米原油相場はやや上昇。雇用統計の影響は?
トウシル / 2018年3月12日 15時0分
米原油相場はやや上昇。雇用統計の影響は?
3月5日~3月9日原油マーケットレビュー
前週のNY原油相場はやや値を上げた。WTI( ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近4月限は一時節目の60ドルを割り込む場面もあったが、概ね60~65ドルの直近レンジ内での値動き。需給ファンダメンタルズ面では弱気な内容が目立つが、為替や株式市場に不透明感が強い。そのためリスク選好かリスク回避かの判断が難しい局面にあり、これが決め手を欠く要因となっている。米雇用統計を受けて上昇したとはいえ、チャート面からは節目の60ドルを明確に下放れると、短期的に投げが集まりやすい点は念頭に入れておきたい。
需給要因は弱めの内容が散見された。リビア最大の油田であるシャララ油田とザウィヤ製油所とを結ぶパイプラインが4日に閉鎖し、これにより同油田の原油生産が停止した。同国の足元の産油量である日量110万バレルほどのうち、同30万バレル近くが同油田を占めている。これを受けて週明けは買いが集まる場面もあった。しかし、週後半には、同油田のほかに前月23日から操業を停止していたアルフィール油田が操業を再開するとの報が入った。同油田の産油量は同7万バレル程度だが、生産を再開することで供給不安は後退した。
米国の需給要因も引き続き弱めの内容が示された。EIA(米エネルギー情報局)が発表した週間石油統計で、原油在庫は市場予想ほどではないにせよ増加した。何よりも原油生産量が過去最高を更新したことは弱材料。ガソリン在庫は減少したものの前年同期を上回る水準にあり、リファイナリーの定修等を勘案すると、原油需要が抑制されるとの見方を誘うに十分な内容。また、3月21日にSPR(戦略石油備蓄)を700万バレル売却する入札が行われる予定であり、5月の受渡時には市場への原油供給が増えることも決定している。市場に織り込み済みとはいえ、シェールオイル増産への警戒は根強くあり、今後も米国の供給増加が原油相場の上値を抑制することになるだろう。
これら需給要因は総じてベアな内容が示された。ただし、為替や株式、債券市場の不安定さが増しているため、需給要因を背景とした売りは続かず、ポジション整理中心の動きとなった。鉄鋼およびアルミニウムの関税引き上げにより貿易戦争が引き起こされるのではと懸念が浮上、歯止め役であったコーン国家経済会議委員長の辞意表明を受け、政権の保守主義的な色彩が濃くなるとの見方が一時強まった。米国の通商政策への影響はその後和らいだが、先行きの見通し判断が難しく、投資家心理は冷えたり改善したりの繰り返しに。週末までは、ユーロ/ドルは往って来い、ダウ平均も2万4,000~5,000ドルで方向感を欠き、米10年債利回りも2.87%ほどで小動き。目立った方向性は出ず、様子見気分が強い商状となったため、原油相場も決め手を欠いた。市場は週末発表の2月の米雇用統計待ちに。
その雇用統計で、NFP(非農業部門雇用者数)は市場予想以上に増加、これを受けて米国の先行き景気への期待感が広がり、原油需要の伸びを見込んだ買いが集まった。また、株式市場もこの雇用統計の内容を好感、ダウ平均は450ドル近く上昇、リスク選好ムードが強まり、原油相場は押し上げられた。ただし、同時に債券利回りが上昇しており、週明け以降も楽観ムードが続くのか注目したい。
【今週の予想】
- WTI 中立 60.00-65.00ドル
- BRENT 中立 63.00-68.00ドル
雇用統計ニュース
米雇用統計の発表を受けて、その内容によって市場の反応は異なる。雇用改善が見られると米国経済の先行き楽観から原油需要の伸長が期待され、原油買いにつながる場合もあるが、一方でドル買いが進むと原油売りにつながってしまう。これに債券利回りなどが絡むと、複雑な関係となり、その時の市場のムード次第となってしまうこともあり、足元の市場環境次第で捉え方が変化してしまう。2017年以降の雇用統計(非農業部門雇用者数)の変化と株価および原油価格の関係をグラフ化してみたところ、やはり発表時点での市場環境、外為や債券市場との関係などにより、明確な傾向を推し量ることは難しいことが窺える。
雇用統計が週末に発表されるため、ポジション整理絡みの動きが出やすいことも影響しているだろう。週を明けてから改めて雇用統計を材料視し、発表日とは異なる値動きとなるケースもある。雇用統計から原油市場の動向を予測するのは難しいが、株価と原油価格は概ね同じような反応を示す傾向が散見されている点に注目したい。
雇用統計発表日の前日の終値(ダウ平均およびWTI期近)を基準とし、週末の雇用統計の発表後の翌週末の終値(同様)との変動率を調べると、株価がプラス反応した際には原油価格も総じてプラスに、株価がマイナス反応した場合はマイナス反応となる傾向が見て取れる。今週の原油相場の方向性を握るのは株価変動と考えても良いかもしれない。つまり、需給要因のみならず、マネーの流れを確認する必要がある。
米雇用統計と株価、原油との関係
国内石油化学関連ニュース
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(CREEX LLC.)
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