子猫のウェンズデーが保護施設からやってきた〜ニュージーランド流ペット入手法
LIMO / 2019年1月26日 10時0分
![子猫のウェンズデーが保護施設からやってきた〜ニュージーランド流ペット入手法](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_9339_0-small.jpg)
子猫のウェンズデーが保護施設からやってきた〜ニュージーランド流ペット入手法
ニュージーランドのペットショップを覗いてみると、ちょっと意外な光景に出くわします。フロアにはペット用品ばかりが並び、動物といえば金魚やモルモット、ウサギをほんの一角で扱う程度。犬や猫は見かけません。
それでも公園に行けば、飼い主と一緒に散歩する犬に会いますし、家々の窓辺に猫がのんびり昼寝しているのを目にします。いったい、こうした犬や猫はどこからやって来るのでしょうか。
人々の熱意で支えられる保護施設
筆者宅で飼う猫のウェンズデーは動物保護施設出身です。犬や猫を飼おうと思ったら、施設から譲り受けるのがニュージーランド流※。そんな施設の代表が、「ロイヤル・ニュージーランド・ソサエティー・フォー・ザ・プリベンション・オブ・クルーエルティ・トゥ・アニマルズ」。(※ブリーダーから入手するなどの方法もあります)
通称「SPCA」と呼ばれ、世界で最も長い歴史を誇る英国の同名団体の流れをくんでいます。国内拠点は38カ所。捨てられている動物を引き取り里親を探すだけでなく、法的権限を持っているので、動物を虐待する飼い主を訴えることもできる組織です。
運営にあたっての政府からの援助金はゼロ。寄付とボランティアだけで支えられています。筆者は毎年数回SPCAの街角募金に携わっていますが、人々が気前がいいのには驚かされます。小銭でもありがたいのに、20ドル(約1,500円)札を躊躇なく寄付する人もいるのです。ニュージーランド人の動物保護への熱心さを感じます。
雑種の猫でも、1つの大切な命
ペットの飼育状況について調査した「コンパニオン・アニマルズ・イン・ニュージーランド2016」によれば、ニュージーランドはペットを飼う世帯の割合が世界で2番目に多い国だそうです。1位は米国で65%。ニュージーランドは64%と僅差で1位に迫っています。
一番人気は猫。全世帯のうち44%が1匹以上の猫を飼っているそうです。向こう三軒両隣に猫が住んでいると言っても過言ではありません。
筆者宅にウェンズデーがやって来たのは3年ほど前のこと。保護施設に家族全員で「お見合い」に出かけました。施設内は飼い主候補でいっぱいでした。待ち受ける猫たちは雑種とはいえかわいく、猫好きとしては全部連れて帰りたい衝動にかられます。
娘が一目ぼれした、元気よく遊ぶ猫はすでに里親が決まっているとのこと。次に目に留まったのは、周囲が騒がしいのにマイペースで昼寝をしていた子猫。この小鳥のように高い声で鳴くスリムな黒猫が我が家の新しい家族になりました。
動物保護施設から我が家にやってきて1カ月たった頃のウェンズデー
![](https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/6/9/-/img_6945a4f1c6e84bb41acd1e0e99db73c8280161.jpg)
出会ったとき、ウェンズデーは生後9週目でした。生まれてから8週間はお母さん猫のもとで育つのが一番とされ、9週目以上の年齢の猫のみが里親探しの対象です。引き取る時、「養子縁組」の申請書を提出します。
申請書には名前や住所のほかに、飼い主にふさわしいかをSPCA側が判断するための質問の答えを記入します。現在のペットの有無、もし以前飼っていたのだったら動物の種類、その動物はどうしたか、飼い方に問題があるのではないかとSPCA職員が自宅を訪れたことがあるかなどの問いに、誠実に答えます。
書類には里親の条件も書かれています。食事・水・家を与え、病気の時は獣医に連れて行くなど、きちんと面倒を見ることが挙げられています。これらに同意できたらサイン。かわいい子猫がやって来るので有頂天になりがちですが、1つの命を託された責任を感じます。
飼い主の家に来るまでに、猫たちは健康診断や去勢・不妊手術、予防接種を受け、迷子になっても飼い主のもとに戻れるよう、マイクロチップの埋め込みも済ませます。いよいよお迎えに!という時に必須なのはケージです。きちんとしたケージなしでは連れて帰れません。もし持っていなければ、小動物移送用に特別に作られた段ボール製の箱を分けてもらいます。
引き取る当日には、寄生虫・ノミ予防の薬を与える次の予定日などが書かれた書類や、飼い方の冊子、予防接種の記録帳、マイクロチップ番号のカード、SPCAお勧めのエサのサンプルをもらいます。
このエサは栄養バランスがとれた値段が高いものですが、おかしなことに猫たちには不評だそうです。ウェンズデーも嫌いで、スーパーで売られているもっと安価なものがお気に入りです。
引き取るときにかかる実費は?
保護施設から引き取るからといって無料というわけではありません。獣医代などの実費を支払います。人気がある子猫は比較的高く、100~250NZドル(約7,300~1万8,000円)、成猫は80~120NZドル(約5,800~8,800円)といったところ。SPCAの支部によって料金に違いがあります。
筆者の場合は170NZドル(約1万2,000円)でした。「あとはかわいがって育てるだけ」で私たちのところにやって来るわけですから安いものではないでしょうか。
こうして筆者宅にやって来たウェンズデーは、外で捕ってきたネズミを「いつもありがとう」と持って帰ってきたり、ソファから落ちそうになりながら昼寝をしたりと、私たちを驚かせたり、笑わせたりしてくれます。SPCAでこの猫に出合わなかったら、筆者一家の生活はもっと退屈だったに違いありません。
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