下落「第2波」に飲まれた日経平均。円高で来期業績に警戒シグナル
トウシル / 2018年3月5日 7時0分
![下落「第2波」に飲まれた日経平均。円高で来期業績に警戒シグナル](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_12401_0-small.jpg)
下落「第2波」に飲まれた日経平均。円高で来期業績に警戒シグナル
日経平均が再び急落
先週の日経平均株価は、1週間で711円下がり、2万1,181円となりました。NYダウが再び大きく下がったことから始まった、世界的な株安「第2波」に飲み込まれました。円高が進んだことも、日経平均が売られる要因となりました。
<日経平均日足:2017年10月2日~2018年3月2日>
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/f/c/-/img_fcad9000af0799a503cb7cb450558bd763476.png)
日経平均は再び、2万1,000円割れを試す展開となりそうです。日経平均日足を見る限り、底入れ感はまったくありません。日経平均で2万1,000円より上では、「上げはゆっくり、下げは急」であることがわかります。下げの第1波、第2波とも、下げのモメンタムが強く、2万1,000円割れを一度トライしそうな情勢と言えます。
日経平均は、長期投資では買い場を迎えていると考えていますが、短期的には下値リスクが払拭されていないことを、意識しておく必要があります。
NYダウ・日経平均を急落させた2つの発言
先週2つの発言が、NYダウ・日経平均を急落させる要因となりました。2月27日のパウエル議長発言と、3月1日のトランプ大統領発言です。
2月27日パウエルFRB議長の下院での議会証言
米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)議長に2月に就任したばかりのパウエル氏がどういう人か、金融市場ではつかみ切れていません。パウエル氏は弁護士で、エコノミスト出身でないからです。
2月27日の下院での議会証言の注目点は、パウエル議長が株式市場にとってフレンドリーか否か、見極めることでした。つまり、株式市場に悪影響を及ぼさないように金融政策をコントロールするハト派か、引き締めを強行するタカ派か、どういうニュアンスで話すかが、注目されていました。
タカともハトとも明確にはわからない無難な発言に終始しましたが、以下2つの発言から、「市場イメージよりタカ派」ととられました。
1つは、冒頭声明で、株価急落が「景気や雇用、物価の見通しに大きな影響をもたらすとはみていない」と述べたこと。もう1つは、質疑応答の中で、「個人的には米景気の見通しがさらに強くなった」と答えたことです。
「株価急落を気にしていない、景気は強い」と言ったこととなり、「今後、利上げのピッチが速くなる」と解釈され、NYダウが再び急落するきっかけとなりました。
パウエル議長は、自らの発言が株価急落を招いたことを意識してか、3月1日の上院での議会証言では、一転して、ハト派色の発言を行いました。質疑応答で「現時点で景気過熱の証拠はない。賃金上昇の加速を示すものはない」と回答したことです。これで、株式市場は、やや落ち着きを取り戻しました。ところが、同じ日に出た、トランプ大統領の次の発言が、さらなるNYダウの急落を招きました。
3月1日トランプ大統領が鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課す方針を表明
トランプ大統領が、再び、保護貿易強化に舵を切り始めました。3月1日、鉄鋼、アルミニウムに追加関税を課す方針を表明したため、米中貿易摩擦が激化する不安が生じ、NYダウはさらに大きく下がりました。日本も、貿易摩擦に巻き込まれる懸念が広がり、3月2日の日経平均がさらに下がる要因となりました。
<NYダウ日足:2017年11月1日~2018年3月2日>
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/1/b/-/img_1bcb9aea693c04c7c7bdf0d13590089e47142.png)
NYダウも、下落第1波に続く、第2波で下げています。ただし、下落の勢いは、日経平均ほど強くはありません。日経平均は、円高により、下げがより大きくなっています。
円高で、来期業績に警戒シグナル
既報の通り、今期(2018年3月期)の企業業績は、きわめて好調です。ところが、来期(2019年3月期)の業績には、黄色信号がともり始めました。円高が進んだことで、増益率が大幅に鈍化する見通しとなったためです。
以下は、1ドル106円を前提とした業績予想です。
<東証一部上場3月期決算、主要841社の連結純利益(前期比)>
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/4/5/-/img_457812562d28eb63b2fd96b0efb1638117646.png)
今期業績(会社予想)は、期初(5月時点)5.9%の増益でしたが、2月末時点では、21.9%増益にまで上方修正されてきました。ただし、これには、一時的要因もかなり含まれています。
米国の大型減税で、繰延税金負債の取り崩しが発生したことが、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車やソフトバンクの今期純利益を、押し上げます。この押し上げ効果は、来期には剥落します。
今期の企業業績は、円安効果で押し上げられている面もありますが、来期、1ドル106円前後で推移すると、円高によるマイナス影響が及びます。
3月2日、黒田日銀総裁が、国会で金融政策の出口に対する質問に対し、「当然ながら(2019年度ころ)、検討し、議論していることは間違いない」と発言したことで、1ドル105円台まで円高が進みました。円高への警戒感はしばらく続きそうです。
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(窪田 真之)
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