配当増!? ストレステスト後に期待できる米金融セクター
トウシル / 2018年6月26日 7時0分
配当増!? ストレステスト後に期待できる米金融セクター
あと3カ月弱でいわゆる「リーマンショック」から10周年になります。米国では歴史的におおむね、景気が良くなると金融規制が緩くなり、景気が悪くなった後に金融規制が強化されるというサイクルが繰り返されてきました。本来逆であることが望ましいのですが、やはり問題が起こっていない時にはなかなか金融規制には手を付けられないものです。リセッションに入って不良債権が表面化し、初めてその融資が不適切であったり違法であったりというのが判明し、関係者が逮捕され、その後その失敗を二度と繰り返さないように規制を強化する、というのが過去のパターンです。
しかし、この10年間は過去のパターンとやや異なります。逮捕者が出なかったこともそうですが、不良債権の規模が過去と比べて格段に大きかったこと、そしてそれによって格段に厳しい金融規制が導入され、その状態がずっと続いてきたことです。皆さんご存知のいわゆる「ボルカ―ルール」もそうですが、それ以上に金融規制下で監督役を命じられたFRB(米連邦準備制度理事会)による質的な規制は非常に厳しいものでした。トランプ政権が成立したことで、それまでFRBで非常に厳しい監督をリードしてきたタルーロ理事は2017年4月をもって辞任となりましたが、その後も目に見えて金融規制が緩和されるということはありませんでした。
しかしその状況が、今週6月28日をもって変わろうとしています。これはトランプ政権下で金融規制のトップに就任したFRBのクォールズ理事のもとで、初めてストレステスト結果が発表される日だからです。
すでに第一弾のストレステスト結果は6月21日に発表されました。それによると、経済成長率がマイナス8.9%、失業率が10%に上昇、ダウ平均が60%以上下落するという、10年前の金融危機を超える大リセッション入りするというシナリオの下でも、大手35行は全て健全性を維持できる、という結果となりました。これは逆に言えば、10年の金融規制が如何に厳しいものだったかを示すもので、端的に言うと、金融機関に無駄に余剰自己資本を積ませている状態がずっと続いてきたことを意味しています。
6月28日に発表されるストレステスト結果では、各金融機関がFRBに提出した資本計画が承認されるかどうかが判明します。金融機関は軒並み過剰自己資本の状態ですので、承認されれば、少なくとも1年分の利益によって積み上がった自己資本は全て株主に還元されることが予想されます。現在、米国の大手行の株価収益倍率は10~12倍ですが、大手行の株主である限り、この逆数である8.3%から10%が今後毎年得られることになるというわけです。ちなみにこの8.3%から10%のうち、配当で得られるのが2.5%前後、残りが自社株買いによって還元されていくことになると見ています。
6月22日時点でS&P500指数は年初来3%の上昇となっているのに対して、米国の金融セクターからなるETF(XLF)は逆に3%の下落となっています。前述の通り、米国の大手行の株価収益倍率は10~12倍と割安ですが、割安に据え置かれている理由の一つは、生まれた利益が本当に株主の手に渡るかどうかが投資家にとって不透明だからでしょう。
しかし6月28日にストレステストの結果が発表された後にははっきりします。10年物国債の利回りが3%を割っている時に、8.3%から10%の利回りというのは、リスクを勘案しても魅力的に見えます。魅力的すぎるので恐らく、株価が上昇することによって適正な利回りに収束すると見るのが自然でしょう。
金融機関をサポートするもう一つの材料は昨年末に成立した法人税減税の影響です。金融機関は法人税減税のメリットをより多く受ける可能性が高く、その分税引き後利益が増えて自己資本が増加、株主還元を実施しやすい状況になります。また法人税減税によって米国全体の企業の税引き後利益が増加しますので、金融機関の貸出先の自己資本増強にもつながり、与信リスクが低下するという側面もあります。
一部には金融危機から10年、そろそろまた訪れるのではないか、という声も聞かれます。しかし、金融危機時の大手金融機関のレバレッジは30~40倍、現在は上記の通り、せいぜい10倍。今は金融危機を起こそうと思っても起こせない状態なのです。
(堀古 英司)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
出光興産が減収減益も株価は快走 注目のPBR改善策とは
Finasee / 2024年4月16日 17時0分
-
利回りが高くても暴落してしまう高配当株「5つ」の共通点【2万人を指導した投資研究家が助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月12日 11時15分
-
小林製薬“紅麹ショック”で株価急落も「新NISA購入ランキング4位」の謎。投資のプロはこう見る
日刊SPA! / 2024年4月5日 8時50分
-
相場展望4月1日号 米国株: FRBは「利下げに慎重」、高PERを意識するまでは株高続く 日本株: 「株高の期待値」だけでの株高は限界がある、円安は負の効果
財経新聞 / 2024年4月1日 10時21分
-
銀行への規制強化で投資妙味アップ!運用のプロが注目する資産「プライベート・クレジット」とは【アライアンス・バーンスタインの見解】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月30日 8時15分
ランキング
-
1米ファンドに日本KFC売却=三菱商事、来月にも
時事通信 / 2024年4月26日 20時17分
-
2円安止まらず158円44銭 NY市場、34年ぶり水準
共同通信 / 2024年4月27日 9時45分
-
3円相場が一時1ドル=157円を突破 34年ぶりの円安ドル高水準を更新
日テレNEWS NNN / 2024年4月26日 23時38分
-
4止まらない円安 実は「円弱」 日本は“後進国”に転落か 国力低下の現実とは【報道1930】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年4月26日 16時30分
-
5突然現場に現れて「良案」を言い出す上司の弊害 「気になったら即座に直したい」欲求への抗い方
東洋経済オンライン / 2024年4月26日 9時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください