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消費者には関係ない? ブランド米の乱立と食味ランキング

LIMO / 2019年3月1日 20時25分

消費者には関係ない? ブランド米の乱立と食味ランキング

消費者には関係ない? ブランド米の乱立と食味ランキング

魚沼コシヒカリは2年ぶりに「特A」へ返り咲き

2018年産米の食味ランキングが発表!

日本穀物検定協会は毎年(時期は概ね2月末~3月初)、その前年に獲れた国産米について食味ランキングを公表しています。今年2月27日に公表された「2018年産米の食味ランキング」では、大きな注目点がありました。それは、日本を代表する最高級米の1つとして知られている新潟県の「魚沼コシヒカリ」(注)が最高級の「特A」に復帰できるか否かだったのです。

魚沼コシヒカリは、当該ランキングが現行制度になった1989年以降、28年連続で「特A」の評価を得た唯一のコメでしたが、昨年(2017年産)は初めて「A」にランクダウンとなりました。このランクダウン(格下げ)が新潟県のコメ農家に与えた衝撃は極めて大きかった模様です。

(注)一般的に「魚沼産コシヒカリ」という呼称が浸透していますが、日本穀物検定協会の公表に合わせて「魚沼コシヒカリ」とします。

国産米食味ランキングの審査方法とは?

ここで国産米の食味ランキングについて簡単に説明すると、代表的なブランド米を特A、A、A´、B、B´の5段階に評価します。しかし、実際にはBやB´と評価されることは稀です。さらに、特AとAが占める割合が常に高く、今回発表されたランキングもこの2つで全体の約8割を占めています。実質的には「特A」の評価を競うランキングと言えましょう。

また、その審査に当たっては、当該協会において選抜訓練した専門の評価員である20人の食味評価エキスパートパネルにより、白飯の「外観・香り・味・粘り・硬さ・総合評価」の6項目について評価されると公表されています。その審査手順を見ると、使用する炊飯器(全て同じ炊飯器を使用)まで開示されるなど、公正性や透明性をアピールしているのが感じられます。

ただ、審査結果については結果のみが公表され、その詳細(各項目についての評価、順位など)は“ブラックボックス”になっているのも特徴です。

多くの消費者には無関係だが…

さて、そんな感じで公表される国産米の食味ランキングですが、多くの一般消費者にとってはほとんど関係ないのではないでしょうか。「特A」の評価を受けたブランド米しか食さないというこだわりのある人もいるかとは思いますが、おそらく、圧倒的少数と思われます。特に、外食や中食(コンビニ弁当など)が中心の人にとっては、“特AだかAだか知ったことではない”というのが実情と思われます。

しかしながら、「魚沼コシヒカリ」というブランド力は、ある種別格のものがあります。コンビニなどでは魚沼コシヒカリを前面に出した商品も数多くあります。また、筆者が新潟で食した魚沼コシヒカリは本当に美味しいと感激したのですが、“魚沼コシヒカリだから美味しく感じてしまった”という先入観があったことは否めません。もし、最初から魚沼コシヒカリという名前を聞いていなかったら、同じような感動を覚えたかどうか自信がないのは事実です。

昨年の「特A」陥落は青天の霹靂

一方、生産者にとっては極めて重要な問題です。それは、この食味ランキングはブランドイメージに直結すると考えられるからです。

実際、昨年は初のランクダウンを受け、魚沼コシヒカリの中心産地である南魚沼市(新潟県)では、県や魚沼地域の市町、農協職員、生産者らが集まって「魚沼米食味対策検討会議」を発足させています。早い話、“食味ランキング対策会議”ということですね。

また、当時の新潟県知事も「理由が不透明。明かせるところは明かせるように要請したい」と苛立ちを隠せなかったと報じられました。ランクダウンが青天の霹靂だったことを物語っています。

魚沼コシヒカリは2年ぶりに「特A」へ返り咲き!

さて、前置きが長くなりましたが、今回、魚沼コシヒカリは2年ぶりに「特A」に返り咲きました。テレビのニュースでも、「特A」への返り咲きが決まり感涙にむせぶ農協関係者のインタビューが放映されていました。初のランクダウンという“屈辱”を耐え忍び、復活を遂げたことの重大性を感じるに十分な場面でした。

「特A」復帰の要因は、その美味しさもありますが、それ以上に昨年の陥落で危機感を強めた農協関係者の“努力”によるものが大きいのではないでしょうか。28年連続で「特A」を獲得してきたことで知らず知らず努力を怠ってきたのかもしれません。

近年、各ブランド米が「特A」獲得を目指す背景は?

今回の審査結果では、「特A」を獲得した地方ブランド米の数は、過去最高の55(昨年比+12増)となりました。実は現在、国内ではブランド米競争が熾烈を極めています。

この背景には、政府が長年にわたり続けてきた減反政策(農家に補助金を出してコメの作付けを制限する)の廃止があります。これにより、各農家は所得を引き上げるための自助努力を促され、ブランド米が“乱立”するようになりました。現在では750以上のブランド米があると見られます。そして、その乱立が現在の「特A」獲得をめぐる競争激化になっています。

確かに「特A」獲得は、少なからず宣伝効果になるでしょう。逆に言うと、昨年の魚沼コシヒカリのように、「特A」から陥落するダメージも大きいと考えられます。

昨年脚光を浴びたブランド米は?

実際、一度「特A」を取得しても決して安泰とは言えません。たとえば、昨年に「A´」から2段階アップして「特A」を獲得して話題となった「森のくまさん」(熊本県)や、初登場でいきなり「特A」となった「彩のきずな」(埼玉県)はいずれも「A」にランクダウンとなりました。その他にも、「飛騨コシヒカリ」(岐阜県)や「みずかがみ」(滋賀県)など、近年躍進が目立ったブランド米も「特A」から陥落しています。

これらのブランド米を含め、来年も「特A」獲得を目指す競争がいっそう激化していくでしょう。しかし、一番重要なのは、消費者がその美味しさに満足することです。生産者側の単なる賞レースに終わらせないよう、私たち消費者も厳しい評価を下すことが重要でしょう。

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