上司や、体育会的な指導をする上司は減り、以前と比べて「優しい上司」が増えているとよく言われます。ブラック企業への批判やパワハラ問題、政府が旗振りする「働き方改革」なども、この傾向をさらに後押ししているのかもしれません。
ただ、「あんまり部下にガミガミ言うのは好きじゃない」という優しい上司の方々でも、「理由なく軽く見られる」「必要以上になめられる」のはさすがにイヤなのではないでしょうか?
メンタリストでビジネス心理関連の著作も多いロミオ・ロドリゲス Jr.さんは、「心理的に言えば、そもそも若者が目上の人をなめるというのは普通の行為」だと言います。その上で「多くの優しい上司の方に、一種の『護身術』として身につけてほしい心理テクニックがある」と話します。同氏の著書『仕事は嫌いじゃないけど、人間関係がめんどくさい!』から、「シャークケージ効果」と呼ばれるそのテクニックをご紹介します。
「サメを刺激しないでください」
ハワイのノースショアに行くと、マリンアクティビティーで「シャークツアー」というものがあります。もしかするとあなたも経験済みかもしれません。サメを見るために、船から人が数人入るケージ(檻)を垂らし、参加者はその中に入って、海中でサメたちとご対面するというわけです。
もちろんサメの種類は比較的温厚なタイプですが、場所によっては映画『ジョーズ』で有名な「ホホジロザメ」を観察することもできます。ただ、このホホジロザメは興奮をするとケージを破ってしまうこともあり、そのスリル感も含めて味わう人も後を絶ちません。
もし、あなたがこのシャークツアーを体験したことがあるのなら、スタッフの人にこう言われたことがあるはずです「ケージの中に入っても、サメを刺激しないでください」と。
若者が「目上の人をなめる」のは普通のこと
さて、いつの時代でも、職場に悩みの種は存在します、「職場の上司や先輩をなめてかかる若手社員が一定数いる」というのもそのひとつです。
しかも最近では、すぐにブラック企業だ、パワハラだと騒ぎ立てられる始末。若者を辞めさせないようにと、昔の会社員では考えられないような待遇を受けています。すぐに「辞めます」というセリフを口にし、上司から必死に「優しく止められる」という不思議な現象が起きているわけです。
なぜなめられるのか? これは「上司がなめられるようなことをしているからだ」と考える人はいます。もちろんそういう部分もありますが、基本的にそれは間違いです。
まずここに注意してほしいのですが、そもそも若者は、目上の人を「なめている」のが普通なのです。
あなた自身の過去もぜひ思い出してほしいのですが、反抗的な態度は取らずとも、上司や先輩に対して、心の中で「どうしてこんな奴に言われなきゃいけないんだ」と考えたことはないでしょうか?
なめた態度は、焦りを中和する「回避手段」
実は、若者が他人に対してなめた態度を取るというのは、「自分は優位である」とその人自身が勝手に認識したい心理からです。いわば対人関係において「ぶれない軸」みたいな自信を欲しながらも、それを持つことができない「焦り」を中和するための回避手段のひとつなのです。
だから、なめた態度を取るのは、あなたのせいではないということを覚えておきましょう。重要なのは「彼らの態度」ではなく、それを受けたあとの「あなたの態度」なのです。
なめた態度を取って、それに対してあなたが迎合してしまうと、「おっ、何だ、こいつ意外とたいしたことないな、ビビってるのか」と内心で思われるわけです。
そうなれば、今度はしっかりとした態度で「なめて」きます。
「ケージの中」にいるのは誰か?
ここでシャークケージの話に戻りますが、このような状態になると、ケージの中に入っていた上司が、サメの部下に刺激を与えたことになり、部下たちの攻撃が始まります。
こうなってはダメです。立場を逆にしなければなりません。部下をサメにするのではなく、ケージの中に置かなければならないのです。そして上司はサメになり、部下が「なめる」、つまり上司に刺激を与えたときに、いきなり攻撃に転じるのです。たとえば、飲み会によく誘うものの、いつもドタキャンで参加しない部下がいたとします。参加をすると言ったものの、案の定、いつものように直前で断ってきたとしましょう。
「〇〇さん、すみません、やはり今日は調子が悪いのでやめておきます」
きっとこんな感じで話しかけてくると思います。このとき言うべきことは、「そうか、仕方ないな、わかった」……ではありません。
怒りの頂点から菩薩のような優しさに
部下がそんなことを言ってきたら、しばらく黙ってください。そして腹いっぱいに息を吸い込んで、ありったけの怒声を出すのです。
「おい、何考えてんだ! 参加するって言ったのはお前だろ? 体調ぐらい直前にならないとわからないのか? 予約もしてるんだぞ、どうすんだ!」
重要なのはこのあとです。怒声はこの一瞬でいいのです。あとは優しい口調に「いきなり」戻ってください。
「……まぁ、体調が悪いのなら仕方がないね。ゆっくり休んで、明日の仕事に備えなさい」
ゆっくり、優しく諭すように話すのです。怒りの頂点から、いきなり菩薩のような優しさを演じる、この一瞬の変わり方の差が激しいほどいいわけです。
ポーランドの大学で行われた心理実験
このとき、部下の心の中ではどんな心理状況になっていると思いますか?
答えは、「この上司、日ごろは優しいけど、キレたらヤバいかも……」です。
ポーランドのオポーレ大学が1998年に論文で提唱したテクニックに「FTR法」というものがあります、基本的な考えとしては「恐怖から安心」という心理状態にする手法なのですが、この効果を検証するためにどんな実験をしたのか? それは、通行人を驚かして、驚いたところで、アンケートをお願いするというものでした。すると、普通にアンケートを求めた場合に比べて、実に2.5倍の回答率になったというものです。
シャークケージ効果を利用すると、まさにFTR法と同じ効果が生まれるわけですが、特徴的な違いとして、「恐怖から安心」、そして「恐怖の固定化」へと進行していくわけです。ぜひ「怒らせるとヤバい」と思われる上司になってくださいませ。
■ ロミオ・ロドリゲス Jr.(Romeo Rodriguez Jr.)
1972年香港生まれ。メンタリスト。幼少時より英国・カナダ・日本とさまざまな国で生活し、4カ国語を操る。2010年には香港大学の専修科でメンタリズムの講師として抜擢される。経営・営業・サービスや接客業などビジネスの現場で「いかに人の心を読むか」を指導。ビジネス心理術に特化した説得術・交渉術・読心術・営業術・人心掌握術を得意としている。
(https://amzn.to/2PTTNsg)
ロミオ・ロドリゲス Jr.氏の著書:
『仕事は嫌いじゃないけど、人間関係がめんどくさい!(https://amzn.to/2PTTNsg)』
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