ボルカールールの緩和でバブルが再膨張。有効な逆張り手法は?
トウシル / 2018年4月19日 20時0分
ボルカールールの緩和でバブルが再膨張。有効な逆張り手法は?
貿易戦争は息の長いマーケットテーマ
トランプの米国第一主義は、米国が覇権国であることによるコストを削減し、覇権国であることによってそのメリットを享受してきたワシントンD.C.(軍産やウォール街)から国民に政治を取り戻すことにある。その是非はともかく、トランプの姿勢は大統領就任以降まったく変わっていない。トランプ発言はころころ変わって一貫性がないようにみえるが、それが脅したりすかしたりするトランプのビジネスのやり方だ。シリア攻撃もトランプが軍産複合体の連中より過激な発言をすることで、本来、好戦的である軍産複合体側のマティス国防長官らが、「ロシアと戦争するのはまずい」と慎重論を唱えている有様である。それをわかっていて、トランプはブラフをかけている。トランプは米国からロシアに人を大量に送り込んで、裏では関係修復に動いている。
シリア攻撃や貿易戦争の渦中で日米首脳会談が行われたが、マーケットは波乱なく通過している。それはトランプのビジネスや外交のメソッドを徐々にマーケットが理解してきたからだろう。しかし、こうした予定調和がいつまでも続くとは限らない。トランプは日米首脳会談で米国の貿易赤字の問題に触れ、「我々はとてつもない対日貿易赤字を抱えている。できれば均衡を達成したい」と強調した。トランプは本気で貿易赤字を減らそうと考えているのである。貿易戦争はトランプが大統領でいる限り、息の長いマーケットテーマとして居座り続けるだろう。
米国の貿易赤字とトランプの政策転換
"ドクター・ドゥーム(陰鬱博士)"マーク・ファーバーの相場観
"ドクター・ドゥーム(陰鬱博士)"と呼ばれる著名ファンドマネージャーのマーク・ファーバーは、最新の月刊レポートTHE GLOOM BOOM & DOOMで、
【これまでレポートで論じてきた多くの要因から、2018 年1月26 日はS&P 500株価指数だけでなく、世界中ほとんどの株式市場にとって大天井となる可能性が高いと私は考えている。
S&P500(日足)
NYダウ(週足)と波動カウント
ところが、モルガン・スタンレーの2月報告にあるように、個人投資家は「株式から距離を置けずにいる」ようだ。米個人投資家協会の株式配分指数が2000年以来の最高水準である72%にまで上昇した。ドイツ銀行の消費者心理データ分析でも、個人投資家は現在の環境を「市場に投資する絶好の機会」とみているという。
米国の個人投資家が株式に72%の資産配分をしている…。この高い評価を考えれば、私は自分の株式ポジションを減らしたくなる。実際のところ現在の環境は、長期的な観点から市場に投資する最悪のタイミングにみえる。
S&P500 は今年1 月26 日に2872で天井を付けてから、数日で急落に転じ、2月9日に2532ポイントで底入れした(11.92%減)。以来、戻してはいるものの、まだ1月下旬の水準を下回っている。
しかも、米国株指数でかなりの比重を占めているFAANG 株(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグル)の勢いが弱まってきたようにみえる。
フェイスブック(日足)
重要なのは、もしFBの下げが残りのFAANG 株(AMZN、AAPL、NFLX、GOOGL)に先行している(のであれば)市場に高値更新の可能性がほとんど残っていないことだ。ただし、FB がかつて2016 年後半に、上昇局面の途中で大きな修正が入った点に注意してほしい。最近の株価崩壊は、まだ確定的なものではない。
アマゾン(日足)
S&P500 も2015 年末から2016 年2月安値(1810)まで、さらに大きな修正(21%)をみせている。そして、その2016 年2月安値から2015 年11月に付けた高値を明確に更新するのに2016年7月までかかった。つまり、金融引き締め環境から、その可能性は高いとはいえ、株価が2018年1月26日に大天井を付けたと結論づけるのも時期尚早なのだ。】(マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート2018年4月号『反「中国式非自由主義国」論者の明らかな誤り』・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載)
との相場観述べているが、ファーバーにしては煮え切らない文章に思える。
筆者はブログやレポート、セミナー、ラジオ等で「極端なことを言えば、米国株はビッグ5という5銘柄の成績である。今後、米国株が下がるか、持ち直すかを決めるのは、ビッグ5(アップル・アマゾン・グーグル・フェイスブック・マイクロソフト)の5銘柄の動き次第だろう」と述べてきたが、現在、ビッグ5の株価は急落後のリバウンドの過程にある。
