節税枠フル活用!iDeCo掛け金の年単位化
トウシル / 2018年1月25日 16時50分
節税枠フル活用!iDeCo掛け金の年単位化
2018年1月、つみたてNISAとあわせてiDeCo掛金年単位化もスタート
投資に詳しい人たちにとって、2018年1月といえば、つみたてNISAのスタートという印象が強いと思います。しかし日本証券業協会の発表によれば、19.6万口座を獲得してのスタートとなりました。本家のNISAがスタートダッシュで320万口座を獲得したのと比べるとひっそりとしたスタートです。
でも、これと同じタイミングにもっとひっそりとスタートした「よい改正」があります。それは、昨年1月にリスタートしたiDeCo(個人型確定拠出年金)で「掛金拠出の年単位化」が可能になったことです。
実はこの改正、地味すぎるうえに、若干手続きが複雑であるため、ほとんど紹介されていないと思います。そこで今回は「iDeCo年単位化」活用法を紹介してみます。
iDeCo掛金年単位化の基本的なしくみ
掛金の年単位化というのは何か、というと、掛金の拠出ルールを「月単位」ではなく「年単位」でやりくりしてもいいということです。
たとえば、NISAの年120万円は1月の頭から12月末まで好きなタイミングで好きな金額を入金し、購入ができます(市場が開いていればなので、現実には365日いつでも、とはいきませんが)。つみたてNISAも年40万円の拠出時期はある程度自由です(定期的な拠出が要請されていますが)。
一方、iDeCoは掛金管理はこれまで「月単位」となっていて、a
「今月は残高不足で引き落としできなかったので来月2カ月分入金する」
「ボーナス月に増額する」
「数カ月分をまとめて入金する」
というような使い方はNGでした。これは法律が月単位の拠出を厳格に定めていたからです。
これに対し、2018年1月つまり今年からは「年単位での掛金のやりくり」がOKに。ただしいくつかのルールがあります。
●1月から12月で年単位の管理をする
(iDeCoは翌月納付なので、12月掛金~翌年11月掛金がこれにあたる)
●月単位の限度額×月数分が拠出上限になるので、1月に一年分を前納することはできない
(2.3万円の限度額の人の場合、6月時点で累計13.8万円まで納付可能。1~11月まで掛金ゼロの場合、12月に一年分をまとめて27.6万円入金は可能、という感じ)
●年単位化の予定はあらかじめ計画書を提出する
(ボーナスの査定額を見て、直後の増額を決定するような機動性はない)
●転職や退職して月1.2万円の立場から月2.3万円に変わった場合などは、それぞれの立場であった期間を月単位で計算し年間拠出額を決める
(半年1.2万円の立場、半年2.3万円の立場なら年間拠出額は21万円ときちんと計算される)
…できるだけ簡単に解説したつもりですが、やはりややこしいですね。では具体的に2つの事例で活用方法を紹介してみましょう。
方法1 月2.3万円の枠がある人:ボーナス増額にチャレンジしてみよう
まずは「ボーナス月増額」です。毎月の掛金拠出枠を使い切れていなかった、つまり毎月の家計からは定期的にiDeCo掛金を満額捻出できなかった人にとって、年単位化はフル活用するチャンスです。
年間の限度額を使い切るということは税制優遇を漏らさず活用することであり、老後資産の上積みをより多く行うことでもあります。ボーナス月に増額をすれば、毎月の使い残し分を漏らさず利用できるチャンスが高まります。
一般的には6月末~7月前半に夏ボーナス、12月に冬ボーナス支給だと思います。そこで、7月の掛金拠出(iDeCoの制度としては6月拠出分)と、12月の掛金拠出(iDeCoの制度としては11月拠出分)について、「毎月の使い残し額×6月分」を増額するよう書類に記入します。
仮に月1万円で拠出していた人が月2.3万円の限度額があったのであれば、
1~6月 1.0万円
7月 8.8万円
8~11月 1.0万円
12月 8.8万円
と拠出して年間の27.6万円の枠組みをフル活用できるわけです。
所得税・住民税の軽減割合が20%相当であった場合、月1万円しか出せないケースでは2.4万円しか節税できませんでしたが、27.6万円フル活用すれば5.52万円の節税ができます。もちろん老後の財産ベースでも2.3倍増で積み立てがはかどることになります。
方法2 定期預金100%の人:12月に一年分納付すると口座管理手数料が少し節約される
次のパターンは、投資は行わず全額定期預金にしていた人だけが役立つテクニックです。
楽天証券などの、金融機関サイドの口座管理手数料をゼロとしているケースであっても年2,004円はコストがかかります。これは国民年金基金連合会と信託銀行にかかるコストです。
このうち国民年金基金連合会の取る月103円は掛金を拠出した月のみにかかる収納等のコストとなっています。年単位化を選択し拠出がない月を設定すると、その月については信託銀行の費用、つまり月64円だけ徴収されることになります(掛金を拠出せず運用のみ行う運用指図者と同じ取り扱いになる)。
つまり、年単位化の手続きをして「1月から11月は無拠出、12月分で年間拠出可能な14.4万円を一括拠出(iDeCoでは11月拠出分)」としておけば、月1.2万円の拠出ができる人にとっては年間の口座管理手数料が下がります。具体的には、
1~11月:月64円
12月:167円
ということになり、年間の費用は935円に抑えられます。なんと1069円も年間費用を抑えられることになります。14.4万円の掛金の歩留まり率としていえば0.74%向上することになり、超低金利下では実質的な利回り向上テクニックといえます。これは見逃せない数字になります。
ただし、投資をしている場合においては、12月のマーケットにのみ中長期投資の掛金の購入タイミングが限定されることになります。これが吉と出るか凶と出るかは難しいところです。一般論としていえば、月ベースで買い付けをしたほうがベターでしょうし、せめて四半期ベースでは買い付けしておいたほうがよろしかろうと思います。
掛金の拠出限度額はフル活用できると資産形成が一気にはかどる
2つのパターンでiDeCo掛金年単位化について解説してみましたが、一番重要なのは「使い残し掛金枠」を作らないということです。月1.2万円の枠があるが、毎月出せるのは5千円くらいしかないと積み立てていた人、月2.3万円の枠があるが、月1万円ないし1.5万円程度で抑えていた人にとってはボーナス月に増額することで、これを満額活用するチャンスです。
自営業者等の月6.8万円の枠についても同様に「使い切る」ことが大事ですが、自営業者の場合ボーナスは通常ないので、年単位化を利用しにくいのが難点かもしれません。年末にお金の余裕があるので12月になってから「やっぱ増額しておこうか」ということは基本的にできませんので、注意が必要です。業務内容の関係で、毎年資金繰りに余裕がある月が決まっている場合などは、その月にまとめて入金するのはいいでしょう。
たとえば楽天証券の場合、年単位化の利用についてはコールセンターに問い合わせて資料請求をすることを求めています。詳しくはご自身が選択されている運営管理機関に問い合わせてみてください。
(山崎 俊輔)
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