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株式会社の歴史と仕組み(前編)

トウシル / 2008年11月17日 0時0分

株式会社の歴史と仕組み(前編)

株式会社の歴史と仕組み(前編)

 さて、今回は株式のお話です。“株”と言うと、“ギャンブル”“ハイリスク”というイメージがありますが、それを払拭していきたいと思います。何事も存在しているのはそこに価値や起源があるわけで、ではどうして株式会社・株式というものができたかを見ていきたいと思います。

 まず質問です。世界で最初の株式会社は?歴史の授業で習いましたね。オランダ東インド株式会社です。1602年、徳川幕府が発足する1年前に世界初の株式会社が設立されています。ではなぜこの時期(17世紀)にヨーロッパで株式会社が設立されたのかを知るにはその時代背景を簡単に見ていくと分かりやすいです。

 この時代のヨーロッパは大航海時代と呼ばれ、15世紀にバスコ・ダ・ガマが喜望峰ルートを開拓し、インド、アジアへの航路が開かれ、コロンブスは西を目指しアメリカ大陸を発見しました。そして探検家たちはこぞって航海にくり出し、主に胡椒、香辛料をヨーロッパに持ち帰り巨利を得ました。当時は胡椒の数をピンセットで一個一個数えたと言われるほど貴重なものでした。

 その航海というのは誰でも成功する訳ではなく、難破や海賊、敵からの襲撃、疫病への感染などとてもリスクの高いものでした。その当時、航海の成功率は20%以下というとても危険な冒険でした。しかし下層民や貧者でも勇気と幸運に恵まれれば、航海を成功させることによって有り余る名声とお金が転がり込んできました。

 ではなぜ貧しいが勇気だけはある探検家が航海に出ることができたのでしょうか。それはパトロンと呼ばれる探検家を応援するお金持ちがいたからこそ航海に出ることができたのです。応援するといっても、航海が成功した暁にはきちんと利益配分を受け取ります。
最初の頃は出資者(お金持ち)が一人でお金を出し、リスクを取っているのでリターンも探検家への報酬、経費を除いてすべて独り占めです。しかしいくら資本家のお金持ちでも出せるお金に限度がありますし、成功率が20%以下のハイリスク投資です。そこで探検家は次に複数の小金持ちにお金を出してもらおうと考えました。小金持ちにとって高いリターンは魅力的ですがリスクも高いので大金をつぎ込むのはためらいます。ただ少額なら出してもいいと思う人はいます。

 例えば今までは大金持ちに1億円出してもらっていたのを、20人の小金持ちに500万円ずつ出してもらうという形です。1億円をポンと出す人は少ないですが、500万円を出す人なら大勢います。そして500万円を出しましたという証拠に株式という証書を発行したのです。この株式を買った人が株主になります。そして探検家はこのお金を使って船を買い、船員を雇って航海に出るのです。

 ここで3人の人物が登場します。探検家、出資者、船員です。まずここでポイントです。当たり前ですが出資者が船に乗って航海に出る訳ではありません。航海に出るのは探検家です。この出資者と探検家が一緒ではないということを覚えておいてください。今で言うと株主と経営者は違うということです。株主というのはお金の出し手であり、会社は株主のモノであって経営者のモノではありません。よって航海から得た利益は基本的には必要経費(船員たちへの給料、探検家への報酬など)を除いて全てが出資者のモノになります。

 ここまでの話をもう一度まとめますと、株式会社の仕組みとは、リスクを取って事業を起こしたいという起業家が複数の人からお金を集めるのに株式会社を作り、“お金をだしてもらいましたよ”という証拠に株式を発行し、その株式(証書)を持っている人のことを株主と呼びます。そして起業家はその株主からのお金を使って設備を買い、社員を雇い、事業を始めます。うまくその事業が軌道に乗れば、起業家は利益の中から役員報酬をもらい、社員は給料とボーナスを受け取ります。そして株主はというと、その出資比率(いくらお金をだしたか)に応じて配当を受け取ったり、その株価の値上がり益を得たりすることができます。ではどうして会社の業績がいいと、株価は値上がりするかを次回(後編)でみていきたいと思います。

(中桐 啓貴)

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