こんなに違う!相続にまつわる「民法」と「税法」の違い
トウシル / 2017年11月17日 14時40分
こんなに違う!相続にまつわる「民法」と「税法」の違い
みなさんは、「相続」という言葉から何を連想しますか?「骨肉の争い」とか「多額の税金」といったイメージが強い相続ですが、実は2つの法律が入り混じった世界でもあります。
今回は、意外と誤解されているけれど最低限知っておきたい、相続にまつわる民法と税法の違いについてお伝えします。
法人税や所得税とは異なる「相続」の世界
筆者は公認会計士・税理士ですから、クライアントの税務業務も多数行っています。会社に対しては法人税、個人に対しては所得税、売り上げが多い方はそれに加えて消費税…と、それぞれの規定は税法により定められています。
しかし、相続や贈与はそれらとは少し事情が異なっています。確かに、相続税や贈与税については「相続税法」に規定がありますが、相続や贈与そのものについては、「民法」に規定されているからです。
そのため、民法の知識だけで相続を考えると税金面で大変なことになりかねませんし、逆に税法の知識を中心に相続対策を行おうとすると遺産分割の際に争いのもとになったりします。
相続の仕事を正確にこなすには、「民法」と「相続税法」の両方に精通している必要がありますし、みなさんも、いざご自身の周りに相続が起こるというときに備えて、最低限の民法と相続税法(以下税法)の知識を持っていたほうが良いと思います。
民法と税法が複雑に絡み合っている世界…それが相続なのです。
養子縁組は5人でも10人でもOK?
よくある誤解の1つが、養子縁組についてです。
「養子にできるのは1人だけ!」と思いこんでいる人がいます。そうではなく、相続税の計算上、相続人にカウントできる養子が1人だけ(他に実子がいる場合)、というのが正解です。
「民法」では、要件さえ満たせば1人だけではなく5人でも10人でも養子にすることができます。でも税法上は、制限をつけないと不当に相続税を引き下げることにつながるので、「税金計算上のルール」を別途設けているということです。
相続税の「みなし相続財産」を上手く活用!
相続財産の範囲も税法と民法とでは異なります。たとえば亡くなった方に対してかけられていた死亡保険金は、「民法」ではそれを受け取る人の固有の財産であって、相続財産ではありません。しかし相続税法では、「みなし相続財産」として、相続税の課税対象としています。
相続対策を行う際は、この生命保険金の民法と税法との違いを上手に活用して、円満な遺産分割を行うための対策を実行することもよくあります。
他にも、死亡退職金も民法上はそれを受け取る人の財産ですが、相続税ではみなし相続財産として扱われることとなっています。
生前贈与の期間の違いに注意!
生前贈与についても税法と民法とで考え方が異なるので誤解を生じやすいところです。
相続税法では、相続人(財産をもらう人)が被相続人(なくなった方)の亡くなる前3年以内に生前贈与を受けた場合、その財産は相続税の計算上相続財産に加算することとなっています。
逆を言えば、贈与を受けてもそれが3年以上前であれば、それは相続税の計算に含めなくてもよいのです。
しかし民法では、たとえば遺留分算定のための相続財産の額を確定させるときは、「特別受益」といって過去に相続人が受けた贈与は3年ではなく10年でも20年でもさかのぼって計算することになっています。
特別受益が認定されると、対象となる生前贈与を受けた相続人は、すでに財産を先取りしているとされ、相続財産の取り分が少なくなってしまうのです。
財産の評価時点の違いに注意!
そして、最もトラブルになるのが遺産分割の際の財産の評価です。相続税の計算上は、「亡くなった時点」での時価をもとに、相続財産を計算します。しかし民法上は、「遺産分割の時点」での時価をもとに相続財産を計算します。
そして使われる時価も異なります。たとえば市街地の土地であれば、相続税計算上は実際の時価より少し安い「路線価」を使いますが、民法では実際の時価を使って計算をすることも多々あります。
上場株式についても、相続税計算上は相続があった日の株価以外に、当月株価の平均値、前月株価の平均値、前々月株価の平均値と比べ、最も低い価格で計算します。一方、民法ではあくまでも遺産分割時の時価を使います。
使われる時価の差異や、相続発生時から遺産分割時までの時価の変動により、民法と税法とで評価額のズレが生じ、これが不公平感につながります。「小規模宅地の特例を使った人とそうでない人との税負担の違い」もトラブルの原因になります。
これらの具体的な内容や、トラブルを未然に防ぐための方法について、次回にお伝えいたします。
(足立 武志)
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