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原油相場が今年の上げ幅を失った元凶はトランプ大統領!?

トウシル / 2018年2月13日 13時7分

原油相場が今年の上げ幅を失った元凶はトランプ大統領!?

原油相場が今年の上げ幅を失った元凶はトランプ大統領!?

原油価格下落要因は、記録的な米国の原油生産量増

 東京市場が建国記念日で休場だった2月11日に、WTI原油先物価格は1バレルあたり60ドルを割り込み、今年、最も安くなりました。

 以下はWTI原油先物価格の推移です。

図1:WTI原油先物価格の推移(期近 日次平均)

単位:バレル/ドル
出所:CMEのデータをもとに筆者作成

 なぜ、先々週から原油価格が下落しているのでしょうか。

 原油価格が下落していることについては、前回のレポート「世界同時株安があぶり出した『原油相場の弱み』とは?」で述べましたが、4つあった原油上昇要因のうち、2つの要因が不安定になっているためだと筆者は考えています。

 そのうちの1つは世界的な株安です。

 原油価格の下落は株安の一因であると同時に、株安もまた原油価格が下落する要因になるという、相関関係があります。

 そして、もう1つの要因は、先週からさまざまなメディアで大きく報じられていたように、米国の原油生産量が日量1,000万バレル超まで増加していることです。このことは、記録的、かつ重要な意味をもつ水準です。米国の原油生産量が日量1,000万バレルに達したことで、過去およそ100年間で最高水準の生産量となった米国の生産シェアが高まり、相対的にサウジアラビアを中心としたOPEC(石油輸出国機構)の発言権が低下する可能性があるからです。

 さらに、減産中のために生産量を増やすことができないサウジとほぼ同等の生産量となったことで(すでに追い越している可能性あり)、サウジが「生産シェアへのこだわり」を見せた場合、原油価格の下落を容認する、減産合意を破るなどの行動に出る可能性もあるのです。

 このように原油市場の足元の下落の背景や今後の動向を考える上で、米国の原油生産量が日量1,000万バレルに達したことは、非常に大きな意味を持っています。

 

米国の原油生産量の増加。トランプ大統領との深い関係

 実はこの米国の原油生産量の増加には、トランプ米大統領のエネルギー政策が深く関わっています。

 図2は、今週、EIA(米国エネルギー省)が公表した、米国の原油生産量の推移とその見通しです。

図2:米国の原油生産量の推移(2018年2月以降はEIAの見通し) 

単位:万バレル/日量
出所: EIAのデータをもとに筆者作成

 今後も米国の原油生産量はさらに増えると見込まれ、2018年12月には日量1,100万バレルを超え、2018年は年間で日量およそ100万バレル増になるとみられています。

 日量100万バレルは、協調減産を実施しているサウジやロシアなど24カ国が目指す合計約180万バレルの減産(原則2016年10月比)の半分以上の量です。米国の生産量が減産体制の脅威となると考えられます。

 この米国の原油生産量の動向(増加・増加見通し)に、トランプ大統領が深く関わっていると、筆者は見ます。トランプ大統領が発令する大統領令などにより、「政策的」に米国の原油生産量が増加していると考えられるからです。

 このトランプ大統領が今まで、米国の原油生産量の増加に関わったと考える根拠は、EIAがシェール主要地区とする米国北部のノースダコタ州を中心とした「バッケン地区」にあります。

 そして今後のトランプ大統領が米国の原油生産量を増加させると考える根拠は、ロッキー山脈南部、ユタ州ソルトレイクシティ―南部にある「ベアーズ・イヤーズ地区」にあると考えています。

 この地区がシェール主要地区に数えられているとおり、バッケン地区で生産される原油はシェール由来がメインだと考えられます。

図3:バッケン地区とベアーズ・イヤーズ地区

出所:EIAの資料などをもとに筆者作成

 

図4:バッケン地区の原油生産量 

単位:百万バレル/日量
出所: EIAのデータをもとに筆者作成

 図4のとおり、バッケン地区の2017年の半ばから生産量の増加が目立っています。これはバッケン地区のあるノースダコタ州からイリノイ州南部の石油集積地であるパトカに向けたパイプライン「ダコタアクセス」が開業したタイミングとほぼ同じです。

 オバマ前政権時、自然保護の観点から、一部の地区でのパイプラインの建設に原住民などが反対し、建設が中断。しかし、トランプ大統領が2017年1月の大統領就任直後、大統領令に署名し、建設の差し止めが解除されました。これを機に、バッケン地区産の原油を重要な消費地である米国東部や輸出の際に利用されるメキシコ湾地区へ、安全かつ容易に輸送することができるようになりました。

 また、開業から半年が経過した2017年12月末には、石油開発が進み、原油生産量が増加するに伴い、現地では雇用を生み、石油関連企業は収入が増え、地元の自治体は税収が増えたと報じられています。

 また、「ベアーズ・イヤーズ地区」については、2017年12月、トランプ大統領が同地区を含むユタ州にある2カ所の国定記念物指定保護地域の範囲を、大幅に縮小すると発表しました。

 EIAの資料によれば、ユタ州南部の同地区は、ニューメキシコ州北西部まで伸びる石油パイプラインの延長線上にあり、かつ、ユタ州北部とコロラド州西部などに広がるシェール主要地区の1つ「ナイオブララ地区」にほど近く、シェールオイルを生産できる可能性がある地区とされています。石油や天然資源が豊富であるとの報道もあります。

 シェールオイルかどうかまでは判断は難しいですが、各種資料や報道などをもとに考えれば、「ベアーズ・イヤーズ地区」の国定公園の縮小は、石油資源を開発できる可能性があり、かつパイプラインなどのインフラ敷設が比較的容易であることが背景になっていると見られます。

 バッケン地区の例から考えれば、いずれ「ベアーズ・イヤーズ地区」は石油の生産地区として、雇用を生み、石油企業や地元自治体を潤す地区になる可能性があります。つまり、この件も、トランプ大統領による米国の原油増加要因になると見られます。

 そして、日量1,000万バレルに達した米国の原油生産量のこれ以上の増加は、原油価格を下落させる要因になると、筆者は考えています。

 

トランプ大統領の「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」の本意

 米国国内の石油開発の促進は、エネルギー供給の安定化、中東依存からの脱却、石油関連企業の収益増加、地元自治体の税収増加、そして雇用増加という幾重ものメリットを生み出します。これらのメリットを生むサイクルの起点が、米国の歴史的な産業である「石油産業」であることに大きな意味があるのです。

 だから、トランプ大統領が掲げる「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」は、その石油産業の発展、再興を支柱としており、トランプ大統領は、特に年配の石油産業で発展した古き良き米国を知る米国民のアイデンティティーに訴えかけていると筆者は考えます。

 このことから、日本の私たちが消費する灯油やガソリンの価格は、トランプ大統領のエネルギー政策が進展し、米国の原油生産量の水準がさらに記録的に増えれば、原油価格が下落し、やがて灯油やガソリン価格は安くなると、筆者は考えています。

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2017年1月25日:クイズで「米国の原油生産の歴史」コモディティ関連キーワード解説(3)

2017年1月27日:大統領令により強まる胎動。米国は再び“強い産油国”へ

2016年11月11日:トランプ氏の一手目はエネルギー政策か!?

(吉田 哲)

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