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円高から円安に、トレンド変わった?ドル円を動かす3大要素とは

トウシル / 2018年4月25日 7時45分

円高から円安に、トレンド変わった?ドル円を動かす3大要素とは

円高から円安に、トレンド変わった?ドル円を動かす3大要素とは

円安が進む、4つの理由

 4月25日の東京市場で、一時1ドル108.92円まで円安が進みました。3月23日に一時1ドル104.63円をつけたのが円高のピークで、そこから円安に転じています。

ドル円為替レート推移:2017年12月1日―2018年4月23日

注:楽天証券経済研究所が作成

 円高から円安にトレンドが変わったのに、4つの理由があります。

  1. 米長期金利が再び3%に迫る→日米金利差拡大で、ドル買い需要が増える
  2. 貿易摩擦の懸念がやや後退→米国から円安批判が出る可能性がやや低下
  3. 世界的な株安が一巡→株安局面で安全資産として買われた「円」が株反発で売られる
  4. 東アジアの地政学リスクがやや低下→北朝鮮が核実験・ICBM(大陸間弾道ミサイル)実験をやめると表明

 

ドル円を動かす3大要素、一番重要なのは「日米金利差」

 為替を動かす要因は無数にありますが、今ホットな話題で重要度の高いものに絞ると、3つです。

  1. 日米金利差
    ドル金利が上昇し、日米金利差が拡大すると、円安(ドル高)になります。
    ドル金利が低下し、日米金利差が縮小すると、円高(ドル安)になります。
  2. 政治圧力
    米国政府筋から、円安を非難する発言が増えると、円高(ドル安)が進みます。
    米国政府が、円安を容認している間は、円安(ドル高)が進みやすくなります。
  3. 政治不安
    世界に政治不安が広がると、安全資産として円が買われ、円高(ドル安)となります。
    政治不安が解消し、政治が安定すると、円安(ドル高)となります。

 中でも一番重要なのが、日米金利差です。米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は、利上げを続け、「金利の正常化」を目指しています。一方、日銀は、大規模金融緩和を長期的に継続する方針です。日米中央銀行の言っていることを、言葉通りに受けとめれば、ドル金利はさらに上がり、日米金利差が開き、円安(ドル高)が進むことになります。

 

日米金利差(2年金利)で動く、ドル円為替レート

 最近10年間のドル円の動きは、日米2年金利の差で、ほぼ説明できます。

日米の2年金利(残存2年の国債利回り)と日米金利差:2008年1月~18年4月23日

注:楽天証券経済研究所が作成

 次に、ドル円の動きと日米金利差を比較します。

ドル円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2018年4月23日

注:楽天証券経済研究所が作成

 

 過去10年を見ると、おおむね日米2年金利差と、ドル円は連動していることがわかります。ただ、厳密にいうと、以下のように細かい相違があります。

  1. 2008~11年
    日米金利差の縮小にしたがって、円高(ドル安)が進みました。
  2. 2012~15年
    日米金利差が少ししか拡大していないのに、大幅な円安が進みました。2年金利の差では説明できない程、円安の進行が大きかったということです。
  3. 2016~17年
    日米金利差が拡大する中で、円高が進みました。行き過ぎた円安に修正が起こったと見ることもできます。
  4. 2018年
    金利差から見ると、やや円高が行き過ぎとなりました。4月には、円安に転じました。

 

近年、政治が為替を動かす重要な要因となりつつある

 ドル円は、日米金利差だけで動いているわけではありません。アベノミクス開始以来、ドル円は政治に振り回されるようになっています。

 米国が円安を容認している間は、円安が進みやすい一方、米国から円安や日本の対米貿易黒字に批判が出ると、円高が進みやすくなります。ごく大雑把にドル円に与えた政治要因を振り返ると、以下の通りです。

ドル円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2018年4月23日

(注:楽天証券経済研究所が作成)
  1. 2008~11年
    日米金利差の縮小にしたがって、円高(ドル安)が進みました。
  2. 2012~15年
    米国が円安を容認していたので、日米金利差では説明できないほど、大幅な円安が進みました。
  3. 2016~17年
    2016年には、米大統領選キャンペーンで共和党候補だったドナルド・トランプ氏(現大統領)と、民主党候補だったヒラリー・クリントン氏が、ともに円安を批判したことをきっかけに、円高が進みました。トランプ大統領が、日本の対米黒字を問題視していることも、潜在的な円高圧力となっています。朝鮮半島有事リスクの高まりも、円高要因となりました。
  4. 2018年
    4月には、貿易戦争の懸念がやや後退、東アジアの地政学リスクもやや後退する中、円安に転じました。

 

為替は今後、円高・円安どちらへ進むか

 米FRBが利上げを続け、日米金利差がさらに拡大するならば、円安が進むと考えられます。ただし、トランプ大統領が「円安批判」を始めると、円高圧力がかかることに注意が必要です。また、東アジアの地政学リスクが高まるときや、世界的に株が下がる局面でも、円高圧力が働きやすいと言えます。

 結論のない話で恐縮ですが、目先は、円安が進みやすくなりますが、これで本格的な円安トレンドが始まったとは、いえないと思います。

 

30年前に聞いた敏腕ディーラーの言葉

「適正水準?そんなの誰にもわからないよ。適正水準よりプラスマイナス20円以上離れて動くのがフツーだから」。

 30年前に聞いたあの言葉を、私は今でもよく覚えています。30年前、私はニューヨークで日本株ファンドマネージャーになるための研修を受けていました。研修の一環で、現地で腕利きの為替ディーラーに話を聞いたのですが、その時の私の質問「ドル円レートの適正水準はいくらですか?」に対する答えがそれだったのです。

 まだ相場と取り組んだ経験のなかった私に、とても印象に残る言葉でした。その時、聞いた言葉が、その後、私が為替を考える基本になりました。

 日米金利差などによって、ドル円為替レートの適正水準を推定することはできます。2年金利差から考えると、今は、1ドル110円前後が適正と考えています。ただし、実際の為替レートは、適正水準に向かって動くとは限りません。さまざまな材料に反応して、円安にも円高にもどちらにも動く可能性があります。

 

 

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(窪田 真之)

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