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ゴーン氏逮捕から1か月。日産とルノーに温度差で次はどうなる

LIMO / 2018年12月19日 9時0分

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ゴーン氏逮捕から1か月。日産とルノーに温度差で次はどうなる

日産自動車の再建の立役者、カルロス・ゴーン氏が東京地検特捜部に逮捕され、ゴーン氏は世界的な経営者から一転、容疑者となってしまいました。東京地裁によるゴーン氏の勾留も延長されています。ここではこれまでの経緯とその背景、そして今後どのような展開になるのかについて考えてみます。

ゴーン氏逮捕からここまでの経緯まとめ

ちょうど1か月前の11月19日、東京地検特捜部は日産のカルロス・ゴーン前会長を金融商品取引法違反の容疑で逮捕しました。

その容疑は、2010年3月期から15年3月期までの日産の有価証券報告書にゴーン氏の報酬額を50億円少なく記載したという役員報酬額の虚偽記載となっています。

役員報酬は10年3月期から、報酬額が年1億円以上になる場合は役員の氏名と報酬額を有価証券報告書へ記載することが義務化されています。

また15年3月期〜17年3月期においても報酬を40億円過少に記載した疑いがあるとして、ゴーン氏は再逮捕されました。

こうした状況の中、現時点でゴーン氏をすでに解任した日産といまだゴーン氏の調査を続け判断を保留しているルノーとの間では対応の差が出ています。今後、日産とルノーはどのような対応を見せるのでしょうか。

15年マクロン大臣はルノーと日産の合併画策も失敗【第1ラウンド】

今後の行く末は現段階ではまだ見通せません。

しかし、ゴーン氏の転落の影には、運命のイタズラとも言える、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の存在があります。ここでは改めてその歴史的な経緯を整理しましょう。

15年、フランスの社会党政権に抜擢されて経済・産業・デジタル大臣(経産大臣)を務めていたマクロン氏は、フランス国内の雇用の拡大を目的に日産とフランスの自動車大手ルノーの合併を画策したともいわれています。

14年フランスでは2年以上保有する株主の議決権が2倍になる「フロランジュ法」が成立。これにより、フランス政府によるルノーの議決権にも影響することになります。

しかしルノーの最高経営責任者(CEO)であるゴーン氏は、株主総会で「1株1議決権」を維持する案の採決を目指します。この動きに対してフランス政府はルノーの持ち株比率を15%から一時的に引き上げ、株主総会の採決を阻止。

ルノーは日産株を43%保有しており、日産の経営に大きな影響力を持ちます。一方日産はルノー株を15%保有しているものの、議決権はありません。

フランス政府はルノーに、日産との経営統合を要請したといわれていますが、ゴーン氏の大反対及び日本政府の反対もあり、敢え無く野望は潰えます。

15年末、日産は書面においてルノーが日産の取締役会を支配したり、株主総会の決議を反故にしないという確約を得ました。

またルノーの非戦略的な株主投票の際、フランス政府の議決権に上限を設定します。

さらに日産はルノーやフランス政府が合意に違反した場合、保有するルノー株比率15%を25%以上に引き上げ可能となりました。会社法により日産はルノー株を25%以上保有すれば、ルノーの日産への議決権を無効にすることができます。

程なくマクロン大臣も政権を去り、合併話は立ち消えになったかに見えました。

17年5月にマクロン氏がフランス史上で最年少の大統領に就任

しかし、マクロン氏は、なんとフランス大統領として再びゴーン氏の前に現れます。

17年のフランス大統領選挙では、マクロン氏が当選しました。

マクロン氏は経産相であった当時、百貨店などの日曜営業を可能とする規制緩和に着手しました。しかし、労働組合が支持する社会党内の強い反対により、規制緩和は断念せざるを得ませんでした。

大統領選を目指し中道政党「En Marche!(前進)」という組織を発足。経産大臣も辞職します。

選挙では決め手となる候補者がいない中で、ルペン候補の大統領就任だけは阻止するという妙な連帯感の中で行われました。そして無所属で若く、そして有権者受けのよいマクロン氏が泡沫候補から一転、各政党に担がれる形で大統領選に勝利。

こうしてゴーン氏とマクロン氏の、対決の「第二幕」が開く事になります。

ゴーン氏とフランス政府の微妙な関係【第2ラウンド】

2018年6月、ゴーン氏はルノーの会長兼CEOに再任されました。任期は4年です。またゴーン氏の17年の報酬738万ユーロ(約9億5000万円)の案も承認されました。

この時、フランス政府はゴーン氏の報酬案に反対し、結果は僅差での承認となりました。ゴーン氏の報酬案は承認されたものの、フランス政府からすれば、引き続きゴーン氏へはプレッシャーを与えるポジションにあるぞということを見せつけた格好にあると言えます。

また、フランス政府は以前から、日産とルノーの連携強化を求めていました。ゴーン氏は採決に先立ち、日産と三菱自動車の3社連合の関係強化を目指すことを明言しており、ルノーの筆頭株主であるフランス政府の条件を一部飲んだようにも見えます。

こうした前提に立てば、「第二幕」はマクロン氏の勝利とも言えるのではないでしょうか。

ゴーン氏もルノーと日産の合併はやりたくなかったのでは

ルノー・日産・三菱の3社連合と言われますが、日産再建のカリスマ経営者ゴーン氏あってこそ機能する組み合わせです。

ゴーン氏がいなくなったらどうなるのかと「ポスト・ゴーン」体制をフランス政府が心配するのも当然です。だからこそゴーン氏に対しルノーと日産の合併を求めたと考えられるのではないでしょうか。

一方、日産とルノーを無理に合併させてもうまくいかない事は、ゴーン氏に分からないはずはありません。本音ではルノーと日産の合併は手掛けたくなかったのではないでしょうか。

ゴーン氏はルノーでも報酬をフランス政府から監視され、また、仮にゴーン氏がルノーと日産の合併をやりたくなく、結果として今回の逮捕を招いたのだとすれば、ゴーン氏にとっては踏んだり蹴ったりの状況といえます。

ゴーン氏逮捕という「ゴーン・ショック」、今後の展開はどうなるのか

ゴーン氏は日産とルノー、三菱の会長に就き、3社のアライアンスのCEOを務めていました。ゴーン氏に権力が過度に集中していたことも、今回の事態を招いた原因の一つといえます。

日産はゴーン氏の会長職を解任しましたが、ルノー側はゴーン氏の会長職はそのままの状態です。この状況は日産の現経営陣にとっては、なんとも落ち着かない状況といえるのではないでしょうか。

ゴーン氏の今後について、日産の視点だけでなくフランスそしてマクロン大統領との関係の視点も持つことで、ゴーン氏への東京地検の対応が決まることではじまる「第三幕」も目が離せない事件となっています。

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