損が膨らむドルコスト平均法に気をつけたい
LIMO / 2019年1月2日 14時15分
損が膨らむドルコスト平均法に気をつけたい
定期的に株式や外貨を買いつける「ドルコスト平均法」。投資初心者向けアドバイスに必ずといってよいほど登場する投資手法です。ドルコスト平均法は考え方と実行法がシンプルなこともあり、認知度も高いようです。しかし、ドルコスト平均法には気を付けるべきポイントがあります。今回はそのポイントについて見ていきましょう。
ドルコスト平均法のメリットとは
ドルコスト平均法は、投資初心者向けにつみたて投資などのシーンですすめられることが多いようです。
毎月決まった日に自分で決めた投資金額分だけ、株式や投資信託といった有価証券、また外貨を買い付けるというものです。
上記のようなケースですと、基本的な考え方としては、以下のようなメリットがあります。
買い付け金額が決まっているので、株価が下がれば、より多くの株数を購入でき、平均買い付け価格を下げることができる。
買い付け金額が決まっているので、株価が上昇すると、より少ない株数を買うことになり、高値掴みを避けられる
また、いわゆる「つみたて投資」をしている際には、「毎月忘れずに買い付けをすることができる」や「毎月買う金額を決めているので、相場が弱い局面でも淡々と安く買付することができる」というようなコメントも多いでしょう。
ドルコスト平均法のデメリットともいえる盲点
このようにドルコスト平均法は、投資初心者には細かいことを考える要素を減らしてくれる便利な投資法ですが、注意すべきポイントがあります。
以下のようなケースを考えてみましょう。
毎月、1万円分の株式を購入するとします(通常は100株が単元株となりますが、ここでは端株でも購入ができるとしましょう)。
また、株価推移は以下のようだとします。
1か月目:100円
2か月目:95円
3か月目:90円
4か月目:85円
5か月目:80円
このように投資家にとっては良い前提とは言えませんが、上記のように毎月5円ずつ下落していく株価だとしましょう。
では、これらの前提で毎月買える株数はどうなるでしょうか(小数点以下は四捨五入)。
1か月目:100株
2か月目:105株
3か月目:111株
4か月目:118株
5か月目:125株
ドルコスト平均法の本領発揮ともいえるべく、株価が下がることで購入できた株数が増えたことになります。
では、購入した株式のそれぞれのタイミングでの簿価はいくらとなるでしょう(小数点以下は四捨五入)。
1か月目:100円
2か月目:97円
3か月目:95円
4か月目:92円
5か月目:89円
簿価に関しても、安い値段でより多くの株数で買えますので、着実に低下しています。これもドルコスト平均法の特徴です。
では、投資した資産の評価はどうでしょうか。
ここまで5か月にわたって毎月1万円を投資してきましたので、投資金額の合計は5万円です。
一方、これまで買い付けた株数合計に、現在の株価である80円をかけるとどうなるでしょうか。
現在の資産評価額は、4万4721円となります(小数点以下は四捨五入)。
5万円と比べると約5000円の評価損が出ていることになります。
ドルコスト平均法でハッピーになれるのはどういう前提か
ここまで見てくればお分りのように、資産価格が下落する資産をドルコスト平均法で買い続けても評価損を抱えるばかりで、投資としてはうまくいきません。
運用の世界でも昔から「難平(なんぴん)はするな」という言葉も存在します。
これは自分の買値を下回ったからといって(あわてて)買いを進めるな、そのポジションを増やすなということを戒める意味です。
ドルコスト平均法でハッピーになれるのは、資産価格が短期には上下するものの、長期的には上昇しているという、「シクリカルグロース」というような場合です。
身近なインデックスファンドにも注意が必要
もっとも、典型的なシクリカル性のある資産でもある一定の局面だけをとればドルコスト平均法の特徴がうまく機能し、簿価価格が時価を下回ることもあります。
しかし、シクリカル性のある資産は安いところかい高いところで売るというトレーディングの戦略が一般的には機能します。
ドルコスト平均法が投資初心者向けで語られる以上、その投資は長期投資が前提であろうかと思います。
そうしたケースでは、短期では価格変動が大きくても、長期的に資産価格が上昇する資産を選ばないと運用では怪我をします。
日本株は身近なアセットクラスです。日本株の代表的な指数はTOPIXですが、その動きを長期で見ると典型的なシクリカル資産の値動きを示しています。
これは、米国を代表するS&P500などのシクリカルグロースのアセットとは異なる動きをしています。
2018年1月から始まったつみたてNISAでは選んだ投資対象によっては含み損を抱えている投資家もいるかもしれません。ドルコスト平均法にはこれまでみてきたような良さもありますが、今回指摘したような欠点もあります。今一度整理するのが良いかもしれません。
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