「グレートアンワインドでイエレンは市場の洗礼をうけるのか?金融界の帝王ジェイミー・ダイモンの相場観」
トウシル / 2017年7月14日 0時0分
「グレートアンワインドでイエレンは市場の洗礼をうけるのか?金融界の帝王ジェイミー・ダイモンの相場観」
賃金はインフレしていないが、資産価格はバブルしている
米国は完全雇用でも賃金は上昇していないが、FRBのゼロ金利とQE(量的緩和政策)で株価や資産価格はバブルして、家賃・教育費・医療費などは大きく上昇し、ゼロ金利下で自動車ローンや学生ローンのサブプライムローンが増えた。この結果、貧富の格差が大きく広がり、トランプ大統領が誕生した。大雑把にいうと、これが米国経済の現状だ。イエレンFRB議長は度々「物価動向を注視する」と言うが、FRBの見ている物価は上がらないけど、資産価格はインフレを超えてバブルしている。
●NYダウ(週足) 上げ9年目の相場
200日EMAフィルター付きストキャスティクス5.3.3の売買エントリーシグナル
●S&P495とビッグ5(2013年~2017年)
(ビック5:アップル・マイクロソフト・アマゾン・グーグル・フェイスブック)
「S&P500は2013年中旬以降、年率わずか6.1%に過ぎない。一方、ビッグ5指数は同期間に57.3%とべらぼうに高い評価をされている」
●グリーンストリート商業用不動産価格指数(2001年~2016年)
「金融危機前の2007年の不動産価格のピークを越えている不動産市場だが、現在の価格は正当で持続可能だという楽観論で泡立っている」
●家賃中央値上昇率(1989年~2016年) 不動産バブルで家賃は上がっている
●サブプライム自動車ローン
「サブプライム自動車ローンABS(資産担保証券)で信用力が著しく低い<ディープサブプライム層>向けローンの占める割合が、5.1%から32.5%に増加している」
●大学授業料・医療費。住宅価格・CPIを比較(1978年~2011年)
米国は学費と医療費が高すぎる…
●企業収益の拡縮と金利(1985年~2015年)
金利が上がると企業収益は低下する
●米国人の退職貯蓄パターン 米国人の3人に1人が退職時の貯蓄ゼロ
金融正常化(利上げと資産売却(長期金利上昇によるイールドカーブ正常化=利鞘のない金融機関救済)に動くイエレン
米国が本来は<緊急措置>であったゼロ金利やQE(量的緩和政策)を2016年まで引っ張ってこられたのは、
① グローバリゼーション(失業の輸出)で安い労働力の確保が可能
② IT化、ロボット化で人がいらず、賃金が上がらない
③ 第二次世界大戦以降大きな戦争がなく、世界規模でディスインフレ傾向になっている
といった要因が大きい。
しかし、現在、米国は極めて不健全な量的緩和政策からの出口を模索し、日・欧にQEを肩代わりさせている間に、金融正常化に向かおうとしている。
そうしたなか、昨日はイエレンFRB議長による半期に一度の金融政策に関する議会証言が行われた。イエレンは、「経済が想定通りなら、比較的早く保有資産の縮小を開始する」と発言し、9月のFOMCで資産縮小を宣言したいようだ。一方で、「今後数カ月は物価動向を見極める」と述べており、追加利上げの時期は後ずれ(12月までないか・・)しそうだ。イエレンの議会証言を受けて、市場は「株高・債券高(金利低下)・ドル安」で反応した。12月まで利上げがないと踏んだ市場は、ゴルディロックス(適温相場)がまた続くと観ているのであろう。NYダウは最高値を更新している。
●NYダウCFD(日足) NYダウは7月相場で最高値を更新
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)
下段:新値3本足の売買シグナル
議会証言を受けての「株高・債券高(金利低下)・ドル安」で円安トレンドはカナダを除き一服
イエレンFRB議長の議会証言を受けて米金利が低下し、円安トレンドはカナダを除き頭打ちとなっている。イエレンが、「低水準のインフレ率や自然利子率により、利上げの余地は限られる可能性もある」と発言したのを嫌気しているようだ。足の速い海外投機筋は利食いに動いたようである。
●ドル/円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ・パラボリックS&R
中段:標準偏差(26)・ADX2LINES(8・14)
下段:新値3本足のシグナル
●ユーロ/円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ・パラボリックS&R
中段:標準偏差(26)・ADX2LINES(8・14)
下段:新値3本足のシグナル
●ユーロ/ドル(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ・パラボリックS&R
中段:標準偏差(26)・ADX2LINES(8・14)
下段:新値3本足のシグナル
●ポンド/円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ・パラボリックS&R
中段:標準偏差(26)・ADX2LINES(8・14)
下段:新値3本足のシグナル
●ポンド/ドル(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ・パラボリックS&R
中段:標準偏差(26)・ADX2LINES(8・14)
下段:新値3本足のシグナル
●カナダドル/円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ・パラボリックS&R
中段:標準偏差(26)・ADX2LINES(8・14)
下段:新値3本足のシグナル
●ドル/カナダドル(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ・パラボリックS&R
