虐待する親の気持ちがわかる!? 孤独なママが抱える危険
LIMO / 2019年3月5日 10時45分
虐待する親の気持ちがわかる!? 孤独なママが抱える危険
目にするたびに辛くなる、子どもの虐待ニュース。「そんなことをするくらいだったら、子どもを施設に預ければいいのに」と思う人もいるでしょう。しかし虐待する親は、子どもを離さないといいます。子どもへの虐待を減らすためにも、虐待する親の心理と環境について知っておきましょう。
孤独ゆえ、子どもに依存するしかない親
児童精神科医である佐々木正美氏の著書『子どもへのまなざし』(福音館書店)では、自身の経験から虐待する親について「もう例外なくお母さんが孤独です」といいます(ここで「お母さん」と表現するのは、虐待する親は子どもに関わる時間の多い母親の方が多いためです)。
孤独だから虐待するというのは、矛盾するようにも思えるでしょう。「人間は本来、相互依存の傾向がある」(同著)と佐々木氏が指摘するように、そもそも人間は1人で生きられるものではなく、他のものに依存する傾向があるようです。
夫婦の場合、夫婦で依存し合えれば良いのですが、依存できなければ仕事、買い物、お酒、不倫といった他のものに依存するようになります。他の何にも依存できず、実家やママ友にも相談できない、近所付き合いもないという孤独な状態になると、人間は不安が大きくなります。
不安が大きくなると、「なにかにしがみつこうとするわけです、とうぜんですね。すがるものが、自分の幼い子どもしかないときには、子どもは非常に不幸なことになります(中略…)どういうことかというと、自分の思い通りの子どもにして、なぐさめられようとするのです。不安が大きい人ほど、子どもを操作しすぎると思います」(同著)。
子どもは決して思い通りにならない
子どもに依存し、子どもを思い通りにすることで自分の不安な心を満たそうとする親。しかし子どもは、決して親の言いなりにはなりません。赤ちゃんはよく泣きますし、幼児にはイヤイヤ期があり、しつけにはとても時間がかかり、何百回と言っても分からず、自我があるのが自然な子どもの姿なのです。
そういった自然な子どもの姿を見て、思い通りにできない親は腹が立ち、強い指示を与え、次第に強く叱ったり体罰を加えるようになります。
虐待する親について、「計画的に子供をいじめるようなことはあまりなくて、たいていは衝動的です(中略…)そのちょうど裏返しのように、子どもが自分の思い通りになったときには、大喜びをして、非常に子どもが好きになるのです。ですから、コインロッカーに赤ちゃんを捨てるとか、どこかに子どもを捨てる親と、子どもを虐待する親とは基本的に違うのです。めったに捨てたりはしないわけです」(同著)と佐々木氏は指摘します。
虐待について考えるとき、私たちはこういった親の心理と環境を考えるべき必要があるでしょう。
ワンオペ育児、産後クライシス…孤独な現代の育児環境
佐々木氏の指摘の一方で、現代の親の多くは孤独です。昔のような親戚付き合いや近所付き合いがあるわけでもありませんし、核家族、ワンオペ育児という人が大半でしょう。
「産後クライシス」というように、産後2~3年は夫への愛情が激減するという現象もあります。昔は産後クライシスがあっても、周囲には愚痴や相談を聞いてくれたり、手助けをしてくれる人がいました。
現代では多くのママが孤独であり、帰宅時間が遅い男性も多く、また経験のない男性は家事や育児への理解があるわけではなく「全て女性がやって当たり前」という風潮は根強いものです。
孤独から抜け出すために、子育て支援センターや児童館でママ友を作る人もいます。遠く離れた旧友や自分のきょうだい、両親でも、SNSを使えば育児相談をしたり、愚痴を言うことができます。会ったことがない人でもSNS経由で育児話で盛り上がってつながる、という人もいます。
一方で、「子育て支援センターで時々会うくらいのママとは友達になれない」という人見知りなママや、「実家を頼れない」というママ、「人に弱みを見せられない」ママもいます。特に考えるべきなのは、こういったSOSを出せない層でしょう。
孤独にならない育児環境作りを早急に
以前筆者は子育て支援をしていましたが、「ここ1週間、夫以外に会話した大人は宅急便の人とスーパーの店員さんだけなんてことはザラ。夫ともろくに話をしない」「生後半年までは眠れないし、慣れない育児にいっぱいいっぱい。誰にも会えず密室に赤ちゃんと2人きりは辛かった」「実際にはしないけれど、虐待する親の気持ちが全く分からないわけじゃない」と口にするママは少なくありませんでした。
虐待のニュースを受け、様々な対応がされていますが、その一方で「親を孤独にしない育児環境作り」自体も急ぐべきでしょう。
核家族が当たり前となった今は、地域での関係作りが重要になります。地域にいる子育てママがつながれる機会を、自治体が用意することもできるでしょう。1歳半や3歳児健診だけでなく、もう少し頻繁に子育て中の親が集まれる機会があってよいのではないでしょうか。
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