今週末はOPEC総会。原油市場は神経質な展開に
トウシル / 2018年6月18日 15時20分
今週末はOPEC総会。原油市場は神経質な展開に
6月11日~15日原油マーケットレビュー
前週のNY原油相場は続落。今週末に石油輸出国機構(OPEC)総会を控えていることもあり、持ち高調整中心の動き。米原油在庫の予想以上の減少などを手掛かりにやや買いが優勢となる場面もあったが、米中貿易摩擦への懸念から週末には売りが膨らみ、マイナスサイドで取引を終えた。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国の盟主であるサウジアラビアが、5月の原油生産量を増加させたとの報に加え、非加盟国盟主ロシアも増産して生産枠上回ったと伝わった。OPECが発表した月報では、5月にサウジアラビアは増産に転じていることが明らかとなっている。国際エネルギー機関(IEA)公表の月例報告では、イランとベネズエラに関しては約30%の生産減少の可能性があり、サウジアラビアなどの生産引き上げが必要となる可能性もあるとIEAは指摘している。トランプ米政権からの増産要請もあり、サウジアラビアとロシアの生産大国2国を中心に、22日からのOPEC総会では協調減産の見直しについて協議されるとの見方が相場の上値を抑えた。
しかし、減産見直しを図りたい両国に対し反対意見が出てきたことで、原油相場は底堅い展開となった。イラクのルアイビ石油相が、増産に動くと協調減産合意の崩壊につながるとし、現行の減産を継続すべきとの見解を示した。この発言を受けて、総会での減産見直しは見送られるとの観測が広がった。また、各種月報ではベネズエラの産油量が一段と落ち込んでいることも同時に明らかとなり、先行きはともあれ足元の供給減少が改めて確認されたことも支援材料となった。さらに、減産規模の変更を求める構えのサウジアラビアとロシアが、柔和な姿勢を示したことも買い安心感を与えた。ロシアのノバク・エネルギー相は、原則として協調減産を段階的に解除することを支持、サウジのファリハ・エネルギー鉱物資源相は合理的で穏やかな合意に達するとの見通しを示した。結果がどちらに転ぶか、今週末のOPEC総会を前に様々な思惑から神経質な展開が見込まれる。
OPEC総会に対する見方はまちまちだが、米国の原油在庫が減少したことは強材料視された。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は予想以上の取り崩しとなった。ガソリンおよびディスティレート在庫も需要増を背景に予想以上の減少と強い内容。特に需要期入りしているガソリンの需要は、過去最高を更新した。前日引け後に米石油協会(API)が先行発表した週間石油統計では、原油在庫は予想に反して増加したこともあり、EIA統計はちょっとしたポジティブサプライズとなった。統計内容は明らかに強いものであったが、予断を許さない点もある。リグ稼働数の増加とともに原油生産量は引き続き増加、毎週過去最高を更新している。原油処理能力は若干高くなったが、稼働率は96%近くと極めて高いレベルにあり、さらなる需要増加の余力は限られている。また、輸入減輸出増が在庫減少の主たる要因だが、ここ数週間、減っては増え増えては減るの繰り返しであり、在庫減少が継続するかに対する不透明感は強く残る。わずかな調整で在庫が増加に転じる可能性があるため、注意が必要である。
米原油在庫の減少から上昇する場面もあったが、週末は米中貿易摩擦の激化により原油需要が鈍化することが懸念され、上げ幅縮小からマイナス圏へと値を沈めた。トランプ米政権が中国製品に対して追加関税発動を表明、これに対し中国も同等規模の措置を導入することを明らかにしている。貿易戦争激化を警戒して投資家心理が冷え込み、週末というタイミングも重なったため、手仕舞い売りが膨らみ、一時64.29ドルまで値を崩した。ただし、直近安値64.22ドルを割り込むには至らず。
OPEC総会次第ではあるが、テクニカル面からは直近安値水準の64ドル割れは下げ幅拡大、短期と中期の移動平均がゴールデンクロスとなる67.30ドル付近を明確に上放れると上げ足速めるといった展開となるだろう。
今週の予想
- WTI やや弱め 62.50-66.50ドル
- BRENT やや弱め 71.50-75.50ドル
国内石油化学関連ニュース
トピックス
- サンアロマー、PP値上げ(原料ナフサ上昇分)
- サンアロマー、PP値上げ(ユーティリティ等上昇分)
- 三井化学、石油化学製品値上げ
- 川崎化成工業、無水フタル酸値上げ
- JNC、オキソ誘導品値上げ
