2019年は米利上げ停止へ? 今年の投資戦略と厳選10銘柄まとめ
LIMO / 2019年1月7日 6時0分
2019年は米利上げ停止へ? 今年の投資戦略と厳選10銘柄まとめ
2019年米国株式市場展望(後編)
2019年米国株式市場展望の後編※では、米利上げ停止を視野に入れた投資戦略と注目の個別銘柄についてまとめます。
※前編はこちら『2019年もテクノロジー株は有望なのか? 注目銘柄と大型IPOを展望する(https://limo.media/articles/-/9039)』
利上げスピード減速で高配当銘柄の人気復活へ、金融セクターに妙味
今年は高配当銘柄が投資戦略として見直されそうです。低金利時代に人気を博した高配当銘柄ですが、ここ数年は超低金利から金利水準が上昇してきたことで人気が陰りが見えていました。
しかし、ごく最近になって高配当で知られる一部のセクターのパフォーマンスが好転しており、人気復活を匂わせています。たとえば、S&P500指数の公益事業セクターの年初来リターン(12月13日時点)は約7%で、S&P500指数のマイナス1.4%を大きく上回っています。
GW&Kインベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、アーロン・クラーク氏は市場全体の利益成長の減速によって、高配当銘柄は有利になると主張しています。
ゴールドマン・サックスはS&P500指数の金融セクターの来年の1株当たりの配当成長率が16%となり、他の全てのセクターを上回ると予想。「配当成長の大半をけん引するのは、今年の第3四半期から2019年の第2四半期末までの1年間(2018年の包括的資本分析=CCARの対象年度)に前年度比27%の増配を実施する米大手銀になるだろう」と指摘しています。
参考:S&P 500 Companies Might Slow Down the Dividend Hikes Next Year(BARRON'S, 12/24/2018)
米利上げ停止でドル安、新興国に熱視線
12月米連邦公開市場委員会(FOMC)での金利見通しによると、2019年中に2回の利上げが予想されています。
しかし、12月24日現在のCMEフェッドウォッチによると、2019年中に1回以上の利上げが実施される確率は30%以下となり、ゼロ回が60%強、利下げが10%という状況ですので、市場参加者は2019年中の利上げは無理ではないかと考えているようです。
また、米債券市場では長短金利が逆転して、いわゆる逆イールドが発生しています。逆イールドは景気後退の前兆の一つと考えられており、FRBの利上げ停止観測を後押ししています。
米利上げ停止観測の浮上に伴って、2019年は新興国へ投資すべきとの声が強まっています。ここ数年は、米利上げによるドル高で新興国市場のアンダーパフォームが続いていましたが、米利上げ停止によりこの流れが反転し、新興国のアウトパフォームが期待されているからです。
バロンズが一押しする「2019年に投資すべき厳選10銘柄」
最後にバロンズによる「2019年に投資すべき厳選10銘柄」を簡単に紹介しましょう。10銘柄は、アルファベット、アップル、バンク・オブ・アメリカ、ブラックロック、キャタピラー、シェブロン、ダイムラー、デルタ、エナジー・トランスファー、トール・ブラザーズになります。
アルファベット
RBCキャピタル・マーケッツのアナリストであるマーク・マハニー氏は、グーグルをインターネットの必需品と呼んでいます。同氏およびその他の強気のアナリストの目標株価は約1400ドルとなっています。
アルファベットの株価は1062ドル(12月11日)で、2019年予想の1株当たり利益(EPS)は47ドル、株価収益率(PER)は23倍と妥当な水準に収まっています。
また、1株当たり年3ドルの損失を計上している「アザーベッツ(その他部門)」には、自動運転技術のウェイモが含まれていますが、アナリストの推定によれば同事業は500億ドル以上の価値があるとされています。
アップル
期待外れの7-9月期決算を受けて、アップルの株価は10月の過去最高値から20%超下落して171ドルとなり(12月13日)、2019年9月期の予想EPSである13.30ドルに対するPERは13倍へと低下し、バリュエーションが魅力的になっています。
今期に関してはiPhone(アイフォーン)の販売台数が5~10%減少したと想定しても、業績へのリスクが限定的なため、株価は下支えられる可能性があります。
アップルの採算性の高いサービス事業の収入は、2018年9月期に24%増加して370億ドルに達しており、2020年には500億ドルに達する勢いです。本年度の自社株買いの規模は約700億ドル、発行済み株数の8%と世界最大規模になっています。
バンク・オブ・アメリカ
バンク・オブ・アメリカは、米国最大の個人向け銀行業務のフランチャイズと、ウェルス・マネジメント事業を抱えながらも、最近の株価下落でバリュエーションが魅力的になっています。
