ゴルディロックス相場と流動性パニック
トウシル / 2017年12月29日 7時0分
ゴルディロックス相場と流動性パニック
トランプラリーは中間選挙まで続く!?
「トランプは中間選挙に勝つために政策をばらまき、パウエルに低金利を維持させて現在のバブル環境を維持させるだろう」というのが現在の米株式市場の見立てで、「減税やインフラ投資など政策のばらまきでトランプラリーは中間選挙まで続く」という見方が多い。投資顧問の強弱比率は過去15年で最高の水準にまで上昇している。強気派は64.4%で、過去最高の数字である。
筆者は相場予測をするが、ポジションを取るのは順張りであれ、逆張りであれ、テクニカル指標を使っている。相場はタイミングを当てるゲームで、相場予測が当たることと、相場で儲けることには何の関係もないからである。
「適切な基本哲学を持っていれば、事態が変わることは結局利益になる。最悪でも、長い目で見れば生き残れるだろう。しかし、適切な基本哲学を持っていなければ、そのうち変化に殺されるので成功しない。私は、自分が予測なんてできないとわかっていた。だからトレンドについていくことにしたし、だからこそ大成功し続けているのだ。私たちはただトレンドについていく。そのトレンドが初めのうちどれほどバカげて見えても、またどれほど続いても、あるいは終わりがどれほど筋が通らないように見えても、私たちはトレンドについていく」というジョン・ヘンリーのように、ただ、トレンドについていくだけだ。
NYダウ(日足)
筆者は上記のチャートに表示されている標準偏差ボラティリティトレードの取引手法(インジケーターおよびテンプレート)を、MT4(メタトレーダー4)など世界の主要な取引プラットフォームに移植した。そう遠くない将来に公開できるかもしれない。
NYダウCFD(日足)
2018年相場の懸念は一方通行相場の反動か?
ソロスのクォンタムファンドは、それまでの15年間、素晴らしい成功を収めてきた。しかし、10月のブラックマンデー直前には5,000枚を超えるS&P500先物を買い持ちしていた。取引金額にして10億ドルを超えており、当時としては巨額であった。
10月19日、ソロスはシェアソン=アメリカンエクスプレスを通じて建玉を手仕舞う決断をした。問題は彼の大口玉が相場に重くのしかかっていたことである。S&P500先物の大口玉が売却されるという噂が広がったため、買い気配値がすべて消えてしまったのだ。なお、S&Pは8月28 日に337 で高値を付けていた。1987年11月2日のバロンズでは次のように報じている。
他のトレーダーたちは苦境に陥ったクジラの鳴き声に気づき、恐る恐る、その獲物の周りをとり囲んだ。売り気配値は230、220、215、200 と下げていく。そして、立会場のトレーダーが攻撃に入った。ソロスの大口玉は195~210で売り叩かれたのである。凄惨な悪循環だった。S&P500先物が現物よりも50ポイント(20%)ほど安く評価されたのはプログラム売買のせいではない。ソロスの大口玉のせいだ。ソロスのクォンタムファンドは2週間で総額8億4000万ドルの損失を被った。純資産価値の32%が吹き飛んだことになる(出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート11月号「1987年から30年で何が変わったのか!」)。
ニューヨーク大学教授のヌリエル・ルービニは、「驚きが発生した時に、株式や特に債券の再評価は急激で劇的になりうる。同じ混雑した取引に捕まった全てのひとは、われ先に出口へと向かう必要がでる。これまでと反対方向への群れる行動が発生する」と流動性パニックを解説しているが、これで思い出すのは1987年のブラックマンデーである。
西ドイツの利上げとポートフォリオインシュアランス(自動売買プログラムの暴走)でブラックマンデーが起きたという説明になっているが、ブラックマンデーはそうした理由で起きたというよりも、実際は心理的な要因による流動性パニックであろう。
NYダウ(日足)と1987年10月のブラックマンデー
一方通行の動きの反動である流動性パニックについては、先週のビットコインの動きを見ていればわかるだろう。売りたいときに売れない、買いたいときに買えないという流動性パニックによって、相場が乱高下している。
ビットコイン/円(日足)
米国株も金融危機から9年上げてきた。バブルの崩壊は何か理由があっておこるというよりも、市場の内在的要因によっておこることも多い。ゴルディロックス相場の中で、今の市場はあまりに偏ったインデックスバブルと、その反動である流動性パニックの危険性を抱えている。
VIX指数(月足)2000年~2017年
S&P500(月足)
通貨市場はドル安・円安相場
通貨市場はドル安・円安相場になっている。年末相場で調子がいいのはオセアニア通貨である。原油、パラジウム、銅などの上昇で資源通貨が物色されている。どこまで上げるのかという照会が多いが、トレンドが発生すれば相場に参入し、トレンドが消滅すれば相場から撤退するだけである。
NY原油CFD(日足)
豪ドル/円(日足)
豪ドル/円(日足)
豪ドル/円(1時間足)
(石原 順)
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