#9:来年の予想は米国中間選挙しだい?2018年のドル/円
トウシル / 2017年12月22日 10時0分
#9:来年の予想は米国中間選挙しだい?2018年のドル/円
経済のプロ「楽天証券研究所」と、国民のリアル「街角の声」、運用のプロ「ファンドマネージャー」に2017年の振り返りや2018年の見通しを大特集!
2017年振り返り
今年のドル/円は、年明け1月3日につけた118.60円が高値となりました。トランプ氏が正式に大統領に就任して、経済改革の第一歩となるヘルスケア改革法案で早くもつまずいたところから、マーケットの過剰の期待が冷め始め、ドル/円も勢いを失っていきました。
来年も見逃せないドル/円3つの材料
4月には110円を割るまで円高になり、9月には北朝鮮の核実験で地政学リスクが一気に高まると107.31円まで下落して今年の安値をつけました。しかし、そこからのドル/円の回復は目覚ましく、11月には114円後半まで戻しています。
背景には、米国の利上げ期待がありました。FRB(連邦準備制度理事会)は、今年3回の利上げを実施して、合計でFF(フェデラルファンド)金利を0.75%引き上げました。一方日銀は、今後しばらく緩和政策を当面維持することを強調。日米金利差拡大の見通しが強まったところに、トランプ大統領の経済政策がようやく始動。減税政策を先取りした株式市場が史上最高値を更新して、マーケットのリスクセンチメントを強めたことがドル買いにつながりました。
こうして振り返ってみると、今年のドル/円は、FRBの金融政策(利上げ)、トランプ大統領の経済政策、そして北朝鮮リスクという、3つの材料で動いたことになります。
今年のドル/円は、年間のレンジ幅(高値~安値)は約11円。2016年の半分しか動きませんでした。「静かな」相場だったといえます。
2018年予想
2018年のドル/円は、おおよそ105円から120円のレンジで動くと予想します。
調整リスクの警戒感はあるが、上昇余地も大きい年
ドル高/円安のトレンドは来年も継続すると考えます。しかし、NYの株価が急ピッチで過去最高値を更新しているなかで、調整リスクに対する警戒感も大きくなっています。株価の高転びで投資家のセンチメントが後退すれば、来年の早い時期に107円台を試す局面が出てくるかもしれません。しかし、米国経済が好調なことは疑いがなく、過剰な期待を振り落した後のドル/円は、逆に上昇余地が広がるでしょう。
ドル/円が一段上を目指すためには、まず115円から120円にかけて横たわる強い抵抗ゾーンを突破しなくてはいけません。2018年の米利上げを3回まで織り込んだうえで、このレベルを超えていないということは、それ以上の強い材料が必要ということになります。
しかしたとえば、トランプ減税効果が米経済を刺激することで、FRBが経済見通しを上方修正するような状況に至れば、利上げ回数が3回~4回に増えるとの期待につながり、120円超えのチャンスが高まるでしょう。
北朝鮮リスクに対しては、最近のマーケットは、ミサイル発射にも反応は限定的です。とはいえ、マーケットは何かが起きてから行動しようと考えているだけで、決して事態が良くなっているわけではありません。
いずれにしても、来年も引き続き、今年と同じ3つ材料がドル/円を動かすことになりそうです。
2018年のドル/円は米国中間選挙しだい
11月に訪日したトランプ大統領は、外交問題よりも通商問題に執心の様子でした。北朝鮮よりも米国の貿易赤字が問題だということに多くの日本人が失望すると同時に、改めてトランプ大統領のアメリカ・ファースト主義を思い知らされました。
2018年は米国中間選挙の年です。貿易赤字を縮小して、支持率を高めたいトランプ大統領は、円安に矛先を向ける可能性があります。少なくとも、日本の円安政策に寛容な態度をとることはないでしょう。1980年代のレーガン大統領時代、減税とドル高政策が財政と国際収支の大幅赤字となったことが、プラザ合意でドル安に至ったという歴史もあります。
したがって、今年の注目指標は、米貿易赤字です。赤字額が減らなければ、米国からの円高圧力が高まるとの連想でドルが売られやすくなるでしょう。
一方で、米雇用統計の重要性は低下すると考えます。来年には失業率が4%以下にまで下がると予想され、ほぼ完全雇用の状態になっている米労働市場に、FRBは何の心配も抱いていません。米国経済がそれだけ回復している証拠ともいえます。
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