ボルカールールの緩和でバブルが再膨張
こうしたゴルディロックス(適温相場)的な動きがまだ続いているのは、バブルの再膨張というカネ余り相場が復活しているからだ。4月18日に 米モルガン・スタンレーの第1・四半期決算が発表されたが、トレーディング業務の業績がよく、利益が過去最高となっている。
トランプ政権になって、米金融当局は中小の金融機関をボルカールールの適用外とし、高リスクやハイレバレッジの取引を金融機関が行なっても咎めることはなくなった。大手金融機関もボルカールールが事実上骨抜きとなったことで、高リスクのハイイールド債やリートへの投資を増やし、その結果、信用力の低いジャンク債の発行も増えている。企業も債券を発行(借金)して自社株買いを増やすなど、米株式相場のけん引役になっている。
米国株市場の“炭鉱のカナリア” と呼ばれるジャンク債ETFの「 iShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETF (ティッカー:HYG)の動きを見れば、依然、カネ余りのイールドハンティング相場が続いていることがわかるだろう。世界最大のヘッジファンドであるレイ・ダリオのブリッジウォーターアソシエイツも、iShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETFをまだ保有している。
ジャンク債ETF iShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETF (ティッカー:HYG)
トランプは株価にネガティブな貿易戦争を仕掛ける代わりにボルカールールを緩和してバブルの延命を図ろうとしたのだろう。バブルがさらに膨張するかどうかは、米金利の動き次第であろう。年初のように米長期金利が急騰すれば、株価は急落する可能性が高まる。
米国のバブルが延命する限り、日本株も堅調に推移するだろう。米著名投資家ラリー・ウィリアムズは、「いずれにせよ円高になる」と考えて、ドル/円の戻り売りを考えているようだが、一方で、日経平均はもう一回上げるとみているようだ。「為替が円高になっても日経平均は上がるのか?」という疑問はあるが、彼は年央あたりまで日経平均に強気のようである。
CME 日本円通貨先物(日足)
日経平均(日足)
動きの乏しい為替市場とATRチャネルトレードという逆張り手法
5月2日に発売される「DVD 石原順のボラティリティトレードシグナル」にMT4のテンプレートとして、ATRチャネルトレードモデルという逆張りモデル(売買シグナル付きMT4インジケーター)を搭載している。
ATR(アベレージトゥルーレンジ)はTR(窓開けを含めた1日の最大値幅)の平均である。下のチャートは、過去●日間のATRを過去●日間の加重移動平均線にプロットしたもので、2本のATRのバンド幅はATRの1.6倍、3.2倍である。
ATRチャネルは、筆者が相場の天井と底の発見、すなわち、相場の転換点をとらえるのに用いている道具(ツール)で、相場がATRバンドの3.2倍の外にある時、ADX(14)とSTD(26)の両方がピークアウトすると、相場が反転する可能性が高いというロジックでシグナルを点灯させている。
株式市場に比べ値動きが乏しくなっている為替市場だが、筆者はこのATRチャネルトレードという売買手法を使って、4時間足以下のタイムフレームで通貨の売買を頻繁に行っている。
ATRチャネルの売買シグナルの見方 サンプル:ドル/円(30分足)
ドル/円(1時間足) ATRチャネルトレードモデル
ドル/円(30分足) ATRチャネルトレードモデル
豪ドル/円(1時間足) ATRチャネルトレードモデル
豪ドル/円(30分足) ATRチャネルトレードモデル
カナダドル/円(1時間足) ATRチャネルトレードモデル
スイス/円(1時間足) ATRチャネルトレードモデル
スイス/円(30分足) ATRチャネルトレードモデル
逆張り取引で成功するには、
- トレンドが発生しにくい銘柄(通貨ペア)を取引すること
- 標準偏差ボラティリティやADXというテクニカル指標を使い、方法性のあるトレンド相場と方向性のないランダム相場を認識する
- システマティックな損切り注文を置いておく
という3点が重要である。
この世に絶対にもうかる売買手法など存在しない。だが、ゲームの勝者になるためには、エッジ(優位性)というものを見つける必要がある。相場は確率に賭けるゲームである。
(石原 順)
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