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G20と日欧EPA

トウシル / 2017年7月19日 0時0分

G20と日欧EPA

G20と日欧EPA

7月8日、ドイツのハンブルクで開催されたG20首脳会議は、首脳宣言を採択して閉幕しました。これまで日米欧先進国と新興国の利害調整が中心だった構図が大きく変わる結果となりました。自由貿易推進と地球温暖化対策について、米国第一主義を唱えるトランプ大統領の「米国」vs「G19」の図式が明確に世界に伝わる結果となりました。首脳宣言では、

  • 貿易については、「保護主義と闘う」と明記されたが、トランプ政権に配慮し、不公正な貿易慣行に対し対抗措置を取ることを認めた。
  • 地球温暖化対策については、「パリ協定」の米国の離脱に「留意する」と明記する一方で、米国以外の国は「パリ協定は後戻りできない」と明記され、米国との溝が鮮明となった。

G20での米国の主張は、これまでにトランプ大統領が発していた内容であることから、今すぐ為替相場に影響するということはないですが、国際会議の枠組みの中ではっきりと対立構造が浮き彫りになったことから、今後の各国の経済政策に影響を与え、長期的には為替相場にも影響が出て来るかもしれません。例えば、「不公正な貿易慣行」の定義は曖昧なため、対抗措置として安易に貿易障壁や報復関税を設けてくることも考えられます。ドイツのハンブルクでは日米首脳会談も行われました。会談ではトランプ大統領から「日米貿易赤字と市場アクセス」について言及があったと伝えられています。トランプ大統領は大統領就任前から対日貿易赤字を問題視していましたが、大統領就任後の安倍首相との会談で対日貿易赤字に言及したのは初めてのようです。米国からの対日圧力が再燃してくることもシナリオとして考えておいた方がよさそうです。G20についての基本情報は下表のようになります。きっちりと押さえておくと今後役に立ちます。

G20についての基本情報

日欧EPA

G20開催前の機会を利用して、日EU首脳会議が開催され、7月6日、日本と欧州連合(EU)による経済連携協定(EPA)の大枠が合意されました。ワインやチーズの関税についてなかなかまとまらず、難航した様子はテレビのニュースなどで見られていたと思います。それがG20首脳会議直前に大枠合意に達したことの意味は大きいようです。保護主義に対して戦い、自由貿易推進という明確なメッセージを米国や中国をはじめ、全世界に示したことになります。

トランプ大統領は米国第一主義を唱え、保護貿易色を強く出してきていますが、米産業界や米農業団体は競争力が低下することを懸念しています。日欧EPA大枠合意に達した6日、米豚肉生産者協議会(NPPC)は待ち構えたように「日本という最大の市場を失うのは耐えられない。日本との自由貿易協定(FTA)を求める」と緊急声明を出しました。日本での輸入豚肉のシェアは2008年の41%から低下してきているため、更にシェアが低下する事態に対して、トランプ政権への不満が高まっています。保護主義色が更に強まると、米産業界からの突き上げは強まり、それよりも米競争力が弱まり、米経済力が地盤沈下しかねない事態に陥るかもしれません。もし、そういう事態に陥れば長期的には米株下落、米金利低下、ドル安の動きとなるシナリオです。

日本とEUとのGDP合計は世界の3割を占める大きさとなります。最大の貿易相手国の米国はTPPから離脱する方向であるため、経済規模が大きいEUの市場を取り込める意味は大きいと思われます。今後、活発な経済取引が期待される日欧EPAについての基本情報もきっちり押さえておく必要があります(下表参照)。

関税撤廃によって貿易取引が活発になれば、為替取引も活発となります。しかし、今回の合意は「大枠合意」で、細かい協定分の内容はこれから詰めることや、EU加盟28カ国の承認手続きが必要なことから、協定の発効時期は2019年以降となるため、今すぐユーロ円相場に影響してくることはなさそうです。ワインの関税即時撤廃も2019年以降となります(価格の15%か、1リットルあたり125円。1,000円のボトルワインであれば90円ほど安くなります)。ワインの輸入増加はユーロ円の円安要因となります。また、期待の自動車なども、自動車部品は即時撤廃ですが、乗用車は8年目に撤廃(10%)ということなので、早くて2025年以降となります。日本からの自動車の輸出増加はユーロ円の円高要因となりますが、まだまだ先の話のようです。

しかし、EPAの大枠合意に達したことから、発効を待たずに商談やプロジェクトの推進、人の行き来が活発になることが予想され、その進展・拡大とともに為替相場にも徐々に影響してくることが予想されます。G20の今回の首脳宣言と日欧EPAの大枠合意、方向性の異なる象徴的な出来事が7月上旬に起こりました。焦った米国が日本とのFTA交渉を求めてくることも予想されます。その際には対日貿易赤字についてどのような圧力を加えてくるのか注目しておく必要があります。G20と日欧EPA、これらの出来事をよく理解することは、今後の相場シナリオを考える上で外すことは出来ません。

G20についての基本情報

(ハッサク)

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