ビットコインキャッシュのハードフォークと仮想通貨の主導権争い
トウシル / 2018年5月15日 15時18分
ビットコインキャッシュのハードフォークと仮想通貨の主導権争い
ビットコインキャッシュとは
ビットコインキャッシュは、2017年8月1日にビットコインから分岐(ハードフォーク)して誕生した仮想通貨です。そのため基本的な仕組みはビットコインと同じですが、ビットコインに比べてブロックサイズ容量が大きく、処理能力が高いことが特徴です。2018年5月11日時点の時価総額は3兆円に迫っており、仮想通貨市場全体の第4位に位置します。
6カ月ごとのアップグレード
2018年5月15日、ビットコインキャッシュがハードフォークを実施する予定です。これは2017年11月に公表した開発計画に則ったもの(6カ月ごとのアップグレードを行う)で、今回行われるハードフォークは、機能追加等のアップグレードを行うものです。分裂して新たなコインが生まれるというタイプのものではありません。
今回のハードフォークの大きな特徴は、ブロックサイズ(取引データの処理容量のことを示します)のさらなる拡張です。ビットコインキャッシュは、このブロックサイズをフォーク前の8MB(メガバイト)から32MB(メガバイト)に拡張する予定で、これによってより迅速な取引が可能になると期待されています。
また、基本的なスマートコントラクトの導入やビットコインキャッシュのブロックチェーン経由でのトークン発行機能も備える予定で、利便性のアップとともに、幅広い用途への利用が可能になりそうです。
ソフトウェアの脆弱性を発見、ハードフォーク直前にアップデート
ハードフォーク実施へ向けて、ビットコインキャッシュの公式クライアントであるBitcoin ABCは4月にソフトウェア0.17.0をリリースしました。
しかし、このバージョンセキュリティ上の脆弱性が見つかり、ハードフォーク直前の5月7日にBitcoin ABCの開発チームはこの脆弱性に対応する0.17.1へのアップデートを求める状況となりました。ハードフォークの直前に、こうした不安定な状況も見られています。
中国の大手マイニングプールの思惑
4月後半、ビットコインキャッシュの価格は上昇しました。この背景にはハードフォークへの期待だけではなく、中国のマイニングプール企業(複数のマイナーが協力してマイニングを行う仕組みを提供する企業)の動向も関係しているのではと見られています。
中国の大手マイニングプールのAntPool(アントプール)が、ビットコインキャッシュのマイニング報酬の12%を「ブラックホールアドレス」に送り、二度と利用できないように消滅させていた(Burnといいます)ことが発覚しました。AntPoolはビットコインキャッシュのハッシュレート(マイニングのパフォーマンス)が非常に高く、常にシェアの上位を占めています。これによりビットコインキャッシュの流通量が減ってコインの価値上昇への期待感が高まったのでは、と見られています。
AntPool(アントプール)の親会社であるBitmain(ビットメイン)社は、これは健全な経済活動であり、ビットコインキャッシュ自体の経済的価値と成長を高めることで投資家は利益を受け取ることができるとし、他のマイニングプールにも参加を呼び掛けています。
しかし、ビットコインキャッシュは本来管理者のいないオープンな通貨であるため、この行為が中央集権化を促してしまうのではないかという懸念を抱く声もあります。
存在感を強めるビットコインキャッシュ
2018年2月、ビットコインがSegwit完全サポートのソフトウェアをリリースしてライトニングネットワーク実装への期待が高まりました。価格も復調し、仮想通貨市場における「基軸通貨」のような立ち位置は健在です。
ただし、将来はビットコインキャッシュが基軸通貨の立ち位置になるという声も存在します。ビットコインキャッシュを取り扱う取引所も増え、対応するウォレットやアプリケーションの開発やリリースも続いており、その存在感は今回のハードフォークにより一層大きくなる可能性があります。
日本でもGMOインターネットやSBIホールディングスがビットコインキャッシュのマイニングにも参入するなど注目度は高く、アメリカではATMでの出入金が可能になったり、マイクロソフトが支払いのオプションに加えるなど、日常生活へも浸透してきています。
ハードフォーク後のビットコインキャッシュがどう動くのか、ひいては仮想通貨市場全体にどのように影響するのか、今後も目が離せません。
(フィスコ)
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