日本の給与は低空飛行。アジアに抜かれるサラリーマンの報酬水準
LIMO / 2019年2月9日 6時0分
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日本の給与は低空飛行。アジアに抜かれるサラリーマンの報酬水準
経済の高成長が続くアジアでは順調に給与が上がっています。これは一部の成功した起業家や富裕層の話ではなく、サラリーマンの話です。
アジアのマネジメント層や高度スキル人材の高い報酬
先般、ヘイズ社による、日本・中国・香港・シンガポール・マレーシアの企業3,000社(総従業員数600万人超、1,200種の職務)を対象とした2018年度給与水準調査(https://www.hays.co.jp/en/salary-guide/index.htm)が実施されました。
調査結果『2018年アジア給与ガイド』によれば、マネジメント層や高度スキル人材については、中国、香港、シンガポールの報酬水準が日本を上回っていました。ご興味がある方は、同ガイドの「主な職務の給与比較(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000090.000008738.html)」 をご覧ください。
最近、皆さんも薄々感じているとは思いますが、一部の高度人材(含む日本人)にとっては、下手に日本企業に就職すると給与水準が低いのでアジア企業に就職する方がマシだということがあります。たとえば、同調査によれば、製薬会社の営業部長、多国籍企業のCFO、ITプロジェクトマネージャーなら東京よりも香港やシンガポールのほうが高い給与水準を期待できるというのです。
同調査の対象ではありませんでしたが、ベトナムやインドネシアでも、やはりマネジメント層や高度スキル人材の報酬はうなぎ登りのようです。こうした国々では、後発国というイメージから「給与水準は安いはずだ」という思い込みが抜けにくいので、特に注意しなければなりません。一般的な日本企業の給与システムと違い、マネジメント層や高度スキル人材は特別なのです。
ちなみに、私が暮らすマレーシアは他国と比べ給与水準は低い結果となりましたが、家賃を中心に生活コストが格段に安いので、シンガポールなど海外へ羽ばたく一部の優秀な人材を除き、多くの若者はマレーシアで幸せに暮らしています。
日本企業の給与レベルは低空飛行
さて、あらためて日本の状況を考えてみましょう。日本には、地震などの天災リスク、英語が通じにくい、高額所得者には重い税負担、万一日本で死亡したら相続税等の追徴課税リスク等々があります。その上に給与水準が安いとなれば、日本の人気は急降下しても不思議ではありません。
デフレというのは恐ろしいもので、日本の実質賃金(名目賃金÷消費者物価指数)は、1997年を100とすると2016年は89.7と下降しています。
ちなみに、最近、統計の信頼性が揺るぎつつあるので、あくまで目安ですが、厚生労働省の『毎月勤労統計調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/30/3011r/3011r.html)』を見ると、「実質賃金指数」については、2015年を100として、2016年100.8、2017年100.6、さらに2018年は最新データが11月(確報)で、88.5となっています。
最近、楽天、ファーストリテイリング(ユニクロ)、メルカリ等の一部の日本企業では、グローバル採用ということで、日本人の代わりに多国籍な新卒採用をしています。
しかし、新卒の初任給比較では、アメリカのシリコンバレー周辺にある世界トップクラスのIT企業の初任給は年俸1000万円を超えるケースも珍しくありません。企業は優秀な技術人材を引き抜かれないように給与を上げています。それに比べれば低い水準ですが、一昨年、日本でもファーウェイ(中国)日本法人の「2017年新卒初任給40万円」の求人が話題になったので、覚えている方も多いでしょう。
一般の日本企業では、新卒初任給は20万円台が常識ですので、人材獲得競争では勝負になりません。新卒の場合、就職して経験を積みたいときには安い給与でも良いかもしれませんが、ある程度経験を積んでくれば思った以上に上がらない給与に満足できず、日本を去って非日系企業へ流れてしまうかもしれません。
多くの日本人は給与水準以外の諸条件、たとえば新たな挑戦ができる、誘われて意気に感じるなどの定性要因に大きな影響を受けるような気がしますが、マネジメント層や高度スキル人材を国内外から本格的に採用しようとする場合は、日本の人気凋落という深刻な現実を直視すべきでしょう。
政策レベルでは高度人材受け入れへ
政策レベルでは、昨年12月に出入国管理法改正案が可決され、この4月1日から施行されます。
今回の改正では、「特定技能1号」と「特定技能2号」の在留資格が創設されました。「1号」は日常会話程度の日本語能力や一定の能力・知識を条件に、最長5年の滞在を認めました。「2号」は熟練した技能を持っていることを条件として在留期限の更新と家族の帯同を認めています。
政府側からは初年度に最大4万7,550人、5年間で最大34万5,150人を受け入れるとの試算が示されています。
しかし、今後、日本が経験と技術を持った海外の高度人材を呼び込むには、さらなる対策が必要ではないかと推察しています。アジア人にとって日本は憧れの国といった古い感覚を引きずった日本人はまだ絶滅していないようです。停滞が続いた平成で時間が止まっているのかもしれませんが、そろそろ目を覚ました方が良いでしょう。
また、多くの日本企業の採用・人事においては、日本を取り巻く不利な諸条件をカバーするような高い給与水準・高待遇を用意しなければ、高度人材の採用や保持はままならないでしょう。
今後、日本の政府・企業は井の中の蛙にならず、日本がどう評価されているか現実を正確に理解した上で適切な対応が必要でしょう。さもなくば、中長期的には日本人を含む優秀な高度人材が日本にあまり残っていないという悲惨な状況になってしまうかもしれません。
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