子どもを叩いてもいいなんて…夫や祖父母との対立、どうする?
LIMO / 2019年2月26日 10時45分
![子どもを叩いてもいいなんて…夫や祖父母との対立、どうする?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_9782_0-small.jpg)
子どもを叩いてもいいなんて…夫や祖父母との対立、どうする?
今子育てをする30~40代の方が子どもの頃は、大人が子どもに手を出すことへの抵抗感が薄い時代でした。学校で先生が生徒に手を出すようなことは一般的ではありませんでしたが、「親から叩かれた」「野球や剣道などの部活で手出しがあった」という声があったのも事実です。
その経験からか、今の親世代が「自分も手を出されたから少しくらい子どもを叩いても大丈夫」と思ったり、祖父母世代が「男の子には怒るときに手が出るのも普通」と主張することも。
そう主張するパートナーや祖父母に対して、どう向き合うべきでしょうか。Kさんの奮闘エピソードをご紹介します。
叩かなければ、分からない?
現在3人の子を子育て中のKさんは、夫と育児方針が食い違い悩んでいます。それは「子どもに手を出すか、出さないか」について。
Kさんの夫は、小さな頃母親に叩かれていたそう。小学校から野球チームに入り、そこでも手を出されることは普通にあったとのこと。その経験から、思いきり叩くようなことはありませんが、子どもをつねったり、軽くこづく程度のことがあると言います。
Kさんがそれを止めると、「俺は小さな頃叩かれたけれど、だからといって俺の人生は何も変わらなかった。子どもは叩かなければ分からない」と主張するそう。それを聞きながらKさんは、「『子どもに手を出すことが問題』という認識が欠落している」と感じたそうです。
「本当の理解」までには時間がかかる子ども
一方のKさん自身は、親から手を出された経験なく育ちました。現在は3人のワンオペ育児中であり、そのうち2人が男の子。今まで何百回説明しても分からない乳幼児期や、激しいイヤイヤ期も乗り越えてきています。
子育てをする中で、「たしかに子どもはあるときがくるまで、言っても分からないもの。だからといって手を出しても、ただ恐怖感を与えるだけです。『何が悪いか』という根本的な理由は理解はできないので、また同じことの繰り返し。叩くことに意味があるようには思えません」とKさん。
まだ小さな子もいて言っても聞かないことが多いようですが、「子どもが『本当の意味での理解』をするには、ある程度脳・身体・心が発達し、それなりの経験を重ねることが必要です。それまで親はケガをしたり、人に迷惑をかけないようにサポートしながら、時に見守り、時に何十回、何百回と教えていくしかないと思っています」と言います。
分からなくはないけど、やらない
ただ、「特に1人目育児は『子どもというもの』が分からず大変でした。今はお茶や味噌汁もこぼされ慣れていますし、『1歳児に石を投げちゃいけないと教えても理解できない』と知っているし、イヤイヤ期への対応にも慣れてます。でも1人目のときは、常に『何でそうなるの?』『何で分からないの?』と疑問ばかり。
ママ友や旧友たちと『実際に手を出しはしないけど、虐待する親の気持ちが全く分からないわけでもないよね』という話をしたこともあります。以前子育て支援をしていましたが、そう感じるママは多いようですよ」と言います。
とはいえ、実際は手を出す気にはならないというKさん。Kさん夫婦の場合、育児に関わる比率は妻9 対 夫1ですが、普段Kさんが子どもと接していて「子どもに手を出す必要がある」と感じることはないと言います。
祖父母に相談したり、児童精神科医の話をするも…
さて、Kさんの夫が子どもに手を出す様子は、義両親も見ていました。義両親が夫に「子どもに手を出すなんて、そんな風に育てた覚えはない!」と怒った様子を見て、Kさんは止めるように夫を説得してほしいと義両親に頼んでみました。
ところが最初は「手出しをしたことはない」と主張していた義両親ですが、途中から「男の子には怒るときに手が出るのだって普通」と話が変わってしまいました。
そこでKさんは、児童精神科医である佐々木正美先生の著書(『子どもへのまなざし』福音館書店)から、しつけをするときにいちばん気を付ける点は「子どもの自尊心を傷つけるようなやり方でしようとしては、ぜったいにいけないのです」という話を伝えました。しかし夫は「育児を本に頼るなんて」と笑って返して終わりでした。
スクールカウンセラーと科学的データを使用
子どもも嫌がっているので、悩んだKさんはスクールカウンセラーに相談。そこでは「昔はそういった人はいましたが、今は手を出すのは犯罪です。夫婦だと、なかなか話を聞いてはもらえないですよね。第三者が説明した方が良いと思うので、ご夫婦で一緒に相談に来てください」といわれ、少し安心したと言います。
また、同時に3歳児検診でもらった厚生労働省の「子どもを健やかに育むために ~愛の鞭ゼロ作戦~(http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/05/ainomuchizero.pdf)」というパンフレットを夫に見せました。
そこには「厳しい体罰により、前頭前野の容積が19.1%減少」「言葉の暴力により、聴覚野が変形」といったデータが記載されていました。厳しい体罰ほどではなくても、親から叩かれていれば、脳に影響を及ぼすことでしょう。科学的データを見ることで、夫の意識も少しですが変わったそうです。
育児に、もっと科学を。
日本は「虐待後進国」と言われています。虐待ほどではなくても、「ちょっとした手出しなら仕方ない」「男の子には手が出るもんだ」という風潮は、根強く残っているでしょう。また、「育児で本を読むなんて」という風潮も残ります。
一方で、科学は進化しています。科学的なデータで分かることも増えてきていますし、児童精神科医、臨床発達心理士、保育士、教育者などは子どもを育てる上での勉強や研究を重ねています。
子どもの育て方は各家庭によって違うものですが、「厳しい体罰により、前頭前野の容積が19.1%減少」といったデータや、子どもの発達に関わる知識は、実際に育児に関わる我々も知っておいた方が良いでしょう。育児に、もっと科学が活用されることを願います。
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