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PTAのブラックさはなぜ変わらないのか~幼稚園PTA会長の過酷な日々

LIMO / 2019年2月10日 19時45分

PTAのブラックさはなぜ変わらないのか~幼稚園PTA会長の過酷な日々

PTAのブラックさはなぜ変わらないのか~幼稚園PTA会長の過酷な日々

幼稚園や子ども園には、小中学校のPTAのような組織を持つ園が多くあります。筆者が3年前に経験したのが、年間出動回数が70回に迫る「会長」というポジションでした。

前任者による過干渉、任期途中の妊娠発覚、役員制度の廃止など、様々なできごとを経て得られた「教訓」とは?

縁がないと思っていた「PTA会長」になってしまった…

幼稚園のPTAの特色は、園によって全く異なります。行事ごとに全ての保護者に係を振り分ける園があれば、1年間を通じて特定の役員が園の活動のサポートをするという場合もあります。

筆者が子どもを通わせていたのは、預かり保育が充実し、共働き家庭が多いアットホームな雰囲気の幼稚園。アジア系外国人の子どもも多く在園していました。

仕事をするために選択した幼稚園でしたが、PTA活動が盛んで「役員の重役につくと、負担が大きい」というのは、ちょっと気になるポイントでした。

1人目の子どものときには、「2人目の子が小さい」という理由で、負担の軽いベルマーク委員を担当。

しかし、2人目の子どもが年長になると、「赤ちゃんがおらず、妊娠もしていない」「日本人である」という理由で役員へのプレッシャーが急に高まったのを感じ、「役職のない役員なら」と、役員を引き受けることにしました。

「次期会長を決める」というのが、前年度役員の最後の仕事となりますが、役員の配役会議でターゲットとされたのが筆者でした。「仕事をしながらでも、自分のできる範囲でマイペースにできるから」と説得され、引き受けて挨拶をした瞬間、盛大な拍手があがり、「もう逃げられない」と胸が苦しくなりました。

後日、引き継ぎの際、書類でパンパンに膨れ上がった分厚いファイルを数冊渡され、「どれだけの仕事量があるのだろう」と途方に暮れました。園側には、「仕事もあるし、負担が大きすぎる。減らせる仕事は減らしていきたい」と伝え、了承を得ました。

PTAの仕事を減らすのに必要な「根回し」と「説得」

結論から言うと、きめ細やかな「根回し」なしに幼稚園のPTAの仕事を減らすことはとても難しいことでした。

役員の中には過去に役員を経験した保護者もいて、たとえば、それまで寄り合って手作りしていたものを既製品に変えるだけでも「子どもがかわいそう」「以前はこうだった」という反対意見が出ます。

先生方の多くが卒園写真の撮影で外に出ている間、子どもに紙芝居や絵本を読んであげるという仕事をしても、ベテランの先生からは「過去の役員は園児が喜ぶ小物をいろいろ用意してくれたのに」と言われます。

そのような調子で、もちつき大会の準備や運営、クリスマスプレゼントの選定・発注・梱包、卒園記念品の選定・発注・梱包、先生への寄せ書きアルバムの編集、謝恩会の運営……といった行事を、「役員の仕事から切り離す」「ラクにする」という道を探りながらこなしていきました。

過去のファイルを読みあさって役員活動の歩みを振り返ってみると、善意に善意が積み重なり、外からは見えなかった仕事が膨大な量になっていました。また、「変える」より「例年通り続ける」ほうがずっとエネルギーが節約できるという側面も見えてきました。

PTAの仕事を削減するには、根気よく園や役員に説明して働きかけ、時間をかけて根回しする必要があったのでしょうが、秋に3人目の妊娠がわかった筆者には、そのようなエネルギーは残されていませんでした。

みんなが嫌がっていたはずのPTAがなくなっても「文句」が出るわけは?

ふくらみ始めたお腹を抱えて、年度末の謝恩会の準備に追われていた2月、園側からある報告がありました。

それは、「少数の保護者に負担が集中する役員制度をいったん廃止して、来年度からは行事ごとに担当の保護者を募る“持ち回り制”にしようと思う」というものでした。

共働きの保護者が増えたことや、昔ながらのやり方が時代に合わなくなっていること、役員決めのときの重苦しい空気に教員から不満の声があがっていた……という理由でした。

その時、「これで、自分たちのような大変な思いをする人がいなくなる」と心底ほっとしたものです。

一緒に重役を務めていた役員や、仲の良いママ友たちは、労わりの言葉をかけてくれましたが、道やスーパーで偶然会った顔見知りの保護者からは、悪意はないものの、心ない言葉を投げかけられることもありました。

多かったのが、「(あなたが)役員制度をなくしたんだって?」という声。

他にも「役員がなくなって先生の雑用が増えて、保育の質が落ちないか心配」「役員会、なんだかんだで楽しかったのに、なくなって寂しい」「大変だったんだって? 詳しく聞かせてよ」と興味津々の目で聞かれることも。

中でも「昔の親は喜んで役員をやっていたのに、今の親は変わった」と言われたとき、笑って受け流した筆者の目は、おそらく全く笑っていなかったと思います。

誰かに変えて欲しい…それがたとえ「独裁者」でも

どんな組織においても、誰かが劇的な変化をもたらしてくれることを望みながら、いざその変化がやってくると、何かしらの文句が噴出します。

民間企業だけでなく、地域においても、「強いリーダー」のフォロワーになることを望んでいる人は多いように感じます。たびたび、PTAに生きがいを感じるほどのめりこんでしまう「独裁者」のような保護者が歓迎され、全く雑務が減らない……という悪循環も耳にはさみます。

さらに、「受け継がれた前例」をそのまま引き継ぐほうが必要なエネルギーは少なくて済みます。

こうして、PTAの合理化はその年の運任せで、よほど有能なリーダーが現れない限り、遅々として進みません。

後日談となりますが、2人の小学生と1人の乳児を育てる筆者は今年度、小学校のPTA役員決めにおいて、その学校では「1番ラク」と言われる月に1度の「校外補導」を選択。希望者が殺到したので、くじ引きで勝ち取りました。

「ラクにしましょう」という提案は一切せず、PTAの集まりではなるべく目立たないように黙っています。ママ友と集まれば、いかに自分の役割が面倒だったか、プレゼン合戦が繰り広げられるのにも関わらず、です。

誰かが声をあげないと変わらない。でも、できれば誰かにやってほしい。そんな他力本願な状態でいることに少なからず罪悪感を覚えながらも、子どもとの時間と、仕事を守るために声を上げられないでいます。

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