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相続トラブル防止テク。民法と税法の違いがカギ

トウシル / 2017年12月1日 14時25分

相続トラブル防止テク。民法と税法の違いがカギ

相続トラブル防止テク。民法と税法の違いがカギ

相続にまつわるさまざまなトラブル。その中には、民法と税法とで取り扱いが異なることが理由になるものも。果たしてトラブルを未然に防ぐ方法はないのでしょうか?

 

トラブルを避けたいのなら遺言書を残しておくのが基本

 養子縁組、生前贈与、生命保険金の扱い、財産の評価…こんなに違う!相続にまつわる「民法」と「税法」の違いで相続に関して民法と税法で異なる取り扱いがされるケースが多々あることをお話ししました。

 これによりどのようなトラブルが起こるのか、そしてそれを防ぐためにはどうすればよいかを今回はお話しします。

 相続でトラブルになるケースで圧倒的に多いのが、被相続人(亡くなった方)が生前に、遺産の分け方について何も示さず亡くなるケースです。

 この場合、相続人(亡くなった方の財産を受け取る権利のある人)の間で「遺産分割協議」という話し合いが行われます。話し合いがスムーズにまとまればよいですが、多くのケースで何かしらのイザコザが起こります。

 ですから、自分の財産をどのように相続人に分けたいのか、自分の意思をはっきりと示しておくことが重要です。そのためには「遺言書」を残しておくことが求められます。このとき、遺言書が無効となる可能性の低い「公正証書遺言」の形式で残しておくようにしましょう。

 

遺言書をただ残しておくのではなく内容にも一工夫を

 そして、遺言書もただ書いておけばよい、というわけではありません。内容についてもひと工夫が必要です。

たとえば子ども3人に財産額がおおむね均等になるように遺言書を書いたとしても、「税金」の面で均等にならないケースがあります。その最たる例が「小規模宅地の特例」を適用できる土地が相続財産に含まれている場合です。

 財産の金額はほぼ同じでも、小規模宅地の特例を適用できる土地を相続した相続人の税額は圧倒的に少なくなるのが一般的です。そのため、他の相続人は税負担の面から「不公平だ」と感じてしまうのです。

 そこで、小規模宅地の特例を適用することにより相続税額が少なくなる相続人に対しては、その分だけ相続財産も少なく渡るようにします。相続人間の「相続税支払い後の相続財産」が均等に近い形になるようにするのです。

 

あえて民法と税法との違いを積極的に活用する方法も

 民法と税法との取り扱いの違いをあえて利用する、戦略的な遺言書の使い方もあります。

 民法には遺留分というものがあります。たとえば父が亡くなり母と子A、子Bの計3人が相続人となった場合、法定相続分(民法で定められた相続財産の取り分)は母が2分の1、子Aと子Bがそれぞれ4分の1ずつとなります。

 もし、子Bが素行不良であり、遺産をできるだけ渡したくない、と思えば、遺言書に「子Bには一切の遺産を相続させない」としておけば、子Bに遺産を渡さずにすみます。

 遺言書を残さなければ、子Bは法定相続分である4分の1の遺産相続を要求してくるでしょう。遺産分割協議がなかなかまとまらず、最後は泥沼の争いになりかねません。

 一方、遺言書を残したとしても、民法には遺留分という権利(最低限これだけはもらえるという権利)が認められていますから、子Bは遺留分減殺請求(遺留分の相続財産を受け取る権利を主張すること)をすることで、4分の1の半分である8分の1の遺産を取得することができます。

 でも、何もしなければ子Bには4分の1の遺産が渡ってしまう可能性が高いことを考えれば、遺言書を書くことは大きな効果を発揮するといえます。

 

遺言書+生命保険金で実質的な遺留分を減らす

 これに加え、生命保険金を活用することができます。生命保険金は、民法上は相続財産ではなく、受取人固有の財産です。遺言書にて受取人を指定する必要もありませんし、遺産分割協議書に記す必要もありません。

 そこで、現金・預金として所有している財産を使って生命保険に加入し、現金・預金の残高をあえて圧縮しておくのです。そのうえで、例えば生命保険金の受取人を子Aにしておきます。

 こうしておけば、生命保険金は民法上の相続財産になりませんから、仮に子Bが遺留分減殺請求をしてきたとしても、子Bに渡すべき金額をさらに小さくすることができます。そして、子Aは生命保険金として受け取ったお金を使って子Bに遺留分相当額を支払うことができます。

 

遺言書を残すよりも重要なこととは…

 そして、遺言書を書く以上に重要なのが、生前に家族会議を開き、財産を渡す側の考えを子どもたちによく説明しておくことです。

 確かに遺言書を残しておけば、自分の所有する遺産を誰に渡したいのか、という意思を伝えることができます。遺留分の問題を解決できれば、相続人間で不平等な内容の遺産分割も可能です。

 でも、相続人ごとにもらえる財産の額や内容に違いがあると、不満を持つ相続人が現れてしまいます。遺言書に記された不平等な遺産分割がきっかけで、きょうだいが不仲になってしまうケースは非常に多いです。

 しかしそれでは、財産を渡す側としても不本意なはずです。残された相続人には喧嘩せず仲良く暮らしてもらいたい、と思うのが普通でしょう。

 そこで、家族会議を開いて、自分の財産を誰にどのように渡したいのか、そしてそれはどのような思いからなのか…これを生前に自らの口で明確に意思表示しておくことが重要です。遺言書にも、自分の思いを記すことができますが、やはり文章だけでは伝わりにくいものです。

 財産の分け方は不平等に見えるが、そこには隠された自らの思いがある…。

 自らの思いを自らの口で説明して、相続人となる人たちがそれを理解し納得してくれれば、みんな幸せに暮らしていくことができますね。

(足立 武志)

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