中段:標準偏差(26)・ADX2LINES(8・14)
下段:新値3本足のシグナル
金融界の帝王ジェイミー・ダイモンの相場観
やはり、7月はまだリスクオン的な相場が続いているようだ。だが、このゴルディロックス相場には大きな落とし穴がありそうだ。利上げや資産売却は株安要因だが、今の市場では無視されて、すごく居心地の良い相場に見えている。しかし、こうした動きは長くは続かない。「ゴルディロックスと3匹のくま」(Goldilocks and the Three Bears)は、イギリスの有名な童話である。ゴルディロックスは今の「程良い状況が続く適温相場」の例えによく用いられる言葉だが、ゴルディロックスの童話の本質は、「そういう状況は長くは続かない」ということなのである。
運用者の間で話題になっているのは、イエレンの議会証言ではなく、金融界の帝王と呼ばれるJPモルガンのダイモンの相場観である。
ブルームバーグの報道によると、【米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン会長は、中央銀行による債券購入プログラムを巻き戻すのは前例のない難しい作業であり、人々が考えているよりも大きな混乱をもたらす可能性があるとの見方を示した。ダイモン氏は11日パリでの会議で、「このような量的緩和(QE)は過去に例がない。このようなQEを巻き戻した経験もない」と語った。「従って、これがリスクを意味するかもしれないことは明らかだ。かつて経験したことがないからだ」と指摘した。米国を先頭に、世界の金融当局は大規模な資産購入プログラムを巻き戻す準備をしている。米当局だけでも保有資産は4兆5000億ドル(約514兆円)規模に膨らんでおり、当局は長期金利を大きく動かすことなく保有債券を圧縮したい考えだ。ダイモン氏は「これが規模や量を伴って行われれば、人々が考えているより少し大きな混乱をもたらすかもしれない」と述べた。「われわれはどのように進展するかを正確に知っているかのように行動しているが、実は分からない」とも指摘した。中銀は確実性を与えたいだろうが、「不確実な物事を確実にすることはできない」と語った。また、ここ10年に国債の主な買い手だった中銀と金融機関、外為運用者が売り手に転じるだろうとして「これまでとは大きく異なる環境の中でやっていかなければならない。潮目の変化だ。潮は引いていく」と述べた】(「JPモルガンのダイモン氏:QE巻き戻しで想定より大きな混乱も」2017年7月12日 ブルームバーグ)という。
グレートアンワインド(大いなる緩和の巻き戻し)によるテーパータントラム2はあるのか?
2013年6月に開かれたFOMCで、当時のベン・バーナンキFRB議長が量的緩和の縮小・引き締めを行う方針であることを明らかにした。この発言を受けた投資家の一斉行動から株式市場が暴落し、債券市場では金利が急騰した。この市場の癇癪(テーパータントラム)は、日本では「バーナンキ・ショック」と呼ばれている。
●2013年の米10年国債金利の推移
●2013年のNYダウの推移
新債券の帝王ジェフリー・ガンドラックは、「イエレンの利上げは資産バブルへの警告であり、利上げや資産売却で株が10月に10%下げても、FRBのせいにするのはやめてほしいと言っているのだ」、「近年は夏相場が危ないので株は売っておいた方がいい」と述べている。ビセンダ・アセット・マネジメントのフェリックス・ツラウフ最高投資責任者(CIO)は、「まるで1999年の終わりごろのようだ」と語り、中国を中心とする世界経済減速によって7月か8月に「株式は重要なピーク」を迎えるとみている」という。ラリー・ウィリアムズも7月1日に「もう一度、マーケットは上げてきます! もしかすると、新高値をつけるかもしれません。しかし、7 月末頃から大きく下げ始めるでしょう」とこの楽観相場に警鐘を鳴らしている。
●NYダウと<7の年の平均サイクル>(ラリー・ウィリアムズ作成)
「7」の付くすべての年の平均を赤線で、1987年を除く「7」の付く平均を青線でグラフ化している
●S&P500先物(日足)安全なのは7月相場までか?「もう一度、マーケットは上げてきます! もしかすると、新高値をつけるかもしれません。しかし、7 月末頃から大きく下げ始めるでしょう」
●S&P500CFD(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)
下段:新値3本足の売買シグナル
●ナスダック100CFD(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)
下段:新値3本足の売買シグナル
●日経平均CFD(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)
下段:新値3本足の売買シグナル
●FTSE100CFD(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)
下段:新値3本足の売買シグナル
●DAXCFD(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
中段:標準偏差ボラティリティ(26)
下段:新値3本足の売買シグナル
●NYダウ・日経平均 月別騰落率(過去20年)
歴史的に5月・9月・10月はボラティリティが上がるが、近年の相場は8月が危ない!?
●米国債の長・短(10年・2年)スプレッド(日足)
(イールドカーブは右肩上がりが基本だが、イールドカーブがフラット化してくると、米国の株式市場に転機が訪れる。前回のフラット化は2007年)
(石原 順)
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