日本株、トレンド復活までの「距離感」。メジャーSQにらみの思惑に注意
トウシル / 2017年11月27日 16時0分
日本株、トレンド復活までの「距離感」。メジャーSQにらみの思惑に注意
祝日を挟んで4営業日だった先週の国内株式市場ですが、週末11月24日(金)の日経平均は2万2,550円で取引を終えました。週間ベースでは前週の下落から再び上昇に転じ、上げ幅は154円です。
ただ、結果的に日経平均は上昇したものの、力強さはあまり感じられず、前回のタイトルの文言にもあるように、「上値追いはしばらくお預け」の展開となりました。ここまでの動きは想定通りでしたが、ではその「お預け」から解放されるにはどのくらいのガマンが必要なのかが次に気になるところです。
今回はそのヒントを探っていきます。まずは下の図1で足元の状況を確認します。
■図1 日経平均(日足)の動き:2017年11月24日取引終了時点
日経平均の値動きをローソク足で辿っていくと、25週移動平均線がサポートとなった前週の11月15日〜16日を境にして、下値が切り上がる格好で戻り基調になっています。
とはいえ、先ほども触れましたが、力強さに欠けている印象になっているのはローソク足の形のせいかもしれません。陰線が多くなっていることに加え、上ヒゲが長いものが目立っています。週末の24日(金)こそ陽線ですが、それまでは4本連続で陰線が並んでいます。さらに、前週からの戻り高値が直近の高値を超えられずにいるほか、先週の東証1部の売買代金も3兆円を下回る日が続き、盛り上がりに欠けています。
■図2 日経平均と東証1部の売買代金の状況
つまり、先週の株価の戻り基調は、買いが優勢というわけではなく、売りをこなしつつ、様子を見ながらの慎重姿勢だったことがうかがえます。
そのため、今週は売買量が増えること、そして直近の戻り高値を更新できるかがポイントです。具体的には、11月22日の2万2,677円、11月17日の2万2,757円が直近の戻り高値となりますが、ここを超えることができれば相場のムードも改善すると思われます。ただ、反対に超えられないと、上値の重さが意識される可能性も出てくるため注意が必要です。
基本的に今週の日経平均はもみ合いの展開が想定されます。米国株市場の動向が相場のムードを左右しそうで、その米国では先週末から始まったクリスマス商戦が好調な滑り出しだったこともあり、相場の地合いは悪くなさそうです。
また、米国では経済指標の発表も多く予定されています(カレンダーの関係上、雇用統計の発表は来週です)が、最近の米国は「利上げのペースを急がない」という見通しが強まっており、為替の円高傾向には配慮する必要があります。今週はベージュブックやFRB(米連邦準備制度理事会)要人発言なども予定されているため、次回のFOMC(米公開市場委員会)をにらんで注目されやすくなりそうです。そして、国内株も業績面を背景にした強気派が依然として多いものの、足元では買える銘柄とそうでない銘柄の選別が行われている状況です。さらに、12月はIPO銘柄が多く、市場の関心が東証1部の主力株市場から、マザーズやJASDAQといった新興株市場に注目が向かうかもしれません。そのため、上値を追うというよりは、堅調に動くイメージのほうが強そうです。
その一方で、2週間後の週末(12月8日)に控えたメジャーSQ(先物取引の精算日)に向けた思惑も絡んでくる時期でもあり、値動きが大きくなりやすくなる展開も選択肢として想定しておいた方が良いかもしれません。値動きの大きさが方向感を伴ってくれば、新たなトレンドの発生というシナリオも浮上してきます。
ただ、新たなトレンドの発生はあくまでもサブシナリオで、レンジ相場の継続がメインシナリオになります。というのも、トレンド発生までの「距離感」がかなりあるからです。
前回も指摘しましたが、株価のトレンドは、日々の上げ下げを伴いながら形成されていきます。上昇トレンドの場合は上値と下値を切り上げ、反対に下落トレンドの場合は切り下げていきます。
現在の日経平均をこのトレンドの定義に当てはめると、11月9日の高値(2万3,382円)を上抜ければ、上昇トレンドへの復帰、逆に直近の安値(11月16日の2万1,972円)を下抜けてしまうと、下落トレンド入りとなってしまう状況にあることがわかります。
■図3 日経平均(日足)の動き その2
先週末の株価水準(2万2,550円)からは、レンジの上限と下限まで、それぞれ832円、578円と比較的距離があるので、現時点では「トレンド判断に影響を与えるような大きな材料が出てこない限りは、2万3,382円〜2万1,972円のレンジ内での値動きが続きそう」と考えるのが自然です。
いわゆる、日柄調整もしくはスピード調整と呼ばれる展開が続くという見方なのですが、この言葉には、中長期的なトレンドの中の小休止という前提があります。「これまで急ピッチな株価上昇で過熱していたから、一定期間はクールダウンとなる調整の時期が必要」という発想です。
その意味では、MACD(移動平均収束発散法)が参考になるテクニカル指標かもしれません。
■図4 日経平均とMACD
MACDは簡単に言うと、短期と中期の2本の移動平均線の価格差の推移を示した線で、上の図2では赤い線で描かれています。ちなみに、もうひとつ青い線がありますが、これはMACDを移動平均線化したもので、シグナルと呼ばれます。
一般的に株価にトレンドが発生しているときは短期の移動平均線が先に反応し、中期の移動平均線がその後に続いて反応します。トレンドが強いほど短期の線が先に動いて行くので、2本の移動平均線の差(かい離)は拡大し、MACDの値は大きくなります。
上の図4を見ても、日経平均の上昇トレンドに合わせてMACDも右肩上がりに上昇していましたが、足元では日経平均が調整局面に入ったのに伴い、MACDも低下していることがわかります。
そのため、調整局面が終焉のときを迎えたと判断できるのは、現在下向きの軌道を描いているMACDが再び上昇に転じ、シグナルを上抜けたときが目安となりそうです。
ちなみに、過去10年間の上昇トレンドを調べてみると、MACDが500円ぐらいの水準でトレンドが天井をつけることが多くなっています。今回の上昇局面でつけたMACDの値のピークは586円でしたので、いかに上昇の勢いが強かったがわかります。このまま足元の下向き傾向が続き、今度は0円を下抜けると、短期線と中期線の「デッドクロス」を意味することになり、下落トレンド判断となってしまいます。
(土信田 雅之)
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