- デンカ、ABS樹脂など値上げ
- クレイトンポリマージャパン、SBSなど値上げ
- シージーエスター、可塑剤値上げ
- 住友化学、PE、PP値上げ
- 三菱ケミカル、アクリル酸およびアクリル酸エステル等値上げ
- 三菱ケミカル、オキソ製品値上げ
- 旭化成、PE値上げ
- DIC、インドネシア子会社のボイラ用燃料にパーム椰子殻を採用
- 日本合成化学工業、PVOHフィルム生産設備を増設
- 千代田化工建設、水素化石油樹脂生産設備のEPC契約を締結
- 大阪石油化学、クラッカーを定修入り
海外石油関連ニュース
OPEC、サウジアラビアが増産へ
石油輸出国機構(OPEC)は6月12日、6月の石油市場月報を発表した。世界石油需要見通しは、2018年は日量9885万バレルと前月見通しを据え置いた。非OPEC石油供給見通しは、2018年は日量5975万バレルと前月見通しから同13万バレルの上方修正。4月の経済協力開発機構(OECD)在庫は前月比670万バレル減の28億1100万バレルとなり、過去5年平均を2600万バレル下回る水準にまで低下している。なお、5月のOPEC加盟国原油生産量は日量3186.9万バレルと前月から3万5400バレル増加した。財政懸念のベネズエラが減産を強いられているが、その減産分以上にサウジアラビアが増産している。OPECのメインシナリオの予測によると、世界需要を満たすには増産が必要としている。サウジアラビアは協調減産縮小の考えを示しており、先行して増産に転じていることが窺える。
EIA、2018年WTIスポット平均価格見通しは64.53ドルと下方修正
米エネルギー情報局(EIA)は6月12日、6月の短期エネルギー見通しを発表した。世界石油需要見通しは、2018年は日量1億0029万バレルと前月見通しから同1万バレルの小幅下方修正、2019年は同1億0201万バレルと前月見通しを据え置いた。世界石油供給見通しは、2018年は日量1億0022万バレルと前月見通しから同23万バレルの下方修正、2019年は同1億0221万バレルと同43万バレル引き下げた。原油スポット平均価格に関しては、WTIスポット平均価格は、2018年が64.53ドルと引き下げたが、2019年は61.95ドルと上方修正した。ブレントスポット平均価格は、2018年が71.06ドル、2019年は67.74ドルとともに引き上げている。
IEA、需要増加はシェール増産などが補完、イランとベネズエラの動向次第
国際エネルギー機関(IEA)は6月13日、6月の月例報告を発表した。2019年の世界石油需要は2018年の同程度の日量140万バレルの増加となる見通し。第2四半期(4-6月期)までに同1億バレルに達するという。ただし、経済成長および原油価格の安定が背景にあり、価格上昇や貿易摩擦によりリスクは高まると指摘している。一方供給面においては、イランとベネズエラの2019年の産油量は3割ほど低減する可能性があるとした。イランは約23%、ベネズエラは40%ほど減少する公算大。同140万バレルの需要伸長分に関しては、米国のシェールなど非在来型石油の増産で補完可能だが、この両国の状況次第ではサウジアラビアなどの生産引き上げが必要となるケースもあり得るという。
EIA、原油在庫は予想以上の減少、ガソリン需要は過去最高
米エネルギー情報局(EIA)が6月13日に発表した6月8日までの週の週間石油統計の概要は次の通り。
原油在庫は前週比414.3万バレル減の4億3244.1万バレルとなった。前年同期比は15.5%減と前週の同14.9%減からマイナス幅が拡大した。ロイター事前予想の270万バレル減を上回る減少。生産量は日量1090.0万バレル(前週比10.0万バレル増)と増加し過去最高を更新。輸入量は同809.9万バレル(同24.7万バレル減)と減少した。リファイナリーへの投入量は同1779.8万バレル(同9.1万バレル増)と増加し、稼働率は95.74%と0.38pt上昇した。なお、原油処理能力は同1858.9万バレル(同2.2万バレル増)と小幅に拡大している。輸出量は同203.0万バレル(同31.6万バレル増)と増加した。なお、WTIの受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングの原油在庫は3390.2万バレル(同68.7万バレル減)と4週連続で減少した。戦略石油備蓄(SPR)は6億6016.8万バレル(同変わらず)。
