コンビニと成人向け雑誌の関係〜販売中止急加速の裏側
LIMO / 2019年2月22日 20時20分
![コンビニと成人向け雑誌の関係〜販売中止急加速の裏側](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_9791_0-small.jpg)
コンビニと成人向け雑誌の関係〜販売中止急加速の裏側
コンビニエンスストアにおける成人向け雑誌販売中止の動きが加速しています。
きっかけは、一昨年(2017年)の秋に業界第4位のミニストップが販売中止を表明したことです。その後、2018年1月から全国のミニストップ店舗で成人向け雑誌の販売が取りやめとなりました。
さらに、今年(2019年)に入ってから最大手のセブン・イレブンと業界第3位のローソンが販売中止(8月末を予定)を決定します。そして、成人向け雑誌販売中止に慎重なスタンスを取っていた業界第2位のファミリーマートも、同じ8月末からの販売中止を決定しました。
こうした成人向け雑誌販売中止に踏み切る背景として、訪日外国人旅行客からの批判、青少年への悪影響排除、女性客・女性店員への配慮などが挙げられています。
なぜ、今になってここまで進むのか?
しかし、ちょっと待って下さい。これらの理由だけで成人向け雑誌販売中止がこんなに急速に進むものなのでしょうか?
実際には、成人向け雑誌を子供でも手に取って見られる状況で販売していることに対する批判は従前からありました。しかし、そうしたクレームにもかかわらず、長年にわたって販売していたのは、相応の需要や必要性があったからと考えるのが普通です。
突然、モラルを前面に打ち出すのに違和感がある人も少なくないのではないでしょうか。
コンビニ雑誌販売の当初の目的は?
その要因の1つとして、コンビニで雑誌を取り扱う意義が大きく変化したことが挙げられます。
ご存じの方も多いとは思いますが、地下店舗や駅中店舗など一部を除くと、コンビニにおける雑誌販売の場所は、入り口付近の外から見える場所でした。今もほとんどがそうなっているはずです。しかも、今から15~6年くらい前までは立ち読みが黙認されていました。コンビニで漫画雑誌等を立ち読みした経験がある人も多いはずです。
実は、立ち読みを黙認していたことで、大きな防犯効果を持っていたのです。外から見える場所に常に多くの人(=雑誌の立ち読み)がいることで、少なからずコンビニ強盗の抑止力になっていたことは確かでしょう。また、その防犯効果とは別に、雑誌販売も伸びていました。
雑誌は委託販売という形になるので、正直なところ、利幅は薄いというか、ほとんどありません。ただ、雑誌を購入するお客さんの“ついで買い”が見込めることで、コンビニにとって雑誌の取扱いは相応の必要性があったと考えられます。
激減するコンビニでの雑誌販売
しかし、近年になると、雑誌販売の環境が一転します。まず、雑誌立ち読み客のマナー悪化(書き込み、汚す、景品ポスターや応募はがきを持ち去る、長時間の滞在など)が問題となりました。その結果、現在ではほぼ全ての雑誌がヒモで縛られて開けない(=立ち読みできない)状態にあります。
そこにネット販売の急速な普及が追い打ちとなり、2017年度のコンビニにおける雑誌販売は、15年前の2002年度に比べて約30%水準(約▲70%減)に落ち込んだというデータもあります。当然、雑誌を買い求めに来るお客さんの“ついで買い”も期待できません。
雑誌販売スペースに取って代わったのは?
それでは、当初の目的だった防犯効果はどうでしょうか。近年は、防犯カメラや警備会社による遠隔監視など、セキュリティシステムの飛躍的な向上により、この防犯効果の意義も薄くなりました。さらに、イートインのニーズが高まった結果、コンビニ店舗ではイートインスペースを外から見える場所に設置するようになっています。
従前は防犯効果を目的とした雑誌販売の場所が次々に狭められ、イートインスペースになっていると考えられます。イートインスペースが外から見えれば、十分な防犯効果にもなります。むしろ、限られた店舗空間でイートインスペースを拡大する中、雑誌販売の場所は既に不要となっているのかもしれません。
雑誌取り扱いはコンビニ経営の大きな重荷に
こうした状況を勘案すると、最早コンビニにとって、雑誌の取扱いは必要不可欠でも何でもなく、逆に、店舗運営の重荷になっていると言えるでしょう。
その中において、成人向け雑誌の販売に関しては、現在のヒモ縛りだけでなく、反射シールを貼ること等で表紙すら全く見られなくする等、今後新たな規制が課せられる可能性があります。確かに、一定の需要が見込める成人向け雑誌とはいえ、そこまでして取り扱う必要があるのか?という疑問が出るのは当然なのかもしれません。
真っ先に取りやめたミニストップの事情
また、今回の一連の成人向け雑誌販売中止を最初に掲げたのが、ミニストップという点にも注目です。
コンビニ業界の過当競争が深刻化する中、ミニストップは2018年2月期に1994年の上場以来初の最終赤字に転落しました。さらに、2019年2月期も2期連続の最終赤字、しかも、赤字額が大幅拡大となる厳しい業績不振に陥っています。
そのようなミニストップが、他社に先駆けて成人向け雑誌販売から手を引くのは、それだけコスト削減を伴った収益改善に繋がると考えるべきです。これを「美談」とか「モラルの鑑」と片付けていいのでしょうか。
数年後はコンビニから雑誌が消える?
こうして考えると、他のコンビニも追随することになった成人向け雑誌販売の中止は、全ての雑誌販売中止を視野に入れた第一歩と見ることもできます。“まさか?”と思うかもしれませんが、売れない雑誌をわざわざ置いておくほど、今のコンビニ各店舗には、物理的(スペースの問題)にも、収益的にも余裕がないはずです。
さて、数年後のコンビニに雑誌は置いてあるでしょうか?
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