海外からみた日本経済、イケてる?イケてない?(2):外国人投資家と日本企業の強み
トウシル / 2018年7月20日 8時10分
![海外からみた日本経済、イケてる?イケてない?(2):外国人投資家と日本企業の強み](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_13461_0-small.png)
海外からみた日本経済、イケてる?イケてない?(2):外国人投資家と日本企業の強み
少子高齢化が進む日本。デフレが続く日本経済。「日本の将来はなんだか暗そうなのに、海外投資家は日本株を買っている。それはなぜ?」 トウシルのキカが抱いた素朴な疑問に、日本在住歴30年のエコノミスト、イェスパー・コールさんが答えてくれました。(以下敬称略)
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[Q6] 海外投資家が日本株を買っているのはなぜですか?
A. 日本という国は低成長でも、日本企業は成長が期待できるからです。
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キカ:2017年の東証1部の売買高を見て驚きました! 海外投資家の割合が6割を超えていたんです。なぜ日本株を買っているのですか?
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イェスパー:それは面白い観点ですね。日本に住んでいると、日本経済に対する悲観論が目立ちます。少子高齢化社会が到来し、今後の経済成長率は1%を維持するのがやっとではないかとか。それに比べて米国は3%、インドや中国は8%を超える成長が期待できるというようにね。日本経済に対する議論は大切ですが、投資家は国家に投資をするわけではなく、企業に投資をするのです。日本の皆さんは日本企業に対してはプライドを持っているのではないですか?
キカ:はい、多くの日本企業は世界中で活躍しています。
イェスパー:そうでしょう。日本の投資家だって、赤ちょうちんのお店で一杯やりながら日本経済について議論することはあるでしょうが、そこで悲観的な結論になったとしても個別銘柄に投資することは別でしょ。海外投資家も日本国ではなく日本企業の競争力や株主還元の姿勢などを見て投資をしているのです。
[Q7] 日本企業は世界で戦って勝てるのですか?
A. 自動車や素材、造船……勝てる産業はたくさんありますよ。
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キカ:世界で活躍する日本企業の中でも、特に強いセクターは何ですか?
イェスパー:それはまず自動車産業です。ハリウッドスターのように注目を浴びているのはアメリカのテスラ(電気自動車の新興メーカー)ですが、ボリュームベースでは日本やドイツのメーカーです。もうひとつは素材産業です。
キカ:素材ですか……。
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イェスパー:そんなにがっかりしないで。確かに素材はセクシーではないですね。東レのカーボン素材や信越化学の化学製品は世界一のシェアを占めています。それに韓国や中国に押されていた造船業の復活にも注目しています。でも、素材や造船はテーマとして面白くないでしょ。Googleやアップル、中国の支付宝(アリペイ)の話はセクシーですが、ものつくりの世界では日本企業は強いです。
キカ:やはりもの作りなんですね。
イェスパー:非製造業も世界に進出していますよ。サービス業では、イオンやローソンなど国内でも元気のある企業の進出が目立っています。
[Q8] 国内ではどんな分野が伸びそうですか?
A. インバウンド消費による8兆円市場は魅力的ですね。
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キカ:国内の市場で活躍する企業は、どんな分野が有望ですか。
イェスパー:まずインバウンド関連ですね。日本政府は訪日外国人旅行消費額を2020年までに8兆円(※2)と設定しています。すごく大きな市場でしょう。それに日本人は理解していないかも知れないけれど、来日した外国人は「この国の素晴らしさ」に感激します。投資家であれば、日本が好きになって調べていくうちに、日本の中小企業、地方産業のすごさを目に知ることでしょう。実際に、海外の個人投資家が中小企業に投資をする動きもあるのですよ。さらに賃金が上がって労働者の収入が増えているので、消費者金融や住宅の分野も有望ですね。
※2 2017年から2020年までの「観光立国推進基本計画」による。
[Q9] 日本の経営者には何を求めていますか?
A. ぬるま湯から出て戦ってください。
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キカ:日本経済の景気回復が進む中で、経営者は何をすべきですか。
イェスパー:まず、自社の競争基盤を明確にして、「best in your business」。あなたの産業の中で1位を目指して欲しい。「ぬるま湯」に漬かっている経営者はそういう気持ちを持ってください。次に社員のみなさんにお願いしたい。エスカレーター式に係長、課長、部長というように昇進していくことを喜ぶのではなく、ミドルマネジメント(中間管理職)になったら何をやりたいのか、明確な目標を持ってください。
[Q10] 日本企業が世界で勝つためには何が必要ですか?
A. 守りを固めるのではなく、攻める姿勢です。
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キカ:日本企業が世界で勝つためには、何が一番大事ですか?
イェスパー:攻めること。世界を相手にしたビジネスでは攻める会社が勝ち、守りに徹している会社は負けてしまいます。
キカ:日本は攻めることが苦手かも。
イェスパー:6月からワールドカップサッカーがロシアで始まります。母国のドイツチームが1位になると思います。日本チームはどうでしょう?
キカ:頑張って欲しいけれど、1位はどうかな。でもなぜ、ドイツが勝つと断言できるのですか。
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イェスパー:それは攻撃的なスタイルのチームだからです。日本チームがなかなか勝てないのは守りを重視しているからです。同じようにビジネスも攻撃型でないと世界を相手にした競争には勝てません。
キカ:なんだかやる気が出てきました。最後にこれから日本経済を担う若い人たちにメッセージをください。
イェスパー:「Believe in yourself」。自分を信じてください。日本のパワーを信じてください。日本の若者は素晴らしい力を持っていますよ。
< 取材後期 >
近ごろ「世界からみた日本のココがすごい!」という視点のTV番組も多いですが、日本人ってなかなか自分で自分のことをほめるのが苦手なところがありますよね。今回イェスパーさんから、日本の経済イケてるよ! と言ってもらえてすごくうれしかったです。金融銘柄を「セクシー」と表現する感性もなんとも海外スタイルですね。イェスパーさんのパワフルなトークで、明るい気持ちになりました。ありがとうございました(キカ)
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◎今回答えてくれたのは?
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イェスパー・コール
1961年ドイツ生まれ。80年、レスター・B・ピアソン・カレッジ・オブ・ザ・パシフィック卒。86年ジョン・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で国際経済学修士を取得。
京都大学、東京大学の研究員を経て89年、S.G.ウォルバーグ証券会社日本経済担当チーフ・エコノミストに就任。メリルリンチのチーフジャパンアナリスト、J.P.モルガン株式調査部長などを歴任し2015年、世界で運用資産残高630億ドルを超えるウィズダムツリー・ジャパン最高経営責任者(CEO)となる。政府の委員会メンバーとしても活躍。
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イェスパー・コール 連載「エコノミストが見た、投資のヒント」
(トウシル編集チーム)
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