投資信託のパフォーマンス
トウシル / 2008年3月7日 0時0分
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投資信託のパフォーマンス
投資信託の過去の運用実績(パフォーマンス)を評価する場合、ある期間における「ファンドの基準価額の騰落率」、「ベンチマークに対する超過収益率」、「標準偏差(リスクの度合いを示す指標)」、「シャープ・レシオ」、「インフォメーション・レシオ」などを使って、パフォーマンスの良し悪しを判断します。
基準価額の騰落率
ファンドが一定の期間にどれだけの収益を上げたかを理解するためには、ファンドの騰落率を調べる必要があります。騰落率とは、ある期間にファンドの基準価額がどれだけ上昇または下落したかを表す数値です。基本的に、騰落率は年率に換算した数字として示されます。年率換算することによって、他のファンドと比較することが可能になるからです。
パフォーマンスを評価している期間中に、分配金が支払われると、分配金を出した分だけ、ファンドの基準価額は下がります。したがって、分配金を支払ったファンドのパフォーマンスを適正に評価するためには、分配金を出した分を基準価額に上乗せした「分配金込み」の基準価額を用いて評価を行います。
(例)
購入時の基準価額 : 10,000円
1年間の分配金合計 : 1,000円
1年後の基準価額 : 9,500円
年率換算の騰落率 : {(9,500+1,000)÷10,000-1}×100=5.0% ***1年間の騰落率
ベンチマークに対する超過収益率
通常、運用会社は、ファンドの運用の目安として、ベンチマークを設定しています。例えば、ベンチマークが東証株価指数(TOPIX)である場合、そのファンドは日本株を主要投資対象としており、その騰落率は日本株の値動きに影響を受けると理解できます。基本的に、ベンチマークが同一であれば、主な投資対象が同一である、同じ種類のファンドと考えてよいでしょう。
ファンドの騰落率は、ベンチマークの値動きによって得られた部分と、ファンドマネージャーの腕によって得られた部分に分けることができます。すなわち、「投資信託の騰落率=ベンチマークの騰落率+ファンドマネージャーの腕による騰落率」、となります。このファンドマネージャーの腕による騰落率を「ベンチマークに対する超過収益率」と呼びます。
(例)
1年間のベンチマークの騰落率 : 5%
1年間のファンドAの騰落率 : 7%
1年間のファンドBの騰落率 : 3%
※ファンドAとファンドBのベンチマークは同じとします。
ベンチマークに対する超過収益率
ファンドA : 7%-5%=+2% *** ベンチマークに対して2%上回った。
ファンドB : 3%-5%=▲2% *** ベンチマークに対して2%下回った。
標準偏差(リスク)
標準偏差は、ある期間内(例えば5年間)における、ファンドの各年の騰落率の平均値から各年の騰落率がどの程度離れているか、を求めることによって得られる数値です。この数値が高い程、ファンドの騰落率のバラツキ、すなわちリスクが大きいといえます。
騰落率 | 平均 | 標準偏差 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |||
ファンドA | 10.0% | -5.0% | 10.0% | -5.0% | 10.0% | 4.0% | 7.3% |
ファンドB | 8.0% | -2.0% | 8.0% | -2.0% | 8.0% | 4.0% | 4.9% |
ファンドA、ファンドBとも平均の騰落率は4.0%ですが、標準偏差を比べるとファンドBの方が低くなります。ファンドBの方がリスクが小さいファンドであるといえます。
シャープ・レシオ
シャープ・レシオとは、ファンドの代表的なパフォーマンス評価尺度の一つであり、リスクを調整してパフォーマンスを測る考え方です。具体的には、ファンドの騰落率からリスクフリーレート(コール・レートなど短期金融市場の金利)を差し引いて「リスクフリーレートに対する超過収益率」を求め、これを運用期間中のリスクで割った「比」として求めます。
(例)
1年間のリスクフリーレート : 1%
1年間のファンドAの騰落率 : 10%
1年間のファンドAの騰落率の標準偏差 : 10%
1年間のファンドBの騰落率 : 8%
1年間のファンドBの騰落率の標準偏差 : 5%
シャープ・レシオ
ファンドA : (10%-1%)÷10%=0.9
ファンドB : (8%-1%)÷5%=1.4
ファンドAの方が1年間の騰落率は高いですが、リスクを考慮したシャープ・レシオで見ると、ファンドBのほうが優れていたといえます。
インフォメーション・レシオ
インフォメーション・レシオも、シャープ・レシオと同様に、ファンドの代表的なパフォーマンス評価尺度です。具体的には、ファンドのベンチマークに対する超過収益率を、運用期間中の騰落率の標準偏差で測ったリスク(アクティブ・リスクといいます)で割った「比」として求めます。
(例)
1年間のベンチマークの騰落率 : 5%
1年間のファンドAの騰落率 : 10%
1年間のファンドAの騰落率の標準偏差 : 10%
1年間のファンドBの騰落率 : 8%
1年間のファンドBの騰落率の標準偏差 : 5%
※ファンドAとファンドBのベンチマークは同じであるとします。
インフォメーション・レシオ
ファンドA : (10%-5%)÷10%=0.5
ファンドB : (8%-5%)÷5%=0.6
ファンドAの方が1年間の騰落率は高いですが、リスクを考慮したインフォメーション・レシオで見ると、ファンドBのほうが優れていたといえます。
パフォーマンス評価を利用する場合の留意点
このように過去のデータを使った評価の仕方を定量評価といいます。定量評価は、実際の過去のパフォーマンスに基づいており、評価者の主観が入りにくいという意味では客観性が高い方法といえます。投資信託の評価会社が発表するファンド評価(「レーティング」とか「格付」とも呼ばれます)は、大半が定量評価に基づいて行われています。
ただし、過去のパフォーマンスが良かったからといって、将来のパフォーマンスが優れているとは必ずしも言えません。ファンド評価は、あくまでも過去の結果に過ぎず、将来を約束するものではないのです。ファンド選びにあたって、ファンド評価を過信しないよう注意してください。
(山崎 元)
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