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「優待タダ取り」はできないが、低コスト・低リスクで優待を得ることは可能

トウシル / 2018年3月14日 6時0分

「優待タダ取り」はできないが、低コスト・低リスクで優待を得ることは可能

「優待タダ取り」はできないが、低コスト・低リスクで優待を得ることは可能

 今日は、読者から質問の多い「優待タダ取り」について解説します。ネットで「優待タダ取り」と紹介されることが多い手法ですが、正確に言うと、「株主優待を、低コスト・低リスクで得る方法」です。取引手数料・貸株料などのコストがかかります。

 

株主優待制度とは

 日本には、世界でも珍しい「株主優待」という制度があります。上場企業が株主に感謝して贈り物をする制度です。

 株主には本来、配当金を支払うことで利益還元するのが筋です。ところが、日本の個人株主の一部に、お金(配当金)をもらう以上に、贈り物(株主優待)を喜ぶ傾向があることから、個人株主を増やしたい上場企業は、積極的に優待を実施しています。魅力的な制度なので、積極的に活用したら良いと思います。

 

「つなぎ売り」を利用して、株価下落リスクを回避しながら、株主優待を獲得する方法

優待は欲しいが、株価が下落するリスクを負いたくない場合、「つなぎ売り」を使えばよい

 株主優待に魅力を感じて、株式投資を検討する方が多いと聞いています。ただし、株式投資である以上、投資した後、株価が下落するリスクを伴います。

 優待は欲しいけど、株価変動のリスクは負いたくないとき、活用したらいいのが、「つなぎ売り」【注】です。信用取引の一種ですので、信用口座を開設しないと「つなぎ売り」はできません。

【注】「つなぎ売り」と「空売り(からうり)」の違いについて

 株を借りてきて売ることを、「信用売り」といいます。「つなぎ売り」も「空売り」も、「信用売り」の一種です。保有しない株を借りてきて売ることを、「空売り」と言います。空売りした株が値下がりした後に、買い戻せば、利益が得られます(値上がりしてから買い戻せば損失が発生)。

 一方、株を持っているが、持っている株を売らず、別途借りてきた株を売ることを「つなぎ売り」と言います。株を保有したまま、株が値下がりするリスクをヘッジする効果があります。この状態で、優待をもらう権利が確定する「権利付き最終日」を超せば、OK。権利が確定したら、保有している株を、借りてきた株の返済に充てれば、取引が完結します。保有株を、返済に充てることを「現渡(げんわたし)」と言います。

 

つなぎ売りのやり方:現物買いと信用売りを同じ株数ずつ行い、優待の権利を得たら、現渡で決済する

 それでは、つなぎ売りのやり方を具体的にご説明します。まず、魅力的な優待を提供している銘柄について、株式現物の「買い」と、信用取引の「売り」を、同じ株数ずつ、同じ価格で行います。買ってから売っても、売ってから買っても、どちらでも問題ありません。同じ価格で行うのが理想ですが、同じ価格で行えない場合もあります。

「買い」と「信用売り」を同じ株数(たとえば100株)ずつ同じ価格(たとえば1,000円)で行えば、株価が上がっても下がっても、損も得もしません。

 株価が1,000円から900円まで下落すると、買った株に10,000円(値下がり100円×100株)の含み損が発生しますが、同時に、信用で売った100株には10,000円の含み益が発生します。合わせると、損も得もしません(売買手数料は考慮しないベース)。

 逆に、株価が1,000円から1,100円まで上昇すると、買った株に10,000円の含み益が発生しますが、同時に、信用で売った株に10,000円の含み損が発生するので、合わせると、損も得もしません。

「優待は欲しいが、株価下落リスクは負いたくない」ときに、有効な方法です。優待の権利を得たら、速やかに、現渡で決済してください。それで、完結です。

 

つなぎ売りを使った優待取りにかかるコストが、優待で得られるメリットよりも、大きくならないように注意。制度信用でなく一般信用を使うのが望ましい

 最初に、お伝えしたように、「優待タダ取り」はできません。売買手数料や、貸株料などのコストがかかります。優待取りにかかるコストが、優待で得られるメリットより大きくならないように、注意する必要があります。

 制度信用(取引所が提供している信用売り)を使うと、逆日歩(ぎゃくひぶ)というコストが発生して、優待メリットを上回るコストが請求される場合もあります。逆日歩が発生しない、一般信用・短期取引を利用するほうが、良いと思います。

 それでは、つなぎ売りで、優待を取るのにかかるコストを、優待が魅力の銘柄「A社」を例にとって説明します。具体例な金額を示して説明しますが、前提条件が変われば数字が変わることを理解してください。

 

<つなぎ売りを使った優待取りのメリットと、かかるコストの比較>

◆前提条件

  • 3月16日(金)にA社100株を5,000円で買い(約定金額50万円)。
  • 同じ日に、A社株100株を5,000円で信用売り(約定金額50万円)。
  • 優待を得る権利が確定する3月28日(水)に、現渡で決済。
  • 100株保有すると、3月末基準で5,000円相当の優待品を得る権利が確定。
  • 100株保有すると、3月末基準で1%(5,000円)の期末配当金を得る権利が確定。
  • 貸株料・配当金調整額は、一般信用の料率で計算(制度信用では異なる数値となる)。
 

 上記の例では、必ずかかるコストは1,105円ですから、優待メリットが5,000円相当ならば、十分にメリットがあります。

 ただし、これ以外にも、コストがかかる場合があります。大きなコストとなる可能性があるのは、「逆日歩(ぎゃくひぶ)」です。制度信用を使う場合に、かかる可能性があります。人気の優待銘柄で、優待メリットをはるかに上回る逆日歩を請求されることもあるので、注意を要します。事前には金額がわからず、事後的に決まった金額を請求されます。

 楽天証券が、「優待取りのつなぎ売り」などのために用意している「一般信用・短期」を使えば、逆日歩は発生しません。制度信用ではなく、一般信用でつなぎ売りしたほうが、リスクが小さいと言えます。

 もう1つ、かかるコストは、配当金相当額(支払)と、配当金(受取)の差額です。つなぎ売りしたまま、配当金を得る権利が確定すると、信用売りしている100株に対して、配当金相当額(ここでは5,000円。一般信用取引(売建)の場合、配当金の100%)を、支払う必要があります。

 一方、買って保有している100株では、配当金(税前5,000円)を得る権利が確定します。ただし、実際に受け取るのは、源泉税(1,015円)を差し引いた金額(3,985円)です(源泉分離課税を選択の場合)。配当金相当額(支払)と配当金(受取)の差額1,015円はコストとなる可能性があります。

 損益通算を使えるように手続きしていれば、この1,015円は後から還付されますが、そうでない場合は、そのままコストとなります(詳しい説明は、割愛)。

 なお、信用取引にかかるコストについては、以下も参照ください。

信用取引にかかるコスト
 

 明日のレポートで、一般信用・短期を使った、つなぎ売りの手続きについて、さらに詳しく説明します。

 

 

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(窪田 真之)

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