虐待死の心愛ちゃん母逮捕に見る、SOSが出せない母親の呪縛
LIMO / 2019年2月10日 10時45分
虐待死の心愛ちゃん母逮捕に見る、SOSが出せない母親の呪縛
「母親ならば」「母親なのに」という重圧
千葉県野田市のマンションで、小学校4年生の栗原心愛(みあ)ちゃんが父親の勇一郎容疑者の虐待により、死亡してしまったとても痛ましい事件。
心愛ちゃんが助けを求めたアンケートのコピーを、学校側が勇一郎容疑者に渡してしまったことや、児童相談所が心愛ちゃんの「お父さんに叩かれたのはウソ」という手紙を勇一郎容疑者に書かされたと認識していたのに見過ごしたことなど、新しい事実も浮かび上がってきています。
そして2月4日には、母親のなぎさ容疑者も虐待に加担していたとして勇一郎容疑者と同じ傷害容疑で逮捕されました。心愛ちゃんが勇一郎容疑者に虐待されていることを認識していたにも関わらず、その虐待を止めなかったことが「虐待していたことと同じ」と見なされたのです。この、なぎさ容疑者については非難もあると同時に、その逮捕には疑問の声もあるようです。
勇一郎容疑者からDVを受けていたなぎさ容疑者
なぎさ容疑者は、勇一郎容疑者から日常的にDV(ドメスティック・バイオレンス)を受けていたことがわかっています。なぎさ容疑者は警察に、「娘が暴力を振るわれていれば、自分が被害に遭うことはないと思った」と供述しているといいます。
この供述に対しては、「心愛ちゃんを見殺しにした」「父親に暴力を受け、学校にも見放され、心愛ちゃんが頼ることができたのは母親だけだったのに」という非難の声もあります。確かに、なぎさ容疑者が心愛ちゃんを助けることができなかったことは事実です。
しかし、DVという精神的、肉体的な暴力と支配を受けていたことで、正しい判断と行動ができなかったということもあるのではないでしょうか。最悪の事態にならないよう、なぎさ容疑者が心愛ちゃんと1歳の次女、そして自分自身を守るためにできたことは、勇一郎容疑者から逃げ出すという選択肢しかなかったでしょう。
しかし、なぎさ容疑者の外出や携帯電話を逐一チェックして支配していたという勇一郎容疑者に気付かれないように、2人の子どもを連れて逃げだすというのは至難の技でしょう。それができなかったために逮捕に至ってしまったというのは酷な話であるようにも思えます。
自分自身も同じように暴力を受けていたなぎさ容疑者が、勇一郎容疑者の心愛ちゃんへの虐待を止めることができなかったことが罪になり、勇一郎容疑者への恐怖からアンケートのコピーを渡した学校側や虐待を見過ごした児童相談所が罪にならないことは、SNS上などでも波紋を呼んでいるようです。
ミルクを買えなかった母親だけが逮捕された、仙台の事件
親が子どもを死亡させた事件として記憶に新しいのが、1月18日に同居する生後1カ月の次男を栄養失調などで死亡させたとして、仙台市に住む28歳の母親が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された事件。母親は、「ミルクを買うお金がなく、10日前からお湯を飲ませていた」と供述していました。生活保護などは受けていなかったと見られています。
この事件では、同居していた母親の父親(次男の祖父)は逮捕されていません。母親の父親は「子どもの異常には気が付かなかった」と供述しているということです。
この事件で罪にとがめられたのが母親だけであったことにも疑問の声があがっています。ミルクを与えられない中で、必死にお湯を飲ませていた母親は有罪で、同居をして子どもの様子を見ていたはずの母親の父親は無罪。そもそも子どもの父親である母親の夫の存在や、行政による支援の届かなさなど、母親以外の問題にも目を向けるべき事件です。
母親に重くのしかかる養育の責任
この2つの事件からは、子どもの養育に関するすべての責任が、母親にだけ重くのしかかっている現状があるように思えてしまいます。「自分がいくらDVされていようと、母親ならば虐待を止めて当然」「母親なのに子どもにミルクを与えず見殺しにした」。
母親の責任は、父親、学校、行政とは比べ物にもならないほど重く、その責任を全うできなければ、どんな事情であれ罪に問われるべきなのでしょうか。虐待死や貧困からくる栄養失調による死を防ぐには、母親だけが咎められる風潮をなくしていくことも大事なことのように思えます。
「母親なのだから」「母親なのに」という世間の目によって、母親が外にSOSを発信しにくくなっている現状もあるでしょう。こうした状況が改善され、心愛ちゃん、そして生後1カ月の赤ちゃんのような事件が繰り返されないことを心から望みます。
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