カンタン資産配分の決め方
トウシル / 2008年12月29日 0時0分
カンタン資産配分の決め方
前回のコラムでは、ご自身のリスク許容度に応じて資産配分を変えましょうというお話をしました。今回は具体的にどのように資産配分をすればいいのかを考えたいと思います。繰り返し申し上げますが、投資を始めるときにまずするべきことは資産配分、つまり株式と債券の比率を決めることです。私のところに相談に来られる方に「あなたの持っている資産の株式と債券の比率は何対何ですか?」という質問をして、きちっと答えられる人はほとんどいません。多くの方が「○○ファンドと××ファンドを持っています」となります。
では具体的にどのように決めればいいのかというと、私がお薦めする方法は年齢を使った決め方です。こちらにその簡単な式をご紹介します。
(100-年齢)を株式、残りを債券。とてもシンプルですね。
30歳の方なら(100-30)=70%を株式、30%を債券となります。
どうして若い人ほど株式の比率が高くていいのかというと、それは時間という味方を持っているからです。株式というのは、長期的に見れば実質7%前後の利回りを出していますが、それは長期でみた場合であり、より長く株式を保有すればするほど、この7%に近づいていきます。これには野球の試合をイメージしていただくといいかもしれません。仮に株式市場をベアチーム(弱気派)とブルチーム(強気派)との試合に例えると、長期で試合をするほど、ブルチームが勝つ可能性が高くなります。ただ、試合をしている時間が短いと弱気相場が勝っているときしか、試合をできない可能性があります。例えば25歳の方なら退職まで40年間、試合を続けられる訳でその分勝つ可能性が高くなります。一方退職間近の60歳の方なら、10年ぐらいしか試合をできないかもしれません。このスコアボードにもありますように12回まで試合を続ければブルチームの勝ちですが、4回までしか試合ができないとなるとベアチームの勝ちになります。よって、試合時間が短い場合は、債券の比率を高めて弱気相場でも資産が減らないようにしておきましょうということになります。
次にその資産配分と利回りの関係ですが、これはもう単純にハイリスクハイリターン、ローリスクローリターンとなります。では株式と債券の資産配分によってどれくらいのリターンとリスクがあるかというと、これも簡便的な式をご用意しました。ズバリ株式の比率÷10が期待リターンということになります。例えば株式の比率が50%の場合は50%/10=5%となります。そして次にリスクですがこれはどれくらい損失が出る可能性があるかということでお話しすると、通常の場合で“期待リターン×3”、今回のような世界的な不況の場合は最悪、“期待リターン×5”と考えてください。先ほどの例を使って、株式50%の比率の場合は期待リターンである5%×3=15%、最悪5%×5=25%までの損失は覚悟してくださいということになります。
ここまでで株式と債券の比率の決め方は分かったと思います。では次に具体的のどの国にどれくらいの配分をすればいいのかを考えてみます。ここでは2つの考え方があります。
1つは世界丸ごとに投資をするという考え方で、それぞれの国の時価総額に自分の資産も比例させるやり方、そしてもう1つはこれから成長しそうだと思う国に厚めに投資をする方法です。世界丸ごとに投資をするというやり方には、MSCIワールドインデックスや世界株指数に連動する投資信託やETFに投資をすれば完成です。そしてもう1つのこれから成長しそうだと思う国に厚めに投資をするやり方は、例えば中国とインドなどの新興国に実際の比率より多めに投資をします。個人的にはこれから20年、30年単位で投資を考えている方は、中国やインドなど、これから確実に日本を追い越して成長する国に資産を配分していた方がいいと思います。ただあまり新興国ばかりに偏ると危険なので、新興国の割合は10%前後にしておいた方がいいでしょう。
このようにきちんと、株式と債券の比率を決めて運用をスタートさせたならば、あとは年に1回リバランスをする必要があります。リバランスというのはどういう作業かといいますと、決めた比率より上がった資産を売って、下がっている資産に回すということです。この作業が“言うは易し行うは難し”なのです。特に値上がりしている資産を売るということがなかなかできません。人間というのは欲がありますので、上がっている資産はもっと上がると思ってついそのままにしてしまいます。しかし、そうすると配分がおかしくなり、最初に想定した以上のリスクを取ることになってしまいます。車に例えると株式がアクセルで債券がブレーキです。株式の比率が高まると、どんどんスピードがでてしまい、事故になる確率が高まります。だから、スピード調整のためにブレーキを踏む必要があり、それが債券の比率を高めるということです。よって、リバランス時に当初決めた比率との乖離が10%以上出たなら、自動的にリバランスするなどとルールを決めてしまうのがいいと思います。
(中桐 啓貴)
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