同行の株価は25ドル(12月10日)で、2018年の予想EPS(2.58ドル)に対するPERはわずか10倍です。2019年のEPSは2.87ドルと予想されており、PERは9倍未満に低下します。2019年6月までの1年間で、時価総額の約10%を自社株買いと配当で株主に還元する可能性があり、配当利回りは2.5%です。
投資の神様、ウォーレン・バフェット氏は同行の信奉者で、バークシャー・ハザウェイは第3四半期にバンク・オブ・アメリカを50億ドル買い増して、実質的に10%の保有上限に達しています。
ブラックロック
ブラックロックは、上場投資信託(ETF)のプラットフォームで、運用資産が1兆8000億ドルを超えるiシェアーズを保有しているため、安定したキャッシュフローが期待できます。
ブラックロックの株価は387ドル(12月13日)で、2018年の予想EPS約28ドルに対するPERは14倍、配当利回りは3.2%です。KBWのアナリスト、ロバート・リー氏は同社に対して強気で、目標株価を485ドルとしています。
キャタピラー
キャタピラーは世界産業の代表銘柄とみなされており、ウォール街が景気の先行きを警戒する中で株価が打撃を受け、年初来で20%下落して126ドル(12月13日)となりましたが、利益は70%増加する見通しです。また、2019年予想EPS(12.87ドル)に対するPERは10倍で、配当利回りは2.7%です。
JPモルガンのアナリストであるアン・ドゥイグナン氏は、キャタピラーに持続的な上昇サイクルがあるとみており、目標株価を188ドルとしています。米中貿易摩擦に関して何らかの合意があれば、株価はほぼ間違いなく上昇するとみられています。
シェブロン
石油大手のシェブロンは、配当の安全性、バランスシート、生産の見通しにおいて、総合エネルギー企業の中で傑出しています。
オーストラリアの2カ所の液化天然ガス大型施設が完成して主要な設備投資プログラムが終了し、多額のフリーキャッシュフローを生み出しています。株価は年初来7%下落の116ドル(13日)で、予想EPSの9ドルに対するPERは13倍、配当利回りは3.9%です。
JPモルガンのアナリストであるフィル・グレシュ氏は、目標株価を144ドルとしています。
ダイムラー
ダイムラーの時価総額570億ドルに対し、電気自動車メーカーのテスラは630億ドルです。売上高はダイムラーの方が10倍多く、テスラの赤字に対してダイムラーの本年度の利益は100億ドルとなる見通しです。
メルセデスの失望的な販売台数と欧州のディーゼル規制順守の費用を反映して第3四半期は軟調な決算となり、ダイムラーの株価は年初来で33%下落しています。
株価上昇の材料を欠いている観は否めませんが、超割安な株価自体が材料視される可能性は十分にありそうです。
デルタ航空
デルタ航空は米国の主要航空会社であるにもかかわらず、最近の株価下落で予想PERがわずか8倍になっています。2019年のEPSガイダンスが6~7ドル、株価は53.55ドル(13日)です。
デルタの利益率は、前後に余裕がある座席に対する特別料金や荷物の超過料金の徴収、効率的なメンテナンスによって、米国航空会社の中では最も高い水準です。2019年には25億ドルの株主還元を予定しており、2.6%の配当利回りは米国航空会社の中で最高です。
クレディ・スイスのアナリストであるホセ・カラド氏は、デルタ航空の目標株価を71ドルとしています。
エナジー・トランスファー
エネルギー・パイプラインの運営で国内大手のエナジー・トランスファーの株価は約14ドルで、配当利回りは8.4%と非常に魅力的です。同社は10月に、ゼネラル・パートナーとリミテッド・パートナーの株式を一体化し、複雑な株主構造を単純化しています。
会長で同社の最大株主であるケルシー・ウォーレン氏は株価が割安と考えており、11月に公開市場で300万株を取得しています。平均取得価格は15ドル超で、現在の株価を上回っています。
株価は利払い・税引き・償却前利益(EBITDA)の約9倍で同業他社より割安になっており、モルガン・スタンレーのトム・エイブラムス氏によると、同業他社並みのバリュエーションであれば株価は約25ドルになります。
トール・ブラザース
ウォール街では住宅建設会社を崖から落ちたかのように評価しています。トールの株価は年初来で32%下落して約32ドルとなり、株価純資産倍率(PBR)は1倍程度になっています。
ただし同社は黒字を維持しており、このようなバリュエーションは理解に苦しみます。2019年10月期のEPSは前年度並の4.85ドルと予想されています。また、昨年度に自社株の8%を買い戻した後で、今期も自社株買いを続けると予想されています。配当利回りは1.4%です。
ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのアナリストであるスティーブン・イースト氏は、依然として強気のアナリストの1人で、目標株価を45ドルとしています。
参考:Top 10 Stock Picks for 2019(BARRON'S, 12/14/2018)
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