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中東不安とナスダック反発のどちらに軍配?

トウシル / 2018年5月11日 7時44分

中東不安とナスダック反発のどちらに軍配?

中東不安とナスダック反発のどちらに軍配?

中東の地政学不安と原油高は株式の重し?

 日米株式は5月入りしても底堅い動きを維持しています。四半期来(4月以降)の騰落率で比較すると、米ダウ平均が+1.8%、世界株式(MSCI)指数は+2.1%となっており、為替がドル円で+3.2%と円安。日経平均株価は+4.9%と世界株式より優勢となっています(5月9日)。トランプ米大統領が8日に「イラン核合意からの離脱」を表明し、中東地域を巡る不安が高まったことで、原油相場(WTI先物)は約3年半ぶりに71ドル超まで上昇しました。

 ただ、欧州主要国が核合意を維持する姿勢を示したことや、米国離脱による経済的影響がいまだ不明であることで、金融市場への影響は限定的となっています。むしろ米国市場では、エネルギー関連株(S&P500エネルギー株指数)の上昇が相場全体の基調回復を支えている状況です。実際、朝鮮半島の緊張緩和もあり、米国市場で投資家の不安度を示すとされる「恐怖指数」(CBOE SPX Volatility Index)や「ブラックスワン指数」(CBOE SKEW Index)は低下しています(図表1)。

 14日には米国が在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移転させる予定で、イスラム諸国の反発は必至です。原油相場高騰が消費や業績に与える影響を憂慮すべきですが、現時点で市場への影響は限られそうです。

図表1:米国市場の恐怖指数とブラックスワン指数は低下している 

注: 「恐怖指数」=CBOE SPX Volatility Index (VIX)、「ブラックスワン指数」=CBOE SKEW Index
出所: Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年5月9日)

 

ナスダックの反発は利益成長期待の復活が背景

 米国市場では、第1Q(1-3月)の決算発表が好調に推移しています。S&P500指数を構成する500社のうち447社(約9割)が決算発表を済ませた段階で、EPS(1株当り利益)は前年同期比で平均24.5%増益(株式数加重平均)と、事前予想平均(17~18%増益)を上回っています。米景気の堅調と大幅減税の効果が業績を想定以上に押し上げています。

 なかでも、ナスダック総合指数の中核を占めるIT(ハイテク)関連の業績好調が鮮明となっています。S&P500情報技術(IT)株指数ベースでみると、構成69社のうち53社が決算発表を済ませた段階で、前年同期比で平均35.1%増益となっています。例えば、アップル、アマゾン・ドット・コム、アルファベット(グーグル持ち株会社)、フェースブック、マイクロソフト、インテルなど時価総額上位銘柄の決算は事前予想平均を上回る結果となりました。

 特に時価総額で世界最大であるアップルは、史上最大規模の自社株買い(約1,000憶ドル=約11兆円)と16%の増配を発表。著名投資家ウォーレン・バフェット氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウエー社が1-3月にアップル株を買い増したことを公表し、アップルの株価は5月4日以降連日で最高値を更新しました。

 また、トランプ大統領の批判で株価が一時下落したアマゾン・ドット・コムも最高値を更新。ナスダック総合指数の戻り基調を支えています。

図表2:利益成長期待の復活でナスダック相場は反発

注:業績見通し=ナスダック総合指数ベースの12カ月先予想EPS(市場予想平均) 出所: Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年5月9日) 

 こうした好決算を背景に、ナスダックの業績見通し(利益見通し)が一段と改善しています。図表2が示す通り、ナスダック総合指数ベースの12カ月先予想EPS(市場予想平均)は、減税効果を織り込んで年初来拡大してきましたが、4月に入っても一段と拡大しています。一時不安視された「利益成長期待」が復活したことで、ナスダック総合指数の四半期来(4月以降)騰落率は+3.9%、ナスダック100指数は同+4.7%、NYSE FANG+指数は同+11.4%と市場平均(S&P500指数は同+2.2%)より優勢となっています。利益成長期待の復活を追い風にして、ナスダック相場は当面も堅調を続けそうです。

 

米国のナスダックやIT関連の戻りに注目するなら

 こうしたナスダック関連株や米国のIT(ハイテク)関連株の戻り基調に注目し、ナスダックや米IT分野に分散投資することができるETF(上場投信)を一覧にしてご紹介します(図表3)。

 例えば、ナスダック総合指数の構成銘柄(約2,570社)のうち、時価総額上位100銘柄(金融を除く)で構成されるナスダック100指数に連動する投資成果を目指すETFが日米それぞれの取引所に上場されています。東証上場の円建てETF(東証コード:1545)や、米国(NYSE)上場のドル建て海外ETF(ティッカー:QQQ)がそれです。

 また、米国や世界のIT(ハイテク関連)セクターに分散投資する米国上場の海外ETF(ティッカー:VGT、IXN、XLKなど)も日本で売買することが可能です。

図表3:米国のナスダックやIT関連株に分散投資するETF

*運用経費率は投資家(ファンド保有者=受益者)が負担する運用費用や信託報酬を年率換算で表示したもの
出所: Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年5月9日)

 図表4は、ナスダック100指数に連動を目指す東証上場ETF(1545)の取引価格(円)と日経平均の推移を、2013年初を起点にして比較したグラフです。同ETFの価格は約5年で3倍以上となっており、リターンが日経平均よりも約5割優勢であったことも分かります。為替変動の影響を加味しても、ナスダックの高い利益成長期待が日経平均の成長期待を大きく凌いできたことを示すと考えられます。こうしたETFを投資ツールとして活用することで、米国の成長ダイナミズムを支えるイノベーション(技術革新)や関連企業群の利益成長期待を享受しつつ、個別銘柄のリスクを抑制する分散投資効果も期待できる点に注目したいと思います。

図表4:ナスダック100指数連動型ETF(円)は日経平均より優勢

注:上記はETFの価格と日経平均の推移を比較したものです(2013年初=100)
出所: Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年5月9日)

 

 

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