VERY妻はこう変わった。夫の家事育児への意識は変わるのか?
LIMO / 2018年12月20日 11時0分
VERY妻はこう変わった。夫の家事育児への意識は変わるのか?
「きちんと家事をやるなら」特集が話題に
「ママであること」を目いっぱい楽しむためのファッションやライフスタイルが詰まった女性誌の『VERY』。今、最新号の特集がSNSで話題になっています。
それは、「『きちんと家のことをやるなら働いてもいいよ』と将来息子がパートナーに言わないために今からできること」。
約50文字の中に、子育て中の夫婦がそれぞれ育ってきた家庭の環境や、家族の人間関係がギューッと凝縮されているような強烈なタイトルです。
『VERY』という雑誌に対しては、「経済力がある夫を持つ、オシャレ感度が高いセレブ主婦が読む雑誌」というイメージを抱いている方が多いかもしれません。
これまで、20年以上にわたって「良い母」「良い妻」のイメージを作ってきた『VERY』に何が……? その歴史を振り返ると、世間で「正解」とされる育児観の変化が浮かび上がってきます。
90年代~2000年前半「シロガネーゼ」「アシャレーヌ」のセレブ全盛期
『VERY』は光文社から1995年に創刊。三浦りさ子さんや岡田美里さんといった人気モデルが看板モデルとなり、東京都白金発のセレブ妻「シロガネーゼ」や、兵庫県芦屋発の「アシャレーヌ」といった言葉を世に送り出します。
また、「公園デビュー」「幼稚園デビュー」のシチューションに合わせたファッションや「主婦だけどお嬢さんスタイル」などを提唱。
当時は人気のプロモデルが見せてくれる、ちょっと手に届かないけど「目の保養」と感じられる華やかな雑誌の世界が印象的です。
2010年、「イケダン」登場!
そして、2005年ころから「園ママの“掟”」や「受験バカ一代」という連載が始まり、セレブママの生態を斜めから見る読み物が出没。
家事も育児もオシャレも楽しむ女性が模範……という表向きのメッセージを発しながらも、「“幸せ”は夫婦のオシャレに表れる」「記念日くらいキレイな妻だと感謝して」といった攻めた特集タイトルが目立ち始めます。
そして2010年2月号、「イケダンの隣に私がいる!」という大特集が組まれます。
「イケてるダンナ」を意味する「イケダン」という言葉に反応したのが、当時TBSの局アナで、昼の人気ラジオ番組のMCをつとめていた小島慶子さんでした。
小島さんは、生放送の番組中で妻の幸せを実現するための1つのツールのような「イケダン」や、「私の“キレイ”が家族の幸せ」という世界観を強烈に批判。育休中で、乳飲み子を昼寝させながら半分寝かけていた筆者がすっかり目覚めてしまうほどの熱量でした。
その後、『VERY』はその批判を無視することなく、小島さんを連載コラムの執筆者として起用することに。
このころから「『産婦人科医の主人は、私の産後うつに気づいてくれませんでした』 聞こえていますか? 産後うつという叫び」(2010年8月)や、「ママ友ワールドは地獄じゃない」(2011年9月)といった、「キラキラした『VERY』の世界」の影の部分も積極的に発信し始めます。
子育ての「光と影」のコントラストが印象的な2010年代
2010年代に入ると、子育て中にスカウトされた「タキマキ」こと滝沢眞規子さんや、クリス・ウェブ・佳子さんといった元一般人のモデルが活躍。
ファッションのコーディネートページにカジュアルな要素が増えるとともに、働くママのためのコーディネートも充実していきます。
また、子育て世代のライフスタイルの多様化にともない、誌面の内容にも変化が見られます。
「子育てがつらい私はダメ母ですか?」(2013年2月)
「『いい母』の定義なんて誰が決めた?」(2016年10月)
「ママだからって、夕食をがんばりたくない宣言!」(2018年3月)
このように「時々、子育てが辛い」という感情に寄り添いつつ、家事や育児をパーフェクトにがんばらなくてもいいという特集が組まれるように。
2015年には世の中の「イケダン」に向けて、<忙しすぎて洗えなかった夕食のお皿をとがめたことはありませんか?(中略)「ありがとう」という前に、ストックの切れそうなトイレットペーパーを買ってこよう。言葉より、そろそろ態度で示そうよ> というメッセージを発信し、SNS上で話題となりました。
冒頭で紹介した2019年1月号の特集に至るまでには、こうした様々な「前振り」があったのです。
親世代から引き継いだ「夫は稼ぎ、妻は家事と育児をすべき」という価値観は、まだまだ子育て中の男女にまとわりつき、不況から就職氷河期をくぐりぬけた世代に、「幸せとは何か」という疑問を投げかけ続けています。
「“家事をしろ”と言う前に、男と同じだけ稼いでこい」と妻を見下す夫、「育児の大変さを知らないくせに」と夫を見下す妻。
そんな不毛な争いの原因の1つがそれぞれの育ってきた家庭環境にあるとしたら、その連鎖をVERY世代で断ち切ろうという気概が感じられます。
今回の『VERY』の特集は、現代の子育て世代が社会の「過渡期」に置かれていることを自覚しつつ、子どもたちの未来を見据えた示唆に富む特集だと言えるのではないでしょうか。
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