ガソリン在庫は前週比227.1万バレル減の2億3676.3万バレルとなった。前年同期比は2.3%減と前週の同0.5%減からマイナス幅が拡大した。ロイター事前予想の40万バレル増に反して減少した。生産量は日量1008.1万バレル(前週比42.2万バレル増)と増加した。輸入量は同82.4万バレル(同4.7万バレル増)と増加した。輸出量は同60.7万バレル(同6.9万バレル増)と増加した。需要は同987.9万バレル(同90.3万バレル増)と大幅な増加、過去最高を記録した。4週平均の需要は同955.8万バレルと前年同期の同952.8万バレルを0.3%上回る水準。全米平均ガソリン小売価格(レギュラー)は前週比2.9セント安の291.1セントと2週連続の値下がり。なお、ナショナル・ハリケーン・センター(NHC)によると、現在大西洋上に熱帯低気圧は発生しておらず、発生する予報も出ていない。
ディスティレート在庫は前週比210.1万バレル減の1億1469.3万バレルとなった。前年同期比は24.3%減と前週の同22.7%減からマイナス幅が拡大した。ロイター事前予想の20万バレル増に反して減少した。このうちヒーティングオイル在庫は同4.0万バレル増の835.9万バレル、前年同期比14.0%減と前週の同16.7%減からマイナス幅が縮小した。生産量は日量511.1万バレル(前週比21.3万バレル減)と減少した。輸入量は同10.4万バレル(同4.2万バレル減)と減少した。輸出量は同111.1万バレル(同54.8万バレル減)と大幅な減少となった。需要は同440.4万バレル(同90.2万バレル増)と大幅増。4週平均の需要は同396.6万バレルと前年同期の同398.4万バレルを0.5%下回る水準。全米平均ディーゼル小売価格は前週比1.9セント安の326.6セントと2週連続の値下がり。
なお、プロパン/プロピレン在庫は前週比373.2万バレル増の5084.5万バレルとなった。生産量は日量194.8バレル(前週比1.7万バレル減)と減少した。輸入量は同8.6万バレル(同4.9万バレル減)と減少した。輸出量は同71.5万バレル(同17.5万バレル減)と減少した。需要は同78.6万バレル(同14.4万バレル増)と増加した。4週平均の需要は同82.0万バレルと前年同期の同86.4万バレルを5.1%下回る水準。
石油製品全体の4週平均の需要は、日量2044.9万バレルと前年同期の同2010.2万バレルを1.7%上回る水準。SPRを除く石油全体の在庫は、前週比180万バレル減の12億0800万バレル。前年同期を10.7%下回る水準。
CFTC、ファンド建玉明細
米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した建玉明細報告によると、12日時点におけるWTIのファンド筋のポジションは59万5293枚の買い越しと、前週から買い越し幅を1万1717枚拡大させた。売りポジションに目立った変動がないなか、新規に買いポジションを構築した8週ぶりの買い越し幅拡大。一方の生産者筋は64万0748枚の売り越しと、前週から売り越し幅を7462枚拡大させた。こちらは売り買いともに玉整理中心の動きのなか、手仕舞い売りを先行させている。
中国の5月石炭、原油、天然ガス生産
中国国家統計局は6月14日、5月のエネルギー生産量を明らかにした。石炭、原油および天然ガスの生産量は安定している。原油処理量は伸びが低下し、電力生産は増加した。1-5月の石炭の生産量は14億トンと前年同期比4.0%増加した。5月の生産量は前年比で3.5%増となり、前月から0.6ポイント低下。1-5月の石炭の輸入は1億2000万トンと前年同期比8.2%増加した。5月の輸入は2233万トンと同0.6%増となり、再びプラスに転じた。1-5月の原油の生産量は7823万トンと同2.0%減。5月の生産は同1.6%減の1597万トンとなった。1-5月の原油の輸入量は1億9000万トンと同8.0%増加した。5月の輸入は3905万トンと同5.0%増。1-5月の原油処理量は、2億4978万トンと同5.9%増加した。なお、ガソリン、灯油および軽油の生産量は前年比でそれぞれ6.4%、14.3%および2.0%増加している。5月の処理量は同8.2%増の5066万トンとなったが、定修の影響を受け伸びは減速している。1-5月の天然ガスの生産量は652億4000万立方メートルと同4.3%増となった。5月の生産量は同5.9%増の126億2000万立方メートルとなり、高水準を維持している。1-5月の天然ガスの輸入量は同36.4%増の3480万トンとなった。5月の輸入量は同36.7%増の741万トンとなった。
(CREEX LLC.)
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